10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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金沢工科大学と東京大学では「いい教育」の基準が違う

大学経営の新しい仕組みをつくる

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長
情報・テキスト
東京大学(安田講堂)
大学の構造改革は、今どうなっているのだろう。少子化による大学数の大幅削減、国公立大学の大学法人への移行、第三者評価の導入は、日本の大学をいい方向に変えているのだろうか。前東大総長・小宮山宏氏が、大学経営の問題点とその改善方法を提案する。
時間:11:59
収録日:2014/07/15
追加日:2014/08/28
東京大学(安田講堂)
大学の構造改革は、今どうなっているのだろう。少子化による大学数の大幅削減、国公立大学の大学法人への移行、第三者評価の導入は、日本の大学をいい方向に変えているのだろうか。前東大総長・小宮山宏氏が、大学経営の問題点とその改善方法を提案する。
時間:11:59
収録日:2014/07/15
追加日:2014/08/28
≪全文≫

●大学経営の難しさ

 1)総長を目指す大学人はいない

 大学経営、これは私のライフワークでもあるわけなのですが、非常に難しいテーマです。今日は、それがいかに難しいのかということと、いい大学経営をするための大きな方向性について、ご提案をしたいと思います。

 まず、なぜ大学経営は難しいか。

 一つにはまず、「総長になろう」と思って大学に残った人はいないという事実があります。大学に残るかどうかは20代前半から後半の若い間に決めることです。基本的に「学者になろう」と思う人が残ります。そういう人の集まるのが大学の教授会で、この中から経営者を選んでいくのです。

 これは、企業の場合とは全く違います。企業で、会社に入るときから社長になるつもりの人がいるかどうかは分かりませんが、「うまくいけば社長になれるかもしれない」と思う人は結構いると思います。ここが、まず一つの大きな違いです。

●大学経営の難しさ

 2)お金の収支だけでは大学の経営は測れない

 次に、「経営」というと、企業の人は何を頭に浮かべるのか。おそらくバランスシートであったり、損益計算書であったり、いずれにしても「お金」でしょう。もちろん長期のことを考えて、将来や研究目的の投資などはあるでしょうが、それにしても結局はお金です。つまり、「お金の収支で経営を測れる」のが、企業の経営です。

 そういう意味であれば、大学の経営をよくするのは簡単です。先生を減らして学生の数を増やせばいい。そうすると授業料がたくさん入ってきて、出るお金は減ります。

 ただし、もちろん講義相手の数は10人から900人になりますが、それで急に今のレピュテーション(評判)を落とすようなことにはなりません。東大や慶応のレピュテーションは30年や40年は保つので、そう急激には落ちません。しかし、そういう意味で、お金の収支バランスをよくするのは、大学経営の目標にはならないのです。

 やはり大学というものは、いい人を育てること、あるいは研究を中心とする大学であれば、いい研究成果を出すことが目的です。

 ただ、ここでお金は関係がないのかというと、有限のお金をどうやって上手に使っていくかが問題ですから、密接な関係があります。

 企業並みに金銭の経営をしなくてはいけないけれども、その目的はバランスシートや損益計算書をよくすることではない。これが、大学経営の難しさの第二番目の点です。

●大学経営の難しさ

 3)総合大学はホールディングにも近い複雑な集合体

 一般的に大学経営というと、「もっと総長のリーダーシップで頑張れ」という話が巷では言われます。これは、ほとんど大学のことが分かっていない人の議論と言えます。なぜなら、それは単科大学にしかイメージが向いていない面があるからです。

 もちろんいい経営をしている単科大学はあります。典型としては金沢工科大学などが、非常にいい経営だと評価されています。ただ、ここはアイデンティティを非常にシャープに絞っているのです。中身は工学系を教える工科大学で、目標は研究ではなく教育です。主として学部の「教育」を行う「工学」系の大学という2点に絞って、ここでは非常にいい学生を育てています。そして、具体的に名前は挙げませんが、非常にいい学長もおられます。

 しかし、例えば東大や京大といった総合大学を、同じように考えられるだろうかというと、それは全くできません。なぜならば、今言ったような「単...
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