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アベノミクスの課題、重要なポイント

アベノミクスの中間総括

伊藤元重
東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授
情報・テキスト
2012年12月の安倍政権発足以来、20カ月を経過し、内閣改造も経た今、これまでのアベノミクスを総括する動きが各所で出始めている。アベノミクスの特徴やこれまでの成果、そして今後の課題について、伊藤元重氏が大いに語る。
時間:12:42
収録日:2014/09/08
追加日:2014/09/14
ジャンル:
≪全文≫

●短・中期と長期の問題とを切り離し、デフレ脱却を優先したアベノミクス


 安倍政権が発足してからちょうど20カ月ぐらいになるでしょうか。内閣改造もあり、今の時点で「これまでのアベノミクスはどうであったのか」という総括をする動きがいろいろ出てきていますし、「では、これからは何が課題なのか」ということも、当然問われることになります。

 これにはいくつかの重要なポイントがあると思いますが、アベノミクスにかかわらず、日本の経済は大きな長期的な課題にいくつか直面しています。一つ目はやはり、これだけ増えてしまった政府の借金です。政府債務の存在の下で、財政破たんを起こさないできちんと財政運営ができるかということです。二つ目は、人口が急速に縮小している中で、地方の経済をはじめとして、日本全体で活力を維持できるかどうかということです。それから、三つ目には、社会保障費がこれから急速に増えていくわけですが、この高齢化の中で社会保障費をしっかり賄うことができるかどうかということです。他にも課題はあると思いますが、こういったことが今、日本経済の長期的な課題として問われています。

 そして、アベノミクスがこうした課題に対応できるかどうかということが、当然問われてくるのですが、いくつか誤解があると思うのは、このような問題は、安倍内閣だけではなく、それ以前の民主党内閣、あるいは、その民主党の内閣の前の自民党内閣も関わってきた話です。結論から言うと、これは大変難しいテーマであり、どう対応するかということはそう簡単な議論ではありません。

 ただ、いわゆるアベノミクスに関して見ると、一つ重要なメッセージがここにあると思うのです。それは何かというと、今申し上げたような日本が直面する大きな長期的な問題ということと、当面日本経済が直面しているもう少し中期、短期の問題を少し切り離して対応したということに、大きな特徴があります。それは、デフレから脱却するということをまず成し遂げて、その上で、先ほど私が申し上げたような中長期の課題にどう対応するかという順番を採ったということです。

 それ以前の民主党政権の時代との比較が一番分かりやすいと思いますが、デフレをなかなか止めることができませんでした。その中で、例えば先ほど申し上げた例の一つである長期の政府の債務や、財政問題をどう運営できるかということになると、デフレが続くものですから、税収がどんどん減少していき、その中で政府の借金はどんどん増えていくという、いわゆる景気が悪くて税収が減少して、財政がさらに悪くなるという悪循環がずっと続いてしまったのです。それを結果的に見ると、長期の財政の問題を解決できないだけではなく、足元の状況も非常に悪化させてしまいました。あるいは、長期での少子化と人口減少の流れの中で日本の経済を元気にしなければいけないという問題に対応するためには、それなりの対応が必要になりますが、残念ながらデフレが続いた中では、まともな対応が打てず、企業も後ろ向きになって、ある意味で非常に悲観的な見通しの中で閉塞感に満ちてしまっていました。

 しかし、アベノミクスの重要な特徴は、こういった長期の問題と短期の問題とを切り離して、まずデフレから脱却することに優先項目を絞り込んだのです。そのために非常に大胆な金融緩和を行い、いろいろな批判はあるにせよ、必要な財政の刺激策を行い、そして、次の成長戦略につなげようとしているのです。

 もちろん、これだけ大胆にデフレからの脱却を起こそうという...
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