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パーフェクトを目指してはいけない!? 福島原発事故の原因

世界から見た日本(2)レジリエンスと教育制度

齋藤ウィリアム浩幸
株式会社インテカー代表取締役社長/内閣府本府参与
情報・テキスト
「人間は間違う。機械は壊れる。事故は起こる」。それは自然の摂理だ。想定外のエラーは必ずあると考えたとき、レジリエンスの重要性が浮上する。強くしなやかな人材を育成するために、日本が取り組むべき課題とは。(後編)
時間:14:50
収録日:2014/07/25
追加日:2014/10/04
「人間は間違う。機械は壊れる。事故は起こる」。それは自然の摂理だ。想定外のエラーは必ずあると考えたとき、レジリエンスの重要性が浮上する。強くしなやかな人材を育成するために、日本が取り組むべき課題とは。(後編)
時間:14:50
収録日:2014/07/25
追加日:2014/10/04
≪全文≫

●人間は間違う。機械は壊れる。事故は起こる


── 齋藤さんは、福島原発事故後、国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)に関わられました。福島原発では4本の事故調のレポートが出ましたが、私は国会事故調のレポートが一番興味深かったです。

齋藤 あれはもう本当に、変わった日本人である委員長の黒川清先生が、それこそ世界標準で事故の調査委員会を設置するというところだったのではないでしょうか。

── あの国会事故調を通して、日本の原発というか原発システム、日本の社会のシステムのある種のゆがみが出たように思います。齋藤さんは、あの事故調の活動の中で、どんなイメージを持っておられましたか。

齋藤 私は事故の専門家でもないし、原子力の専門家でもありませんが、最も学んだことは、また今もスピーチで唯一言うのは、こういうことです。誰が駄目だっただとか、何をしなかっただとか言ってもそれは始まらないので。

 事故調が立ち上がる前、「これはまずい、少し勉強した方がいい」と思って、これまでにあった歴史的な事故の報告書を読んだのです。米スリーマイルアイランド、チェルノブイリの原発事故、チャレンジャー爆発事故、タイタニック号など、大体4000ページくらい読みました。

 結局そこで分かったのは、私は暗号の専門家でもありますが、暗号と同じで、人間は間違う。機械は壊れる。事故は起こる。言ってみれば当然のことなのですが、これが共通点でした。福島もそうです。それはもう、英語でいえば〝That’s life〟です。〝That’s life〟なのですが、日本のいけないところは、結局何でもかんでもとまでは言いませんが、パーフェクトを目指すところ。01、○×、白黒を目指すところです。

 歴史的な報告書を読んでいても、それはあり得ないのです。少なくともこの三つはもう〝That’s life〟で、起こるのです。


●レジリエンス──「想定外」を生き抜く力


齋藤 そうなると、やはりレジリエンス(resilience:困難や逆境を乗り越えるしなやかな回復力)が大事なのですが、日本はどうしても白黒、何かのバケツに入れるという癖があって、レジリエンスがない。

 これは多様性ということだけではありません。レジリエンスにもさらにいろいろな意味がありますので、そのまま話しますが、そのレジリエンスを考えないから、例外や想定外に対して対応できない。これは原発だけでもなく、今の日本のいろいろなことに対するマニュアル化社会といいますか。レジリエンスというのは、マニュアル外のものに対してどう対応してくかが肝要になります。これも最近よく話します。

── 想定外のことを考えるだとか、科学のことは科学者に判断させないというトランスサイエンスの考え方などは、日本ではなかなか取り入れられませんね。

齋藤 日本人のそこが私にはよく分からないのが、完璧にするために永遠に時間をかけようとするところです。そして、いろいろな可能性を考えようとします。姿勢は立派です。しかしその結果、とてつもなく分厚いマニュアルができてしまう。そして、どんな分厚いマニュアルも想定外や例外はカバーできません。できないのにそれだけ時間を食って、競争力を失って、結局は違う製品に負けてしまう。日本がどうしてまだそんなことを続けているのか、私には理解できません。

 アメリカ人の場合、逆に少しやりすぎかもしれませんが、まずビジョンをはっきりさせます。ビジ...
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