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厳しい時代にも生き残れるのは、底力のある人

松下幸之助と上甲晃の人づくり(2)志と底力

上甲晃
志ネットワーク代表
情報・テキスト
松下幸之助氏、そして上甲晃氏が重視する“人間力”とは、“志”や“底力”だと上甲氏は言う。では、志、底力とは何なのか。豊富な具体例をもとに上甲氏が分かりやすく解説する。(後編)
時間:16:31
収録日:2014/07/31
追加日:2014/11/06
ジャンル:
≪全文≫

●人間力とは、みんなの利益に熱心なこと


 では、どうすれば人間力、人間としての魅力を高めることができるのか。これが大変大事なことです。本を読んだり話を聞いたりすれば、知識を得ることはできます。留学するのも一つの道でしょう。では、人間力を高めるにはどうしたらいいか。

 私は、残念ながら、今の学校教育の中で、この部分が実は最も遅れていると思うのです。ですから、学力・学歴一流、人間三流の人が多い。「たとえ学歴が三流であっても人間は一流であれ」と、常に青年塾では言い続けております。

 では、どのような人が魅力的なのか。あるいは、自分の魅力を高めるにはどうしたらよいのか。言葉で言うと、極めて簡単であります。周りの人たちを見て、どのような人が嫌われるか。自分の利益にだけ熱心な人です。そのような人は、絶対に人に尊敬されません。

 口には出せないかもしれませんが、みんな腹の底ではそのように思っているのです。自分さえ良ければいいという考え方、自分の利益だけを追求する考え方は、実は非常に世間から嫌われます。私はこれを“野心”と呼んでいます。

 野心も一つの大きなエネルギー源であることは事実であります。将来社長になりたい、大金持ちになりたい、有名になりたい、大臣、総理大臣になりたい、お医者さんになって金儲けしたい。これも頑張ろうという意欲の元であることは事実であります。ですが、それは小さい。たかが己一身の利益でしかないのです。

 私が言う人間としての魅力とはどういうことか。己一身の損得を超えて、みんなの損得に熱心になることです。人が困っていたら、苦しんでいたら放っておけないことです。人のために惜しげもなく自分の力を捧げる気持ちを持った人、みんなの利益に熱心な人は、非常に尊敬されるのです。これを、私は“志”と呼んでいます。

 最近は、非常に熱心に、毎日ウォーキングしている人がいます。雨の日もウォーキングしています。その姿を見て、多くの人は、熱心な人だと言います。ですが、立派な人とは言いません。なぜかといえば、健康という自分の利益にだけ熱心なことは、立派ではないですから。

 ですが、その人が、今日から道に落ちているゴミを拾いながらウォーキングしたとしたら、近所の人は立派な人だと言うでしょう。ゴミ拾いの中に、みんなのために行動する心を見たから、立派だと言われるのです。

 同様に、自分の車をどんなに毎日磨いても、世間の人は熱心とは言いますが、立派とは言いません。ですが、会社の車を惜しげもなく一生懸命自分の車以上に磨いている人がいたら、周りの人は立派な人だと言うのです。どんなに売上や利益を上げても、一人勝ちをしている会社は、熱心な会社とは言われますけれども、立派な会社とは言われません。一方で、本当に世の中の役に立つために社員が真剣に働いている会社は、立派な会社と言われるのです。


●和の心、公の心が、日本人の心の原点では


 他人のために惜しげもなく力を差し出して、“みんなのために”という思いを持って考え行動できることが、まさに志であり、人間教育の根本中の根本ではないかと思います。私の青年塾は、その心を養うことを一番の目標にしております。他の知識や技術は自分で勉強すればいい。しかし、少なくともその根本だけは、徹底して教育しようとしてまいりました。

 一つ、例を挙げてみたいと思います。山形県に庄内というところがあります。戊辰戦争で頑張って、最後に負けたのが庄内藩であります。その時、庄内藩士は3000人おりました。その3000人が、これからは軍事力ではなく、経済力をもって、しっかりと良い藩をつくっていこうと考え、月山という山の広大な原始林を開墾して、桑の木を植え、蚕を飼って、産業を盛んにすることを決めました。

 原始林をいくつかの区画に区切って、どの区画をどの班が開墾するかは、くじ引きで決めることになりました。1番くじを引いたらどこを選んでもよいのです。青年塾でもその現場に足を運びました。そして、松ヶ岡という開墾場に残っている資料を見て、大変感動したのですが、1番くじを引いた班の人々は、我先にと一番困難な場所に駆け出していったのだそうです。

 私だったら、1番くじを引いたら、まずどこが一番楽かと探します。自分の利益を考えれば、一番楽なところへ走っていきます。ですが、その人々は、本当にみんなのためになるのなら、一番苦労をしてもよいと考えたのです。そのような精神が起こらなければ、絶対に立派な人生を送れないし、立派な会社はつくれません。その思いから、「己の損得を超えろ」、そして、「常に“みんなのために”という気持ちを持て」と、私は繰り返し青年塾で教えております。

 これが日本人の心です。日本人は古来、そのような心を大事にしてきました。和の...
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