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イスラム国がもたらしたクルド独立国家への道

イスラム国とクルド独立(3)イスラム国がもたらしたクルド独立国家への道

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/明治大学研究・知財戦略機構国際総合研究所特任教授
情報・テキスト
中東におけるイスラム国とクルド民族の対決は思わざる波及効果を引き起こしていると、山内昌之氏は見る。それは、クルド人の反目を解消させ、イラク軍の腐敗を露呈させ、欧米を中心とする国際世論を揺るがす勢いとなっている。「クルド独立国家」という名称が法的なものになる日も遠くはないだろう。(全3話中第3話目)
時間:15:15
収録日:2014/12/12
追加日:2015/01/23
中東におけるイスラム国とクルド民族の対決は思わざる波及効果を引き起こしていると、山内昌之氏は見る。それは、クルド人の反目を解消させ、イラク軍の腐敗を露呈させ、欧米を中心とする国際世論を揺るがす勢いとなっている。「クルド独立国家」という名称が法的なものになる日も遠くはないだろう。(全3話中第3話目)
時間:15:15
収録日:2014/12/12
追加日:2015/01/23
≪全文≫

●クルド人に団結をもたらしたイスラム国の脅威


 皆さん、こんにちは。今日は引き続き、中東におけるクルド民族とイスラム国の対決という問題を取り上げます。日本ではほとんど注目されない重要性について語りたいと思います。

 クルド人は、イラクとシリア、トルコ、イランに分かれて住んでいます。彼らの住む地域を「クルディスタン」と呼びますが、これまで歴史的には、互いの間に主導権をめぐって相当な争いが展開されました。しかし現在では、強い愛国の感情と団結力が彼らにもたらされています。

 その触媒になったのはひとえにイスラム国の脅威だと、前回申し上げました。それが四つの地域で、国を超えたクルド人の協力を刺激しました。北イラクのクルド地域政府(KRG)や北シリアのクルド人居住地域(ロジャヴァ)における戦いには、海外からも、あるいは、近接するイランやトルコからもクルド人たちが駆け付けているという現象があります。

 例えば、イランのクルディスタン民主党が、義勇兵として一つの部隊をつくり、北イラクにおいてクルド地域政府の国防省指揮下にある部隊として戦争に参加したことが伝えられています。首都エルビル(アルビール)において、クルド地域政府とイランのクルディスタン部隊が一緒に戦っているという現象が起きてきたのです。


●テロ組織の傘下にある集団も女性部隊も、「死なばもろとも」の覚悟


 また、トルコにはクルディスタン労働者党(PKK)という組織があり、トルコ政府やEU、アメリカなどから長い間、テロリストと目されてきました。クルディスタン労働者党の流れに位置するのは、シリア北部にあるクルド人居住地域の直系、あるいは、その流れをくむ「YPG」という組織です。YPGは「人民保護軍」とかりそめに訳すことはできますが、もともとトルコ政府が不倶戴天の敵として長い間憎んできたクルディスタン労働者党の傘下にある組織と言ってもいいでしょう。すなわち、彼らが北シリアにおける抵抗の源泉になっているということです。この人民保護軍は女性を含んでいて、シリアとイラクでイスラム国と戦っているのです。

 最近の新しい進展として、クルド地域政府の「ペシュメルガ」と呼ばれる戦士たちと人民保護軍は、イスラム国と戦ったり、彼らの攻撃を阻止するために、場所を選ばず共同行動をとるに至りました。簡単に申しますと、クルド人たちは、「シリアだ、イラクだ」と言っていられなくなったということで、双方ともに「死なばもろとも」といった結論に達したのでしょう。互いが互いを必要とする依存関係が、非常に強くなってきています。


●テロ組織の子部隊である人民保護軍への国際世論も変化


 トルコのクルディスタン労働者党は、いまだにアメリカはおろかEUにさえテロ組織と見なされていますが、クルド地域政府によって国際舞台に引っ張り出され、アメリカが苦しむイスラム国の掃討に参加することをきっかけに、クルディスタン労働者党の法的な適合性を図ることが不可欠になってきたのではないかと言う人も、観察者の中にはいます。

 いずれにしてもクルド地域政府は、トルコのクルディスタン労働者党の軍事力を必要としています。今年、シンジャル等でイスラム国と戦う中、クルド地域政府はイスラム国の強さに驚愕し、彼らの驚くべき成功や残虐さをともかく阻止しなければならないと気付いたからです。

 彼らの残虐ぶりは、クルド地域政府や北シリアのクルド人居住地域における人民保護軍に対する欧米の世...
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