10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
10MTVオピニオンは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
このエントリーをはてなブックマークに追加

国際協力システムの強化に関して出てきた2つの好材料

権力政治化する国際社会と国際協力(1)環境における日本の役割

高橋一生
元国際基督教大学教授/リベラルアーツ21代表幹事
情報・テキスト
北京でのAPEC(2014年11月)
出典:首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/actions/201411/10apec.html)より
国際社会は 権利政治と国際協力という二重構造で成り立たっていると語る日本国連学会理事であるリベラルアーツ21代表幹事の高橋一生氏。現在は、中国によるアメリカの覇権へのチャレンジや、混乱する中近東への各国の対応が対立するなど、世界全体が権力政治を優位とする社会になっている。そんな世界構造の中、環境と国際開発協力という二つの視点から、髙橋氏が日本の役割を提示する。(前編)
時間:14:13
収録日:2014/10/28
追加日:2015/02/09
≪全文≫

●二重構造で成り立つ国際社会で、現在は権力政治優位社会になっている


 国際社会は、非常に明確な二重構造で成り立っていますが、その一つは、国益を表にギラギラさせながらお互いにやり合うという構造です。その構造は、権力政治(パワー・ポリティクス)によって成り立つ国際社会です。

 それから、もう一つは、国際社会全体の利益と自分の国の利益との調和を何とか模索していく、あるいは、相手国と自分の国の利益の調和を何とか探し出して具体化していくという側面の構造です。この二つ目の側面の総和という形で、国際協力というシステムがもう一つ国際社会の中にできています。

 今は、ナンバー2の中国が体制の異なるナンバー1のアメリカにチャレンジするという状況です。これは、国益と国益がガチンとぶつかることを意味します。そうなると、今までなら、戦争に結び付いてしまう構造がありました。

 それを前提にして考えてみますと、世界のいくつかの問題、例えば、クリミア半島の領土化をはじめとした、ロシアによる周辺諸国への対応が、いわゆる西側諸国から非常に大きな反発を受けているという構造を挙げることができます。

 さらには、中近東で起こっている混乱に対して、非常におずおずとではありますけれども、武力介入をするアメリカ、イギリス、フランス、カナダ等々の対応です。それに対して、ロシア、中国が反対することから、世界全体が権力政治化しつつあるわけです。つまり、国際社会の二重構造の中、権力政治が優位する社会になってしまっているのです。


●歴史的には、近代国際社会は紛争を乗り越えて国際協力が強くなってきた


 こういう基本的な世界構造がある状況では、例えば、日本の立場からしますと、日本は、米中というナンバー1、ナンバー2のつばぜり合いの一番のフロンティア・ステイト(前線)にあるわけですから、当然のことながら、安全保障に関して非常にシビアに対応しなくてはなりません。こういう状況でシビアに対応しないということは、国際社会にとって非常に大きな問題になるのです。したがって、好き嫌いの問題ではなくて、日本は安全保障に関してシビアなスタンスをとらざるを得ないと思います。

 けれども、中長期的に見ますと、国際社会は、権力政治の側面において勝った負けたということでそれぞれの国の存立基盤が確保されるという状況は非常にまれで、必ず国際協力という側面が重要になってきます。しかも、この200年くらいの歴史を見ると、紛争があり、その紛争を乗り越えると、必ず国際協力の側面が強くなっているのです。それは、その紛争を乗り越えた結果であったり、あるいは、乗り越えるプロセスであったりするわけですが、国際協力がこの200年を通じて徐々に強くなってきているのです。


●国際協力システムの強化に関して二つの好材料が出てきた


 21世紀を考えると、今の権力政治優位の時代は続いたとしても、一方では、おそらく国際協力システムを強化するプロセスは続いていかざるを得ないであろうと思います。それは、国際協力システムの強化を通じて、パワー・ポリティクス、すなわち、権力政治で物事を解決しようとすることに対してのバランスをとることになるからです。そして、パワー・ポリティクスの中で構造として出てくるナンバー1とナンバー2の紛争を何とか防ぐことも、国際協力システムの強化からしか、その手立ては出てこないであろうと、私には思えます。

 その視点から世界を見てみますと、非常に豊かな材料が二つの側面から出てきているように思います。一つは、環境、もう一つは、国際開発協力で、この二つの側面から大きな可能性が出てきていると思います。


●国内的には厳しい米中が、地球温暖化に前向きなスタンスを取り始めた


 環境の側面で見ますと、地球温暖化の問題は一つの中心課題になりますが、そこで常に問題だったのは、アメリカと中国が国際協力に関して非常に後ろ向きだったことでした。

 ところが、ここのところ、その状況が変わってきました。アメリカも中国も地球温暖化に関して非常に前向きのスタンスをとり始めてきたのです。これは、2014年9月の国連総会でのオバマ大統領および中国首脳の演説で非常にはっきり出てきました。そこで、アメリカはアメリカとして、中国は中国として、地球温暖化に関して非常に前向きのメッセージを明確に出したのです。

 ところが、よくよく見てみますと、アメリカにしろ、中国にしろ、国内的には、なかなか厳しい状況にあるのです。

 アメリカは、11月の中間選挙の結果、おそらく共和党が今まで以上に議会で強い勢力になるに違いありません。そうしますと、オバマ政権が出している地球温暖化に対する前向きの姿勢に対して、非常に大きなブレーキとなるに違いないのです...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。