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分かった人はプロ! 日中4項目合意に村山談話が隠れている

どうなる?戦後70年「安倍談話」(4)村山談話をコミットした安倍内閣

若宮啓文
元朝日新聞主筆
概要・テキスト
習近平中国国家主席と握手する安倍総理(平成26年11月10日)
出典:首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/actions/201411/10apec.html)より
戦後70年安倍談話では、「侵略」や「植民地支配」という言葉を同様に用いるわけではないと明言した安倍晋三首相。しかし、実はすでに、安倍内閣は村山談話を間接的にコミットしていると、若宮啓文氏は指摘する。一体、何がどうコミットしていると言うのか。(全5話中第4話目)
時間:10:45
収録日:2015/01/29
追加日:2015/03/19
カテゴリー:
≪全文≫

●日中4項目合意に村山談話が隠れている


若宮 実は、安倍晋三さんも、間接的には「村山談話」をコミットしていると思うのは、2014年のAPEC(アジア太平洋経済協力)で習近平さんと会いましたよね。あの時は非常にぎこちない会談で、習近平さんはそっぽを向いて、というようなことではあったけれど、一応とにかく会談しました。その会談よりも、会談の前段で、日本側から福田康夫さんやNSC(国家安全保障局)の谷内正太郎局長が中国に行き、また、外務省の局長も行ってまとめた4項目があるのです。その4項目合意は、見る人が見ないとなかなか分からない内容です。少し読んでみますが、実はこの4項目の中に村山談話が隠れているのです。分かった人は、すごいプロだと思います。

 1.双方は、日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守し、日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。

 2.双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。

 3.双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。

 4.双方は、様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して、政治・外交・安保対話を徐々に再開し、政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。

 こういうものです。

―― 見事ですね。3番などは芸術的ですね。

若宮 3番は芸術的ですね。よく分かっていらっしゃるから、芸術的とおっしゃったのだけれども、これは、中国側の要望で「尖閣諸島」という固有名詞を入れたわけです。

 また、「近年緊張状態が生じていることについて、異なる見解を有していると認識し」ですが、これを中国側は、「領有権について異なる見解を有していることを認識し」というようにしてくれれば、満足だったのです。つまり、紛争がある、領有権で見解が違う、ということを認めろ、というのが、中国の主張です。

 しかし、日本側は、それはできない、と言いました。そこで、非常に工夫して、「尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについての見解の違いである」と...
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