●今、中国全土にゴーストタウンが多くあるが心配する必要はない
今度は不動産の話に移りたいと思います。
中国経済は表面上安定していても、実は中国全土には多くのゴーストタウンがあり、それが中国のバブル崩壊、不良債権の深刻化によって金融システムの不安定化をもたらし、中国経済の失速につながるのではないか、と日本ではよく言われています。
ところが実際、中国の景気はそんなに悪くないと申し上げました。日本でも、実は安定成長期にゴーストタウンという現象がたくさん見られました。ですから、今の中国の現状をそんなに心配する必要はありません。そのことを、日本との比較でご説明したいと思います。
●シャドーバンキングの急速な伸びで社会融資総量が前年比150パーセントに
中国の不動産市場が2013年度前半、非常に大きく上昇して、後半になって落ち着いてきたわけですが、最初に、どうして2013年に不動産市場がそんなに大きく揺れ動いたのかについてご説明します。
グラフを見ていただきますと、青い棒グラフが社会融資総量(右目盛り)を示しています。2013年1月は、社会融資総量が前年比で150パーセントという、とんでもない伸びを示しています。社会融資総量とは、日本では総流動性にあたる数値で、銀行の定期預金および現預金に加え、シャドーバンキング、日本で言うと信託や郵貯なども含め、社会における全ての流動性を示したものになっています。
それが、2013年1月、シャドーバンキングの急速な伸びによって、前年比で150パーセント、つまり、2.5倍にもなっているわけですから、とんでもないインパクトを与え、その資金が不動産に流れ込みました。その結果、北京(赤い線)、もしくは、上海(濃い青の二条線)の不動産価格の推移(左目盛り)を見ていただきたいのですが、2013年の前半は上昇率が20~50パーセントの間でほぼ続いてしまったという状況です。
●中国政府の厳しい規制によって会融資総量の伸び率が鈍化
中国政府は、シャドーバンキングの急速な伸び、不動産市場への資金の急速な流入、そして、不動産価格の急騰というかなり危険な状態をいち早く察知します。この異常な状況は2013年1月から始まっているわけですが、3月ごろにはすでに中国の金融機関に対して厳しい規制を開始しました。規制は、シャドーバンキングとともに、不動産関連融資に対しても行われました。
結果として、社会融資総量の伸び率は、2013年の前半ぐらいを境に後半から徐々に低下してきました。前半は50パーセントを超える高い伸び率でしたが、後半になりますと、10~20パーセントほどの伸び率に鈍化し、2014年に入りますと、6月を除きマイナスのまま推移しています。直近の2014年11月も、まだマイナス8パーセントほどで、むしろ社会融資総量の下落、減少が続いている状況です。
●中国の不動産市場は落ち着きを取り戻し、下落傾向に歯止め
社会融資総量に対する厳しい政府のコントロールが、不動産市場に流れ込んでいた資金を大きく減少させる効果を示し、その成果として不動産価格の伸び率が急速に鈍化しました。2013年の後半は、前半とは様変わりに20パーセントを切って、10パーセント台もずいぶん増えてきました。
2014年に入りますと、前年の上期の反動があり、上海や全国平均を見ますと、むしろ前年比マイナスで推移しています。ただ、全体のマイナス幅は、そんなに深刻ではありません。特に、中国の全国平均(黒い実線)を見ていただきますと、1~3月はマイナス1.5パーセント、4~6月はマイナス0.8パーセントほどの数字を示しています。 ところが、11月になりますと0.3パーセントとなり、1月から前年比マイナスで続いていた全国平均が、ついにプラスに転じました。
このように、中国の不動産市場は落ち着きを取り戻しており、また常に心配されていた継続的な下落傾向にも、ほぼ歯止めがかかりつつあるとみていいと思います。
●東京からみても、北京や上海の不動産は高い時代になっている
最後に効果があったと思われるのは、おそらく2014年9月の末に中国人民銀行が住宅ローンに関する規制を緩和したことです。これが全体の不動産の下落を最終的に食い止めたとみられていますが、実は、中国政府はまだ不動産価格が回復してほしくないと思っています。
不動産は、一般庶民にとって自分の財産を形成する上で非常に重要ですし、また、生活の基盤でもあります。ところが、北京、上海、広州、深圳といった大都市の市街地中心部の不動産は、大きく値上がりしました。例えば、北京、もしくは、上海の市街地中心部ですが、日本ならちょうど山手線の内側に当たるような所で、今の価格は1平...