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2005年から5年で安定的内需主導型経済へと移行

習政権の課題とリスク(1)経済構造の転換

瀬口清之
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
情報・テキスト
中国経済は、習近平政権前の2005年を境に大きく変化している。それまでは、輸出競争力不足から「国際収支の天井」という問題を抱えていたという。中国はどうやって輸出競争力強化を図り、問題を解決していったのか。「習近平政権の課題とリスクシナリオ」を考えるベースとして、習近平政権前の中国経済の構造的変化をキヤノングローバル戦略研究所研究主幹・瀬口清之氏の案内で振り返る。(全15話中第8話目)
時間:12:15
収録日:2015/01/05
追加日:2015/03/20
≪全文≫

●2004年まで中国が抱えていた「国際収支の天井」問題


 これまで、中国の現状、それから、先行きの見通しについてご説明をしてきました。これからは、今後の習近平政権が直面している課題とリスクシナリオについてご説明をしていきたいと思います。

 まず、習近平政権に入る前の中国経済の構造的な変化からお話しします。

 ご覧の棒グラフは中国の貿易収支の推移を示しています。2004年までと2005年以降で全く異なる推移を示していることは、グラフを見ても明らかだと思います。2004年までの中国は、まだ輸出競争力が十分になく、少し景気が良くなると輸入が増えてしまい、輸出よりも輸入のスピードの方が高くなる傾向がありました。そのため、貿易収支がすぐに黒字から赤字になってしまうような「国際収支の天井」といわれる問題を抱えていました。

 「国際収支の天井」の問題があると、輸出競争力が不足しているため、景気が少し良くなってきても、貿易収支は悪化し、ブレーキを踏まなければいけなくなります。輸入と内需はリンクしていますので、内需が拡大すると輸入は増えていきます。つまり、内需を抑えないと輸入が増え過ぎてしまい、貿易赤字になってしまうのです。これは、特に発展途上国では、非常に多くみられる現象です。

 内需が拡大していっても貿易赤字にならない経済にするためには、輸出競争力を強くして、どんどんと輸出を増やしていく必要があります。ということは、常に輸入よりも輸出が増える経済へと構造的に転換していかなければいけません。これは、どの発展途上国でも悩んでいる問題なのですが、中国も2004年まで、同じ問題でずっと苦しんでいました。


●海外企業の誘致で輸出競争力を強化した中国


 1990年代の半ば以降、中国は市場化を進めてきましたけれども、その中で、貿易収支は、およそ200億ドルから300億ドルという非常に低い水準が毎年続いていました。グラフを見てもお分かりいただけると思います。これには、先ほど申しました輸出競争力不足という問題点がありました。

 その間、中国は、「国際収支の天井」の問題を何とか取り払おうと、輸出競争力を強化する政策を継続してきました。それが、海外から有力な輸出産業を誘致することです。

 日本は、輸出を強化するとき、海外の企業をあまり寄せ付けず、日本企業の力だけで輸出競争力を付けていった珍しい国です。中国は、それとは対照的に、日本をはじめ、アメリカ、台湾、韓国、ヨーロッパなど世界中から有力な輸出企業をどんどんと呼び込んでいきました。つまり、海外の企業力によって輸出競争力を強化していったことが、中国の特徴なのです。


●2005年以降、中国は貿易黒字で内需拡大へ


 中国が海外の有力企業を呼び込むために初めに行ったのは、労働力のコスト、つまり、賃金の上昇を抑えることでした。次に、人民元を安くし、輸出企業に対して優遇税制を適用しました。また、輸出企業が進出しやすいように工場用地の整備をどんどんと行いました。ということで、いろいろな優遇措置を設けて、世界中から有力企業を中国に呼び込んでいったのです。

 この政策は、2005年以降、大成功しました。その結果、中国は、その年からようやく十分な輸出競争力を身に付けることができたのです。2003年以降、内需が拡大していく高度成長期の時代に入っていたにもかかわらず、2005年以降は、貿易収支の黒字が増えていく状況になっています。この状況は、貿易赤字への転換を心配せず、どんどんと内需を拡大できることを意味します。もし、このとき輸出競争力が弱ければ、内需を抑えながら輸入も抑えなければいけなかったのですが、輸出競争力の強化によって貿易黒字が増え、内需をどんどんと増やしていける時代になりました。これが、中国の高度成長期の絶頂期を形成した大きな要因なのです。


●5年間で経済構造の大幅な転換を遂げた中国


 その後、中国は、2007年から2008年にかけて過熱に陥りました。2008年にリーマンショックが起こったため、2009年には、貿易黒字が急速に下落しました。これは、中国にとって輸出相手国である欧米日向けの輸出量が急速に減少してしまったことが大きな背景になっています。

 中国は、輸出量の大幅な減少による景気の後退を食い止めるため、急速に内需を拡大させました。それが2009年の政策です。以前に申しました、異常ともいえる金融緩和と強力な財政刺激策という二つの政策によって、1年後の2010年には再び2桁成長に戻したのです。

 中国は、2005年から2010年までの5年間で、構造改革が決定的に進みました。先ほど申し忘れましたけれども、黒字の増加パターンが定着したとみた中国政府は、2005年になると、まず人民...
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