10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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国有企業改革が徹底できなければ競争力低下へ

習政権の課題とリスク(2)安定成長移行後のリスク

瀬口清之
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
情報・テキスト
中国は、高度成長から安定成長に移行した後にリスクが待っていると語るキヤノングローバル戦略研究所研究主幹・瀬口清之氏。そこには中国が抱える大きな問題点が潜んでいた。2020年以降のリスクシナリオとともに、習近平政権が抱える構造改革の課題と日本の役割について瀬口氏が解説を進める。(全15話中第9話目)
時間:14:36
収録日:2015/01/05
追加日:2015/03/23
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≪全文≫

●国有企業改革が徹底できなければ競争力低下へ


 さて、そのように中国市場は非常に重要なのですが、以前に申し上げたように、中国は、2020年前後に高度成長が終わる可能性が極めて高いのです。それ以降、安定成長に移行した後には、リスクが待っています。

 中国は、2005年以降、経常収支の黒字をしっかりと維持しています。これは、輸出競争力を十分に高めたからですが、中国が今取り組んでいる国有企業改革を今後、徹底して実行できないとなると、中国の輸出競争力は、徐々に低下していく可能性があると指摘されています。これが、今最も心配されている一つ目のリスクです。

 もし、国有企業改革がうまくいかないとどうなるか。日本の国有企業改革の事例で考えてみますと、国鉄(日本国有鉄道)、郵政、電電(日本電信電話公社)が、かつて三公社五現業といわれていた国有企業の中の代表的な改革対象企業でした。

 国鉄は、JRへの転換を図り、ある程度成功していますが、電電に関しては、NTTに変わり、電電ファミリーになったNEC、富士通、沖電気をみても、かつての輝きはかなり失われており、国際競争力は、かつてなら十分戦えていたサムソンやヒューレットパッカードなどの企業に比べると、かなり脆弱な体質になっていることも明らかです。これは、電電公社の国有企業改革がいかに難しかったかを示しています。郵政に至っては、いまだに昔とほとんど変わらない営業活動を続けていますので、これはもう箸にも棒にもかかっていないと言っていいと思います。その意味で、日本でも、国有企業改革は非常に難しいのが現状です。


●国有の主要産業が多い中国にとって改革は試練


 これに対して、中国の国有企業改革は、日本に比べると非常に幅が広いのです。先ほど日本の主な国有企業を三つほどお伝えしましたが、中国も同じで、そこに当たる鉄道、通信国有、郵政は、いずれも国有です。しかし、中国は、それ以外にも数多くの国有企業を抱えています。例えば、金融、物流、鉄鋼、造船、石油化学など主要産業は軒並み国有企業です。

 そういう企業が今後もし、日本の電電公社ほどの改革しかできない、もしくは、最悪の場合、日本の郵政のようになってしまうと、競争力は大幅に失われていく可能性があります。もちろん、足元では、先行きにかなり希望が持てるガラス産業のように、国有企業改革の兆しが感じられる分野もありますけれども、主要産業の国有企業改革は、これからまだまだ非常に高いハードルを越えていかなければなりません。習近平政権にとっては、非常に大きな試練が待ち受けていることになるのです。


●国有企業改革のリスクシナリオ


 もし、国有企業改革がうまくいかなくなると、産業競争力が低下します。そのリスクシナリオについて簡単に触れてみます。

 産業競争力が低下すれば、当然輸出が伸び悩みます。一方、国内で生産できないものは海外から補わなければいけないため、輸入が増加します。輸出が伸び悩んで輸入が増えれば、貿易赤字になり、経常収支は赤字になります。経常赤字になると、今度は人民元が安くなります。人民元が安くなると、輸入品の物価が上昇するため、それが国内物価に転嫁して、国内がインフレになります。インフレになれば、それを引き締めるため、利上げをしなければいけません。そこで内需を抑えて、なんとか貿易赤字の増大を食い止めようとします。かつて2004年以前の中国経済がそういう状況だったのですが、その時の中国経済に再び戻...
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