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中国ビジネス負け組企業の典型例は、社長が中国に行かない

中国ビジネス成功のカギ(2)社長の決断力

瀬口清之
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
概要・テキスト
中国ビジネスにおける日本企業が勝ち組と負け組に二極分化している状況が分かった。今回は多くの事例を見てきたキヤノングローバル戦略研究所研究主幹・瀬口清之氏が「負け」の理由を詳しく分析。その根本原因を探ることから、日本企業の意識改革のためのヒント、成功へのカギを模索していく。(全15話中第13話目)
時間:12:59
収録日:2015/01/05
追加日:2015/03/27
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≪全文≫

●負け組企業の特徴は「社長が中国に行かない」こと


 もう少し詳しく負け組企業の特徴を説明したいと思います。まず、負け組企業では、社長自身が年に1、2回しか中国に行かない、もしくは全く行かないのが典型的なパターンです。

 これでは、社長は中国を理解できません。したがって、社長は中国の重要案件を自分では決定できません。

 社長が自分で決定できない場合、誰に頼むか。本当に中国の責任者に全面的に依存できるのでしょうか。一般的な大企業や中堅企業では、全ての役員会の決定を中国担当の役員だけが下すのは、非常に難しい状況です。経営企画、本部、人事、財務など、組織内部の他の重要なポストにある役員にも相談をすることになります。

 ところが、そういう他の分野の担当役員は、中国のこのような激しくて大きな変化、もしくは多様な地域別の差異、日本と全然違う商売の仕方について、理解しているはずがありません。したがって、彼らには決定が下せません。「難しい、難しい」と頭は抱えてくれますが、「こうしましょう」という前向きの提案は当然できません。


●「売れる」中国を知らず、権限委譲が表面ばかり


 さらにもう一つ、難しい問題があります。中国経済は、2004、5年ぐらいまでは安い労働力を目当てにした「工場の時代」でしたが、今は中国をマーケットと見る「市場の時代」に移っていることです。以前の「工場の時代」には、日本のモノを持っていっても売れませんでした。しかし、2010年以降の数年間、日本の企業は中国に「売る」のが主目的になっています。

 ここまで大きく時代が変化すると、以前の中国経験はほとんど役に立たなくなります。社長のご意見番が2007、8年以前の中国しか知らないアドバイザーだった場合、どんどん間違った方向に進んでしまう難しさがあるのです。

 社長の中には「現地への権限移譲は十分やっている」と言われる方も多いですが、実際にはほとんど本社の方で重要案件を決めてしまっている。あるいは、本当に経営責任を持たなくてはいけない現地のトップと社長の間で、タイムリーな意思疎通が必ずしも図れていない。

 このようなことが、負け組企業ではよく見られるケースです。いずれも結果として、どうしても意思決定が遅れる事態を多発させます。


●本社側の理解不足に「日中関係」が拍車をかける


 現地側の抱える...
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