10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
10MTVオピニオンは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
このエントリーをはてなブックマークに追加

飽和社会、残るわずかなシェアを競ってもゼロサム競争に

飽和型から創造型に移り変わる需要

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長
情報・テキスト
時代は「飽和型需要」から「創造型需要」に向かうべきだ、と株式会社三菱総合研究所理事長・小宮山宏氏は語る。飽和社会において、その「創造型需要」の鍵になるのが再生可能エネルギーなのだが、中でも小宮山氏が注目するのが中小水力発電である。その多くのメリットを紹介しつつ、さらにビジネス生態系構想を論ずる。
≪全文≫

●工業が行き渡り、迎えた「飽和」の時代

 
小宮山 私は、これからの未来社会を考えていくときに、時代のキーワードは「飽和」だと思っています。それは今まで先進国が独占していた工業を世界が共有し始め、どこでも工業をやるようになってきたという意味です。「工業」とは「産業革命」のことですから、つまり「産業革命が世界中に行き渡った」という意味で、「飽和した」ということです。

 その結果、何が起こったかというと人間の持っているモノが飽和したのです。私が子どもの時は白黒テレビです。それまではラジオしかなくて音しか聞いていなかったのが、画面が動くのですからね。私の小学校のクラス50人の中で、テレビがある家は電気屋さんのお宅だけでしたから、学校が終わると、そこに見に行ったわけです。

―― 1950年代半ばから後半、今から60年前のことですね。

小宮山 子どもだけではなく、親も欲しいわけであって、お金ができればモノを買った。これが高度成長のスタートです。

 その高度成長の終わりが、私が大学生だった頃から、1960年代から70年代にかけてで、自動車のカー、クーラー、カラーテレビで「3C」と言われましたが、その後はこのような大きな需要の動きはありません。いま先進国は大体二人に1台、日本であれば5800万台の車があって、車を二人に1台持ったら、それ以上は増えないという意味です。ですから、先進国は人口も飽和しているし、持っているモノも飽和しているから、需要は買い替えでしか、生まれないのです。


●新しい雇用を生み、「創造型需要」の時代へ

 
―― それが「飽和型需要」なのですね。

小宮山 私はこれを「飽和型需要」と呼んでいます。「アジアの新しい需要を成長に取り込もう」という考え方は正しいのですが、これは「アジアのまだ飽和に至っていないところのシェアを取っていきましょう」という話ですよね。これも今の日本にとって、既存産業が生き残るためには不可欠な話なのですが、これはゼロサムの競争なのです。日本は需要を取りたいけれど、フォルクスワーゲンもGMも取りたいわけで、そこをどうやって取るか、という話ですから一人勝ちは無理ですよね。最終的には、例えばテレビにしても何にしても、相当多くの国が自国でつくるようになるでしょう。トヨタだって、国内ではなくてタイでつくるでしょうし。そういう種類の競争ですから、これでは国内は幸せになれないのです。

―― 国内に雇用は創れないのですよね。

小宮山 そうです。今後、どうやって国内に雇用を創っていくかが問題です。では、なぜ雇用が減るかというと、日本の中でも生産はあるのですが、モノは一定量になり、増えないのです。その一方で企業は生産性を上げます。サービスにしても、ものづくりにしても、生産性を上げるということは売れるものに対して、人を減らすことになります。

―― 100人でやっていたことが、生産性を上げたら50人でできる。

小宮山 そうです。これがまた逆に、産業革命という話になるわけで、これが続いていきますから。新しいビジネスが生まれなければ、雇用は減るのです。ですから、そこにどうやって新しい雇用を創っていくか、これは新しい需要を創っていくかということですから、私は飽和型需要に対して、それを「創造型需要」を定義して、創造型の需要には何があるかについて、一生懸命探しているという状況です。


●創造型需要の鍵となる再生可能エネルギー

 
小宮山 その有力な一つが再生可能エネルギーです。50年単位で考えていけば、人類は化石資源から再生可能エネルギーに移行していくということは、ほぼ確実だと思っています。その再生可能エネルギーへの移行を、具体的には2030年から2050年くらいで見ようとすれば、エネルギーの技術は、核融合エネルギーがどうなるかは分かりませんが、たとえ核融合が出来たとしても、それが2050年にシェア1パーセントに行くというのはあり得ないことで、そのようなことを考えても仕方がないのです。また、風力発電も日本でポテンシャルが大きい浮体型の洋上風力発電はまだ怪しいので、2030年から2050年くらいでの実用化にあまり期待するのはいけないと私は思っています。

 2030年から2050年くらいで相当な量を期待できるのは、今ある技術で、それが改良されていくというものです。そうすると太陽光発電、風力発電、量的に大きいのはこの二つであり、それからバイオマス、地熱、水力だと思います。


●注目すべき中小水力発電のメリット

 
小宮山 水力は、今でも電力全体の8パーセントから9パーセントを発電していて、すでに大きいのですが、大きなダムでの発電はもうやってしまいました。それで残っているのは中小水力発電なのですが、面倒くさいから今まで...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。