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飽和社会、残るわずかなシェアを競ってもゼロサム競争に

飽和型から創造型に移り変わる需要

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
概要・テキスト
時代は「飽和型需要」から「創造型需要」に向かうべきだ、と株式会社三菱総合研究所理事長・小宮山宏氏は語る。飽和社会において、その「創造型需要」の鍵になるのが再生可能エネルギーなのだが、中でも小宮山氏が注目するのが中小水力発電である。その多くのメリットを紹介しつつ、さらにビジネス生態系構想を論ずる。
≪全文≫

●工業が行き渡り、迎えた「飽和」の時代

 
小宮山 私は、これからの未来社会を考えていくときに、時代のキーワードは「飽和」だと思っています。それは今まで先進国が独占していた工業を世界が共有し始め、どこでも工業をやるようになってきたという意味です。「工業」とは「産業革命」のことですから、つまり「産業革命が世界中に行き渡った」という意味で、「飽和した」ということです。

 その結果、何が起こったかというと人間の持っているモノが飽和したのです。私が子どもの時は白黒テレビです。それまではラジオしかなくて音しか聞いていなかったのが、画面が動くのですからね。私の小学校のクラス50人の中で、テレビがある家は電気屋さんのお宅だけでしたから、学校が終わると、そこに見に行ったわけです。

―― 1950年代半ばから後半、今から60年前のことですね。

小宮山 子どもだけではなく、親も欲しいわけであって、お金ができればモノを買った。これが高度成長のスタートです。

 その高度成長の終わりが、私が大学生だった頃から、1960年代から70年代にかけてで、自動車のカー、クーラー、カラーテレビで「3C」と言われましたが、その後はこのような大きな需要の動きはありません。いま先進国は大体二人に1台、日本であれば5800万台の車があって、車を二人に1台持ったら、それ以上は増えないという意味です。ですから、先進国は人口も飽和しているし、持っているモノも飽和しているから、需要は買い替えでしか、生まれないのです。


●新しい雇用を生み、「創造型需要」の時代へ

 
―― それが「飽和型需要」なのですね。

小宮山 私はこれを「飽和型需要」と呼んでいます。「アジアの新しい需要を成長に取り込もう」という考え方は正しいのですが、これは「アジアのまだ飽和に至っていないところのシェアを取っていきましょう」という話ですよね。これも今の日本にとって、既存産業が生き残るためには不可欠な話なのですが、これはゼロサムの競争なのです。日本は需要を取りたいけれど、フォルクスワーゲンもGMも取りたいわけで、そこをどうやって取るか、という話ですから一人勝ちは無理ですよね。最終的には、例えばテレビにしても何にしても、相当多くの国が自国でつくるようになるでしょう。トヨタだって、国内ではなくてタイでつくるでしょうし。そういう種類の競争...
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