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英エコノミスト誌も「外交的な大失敗」と論評

靖国神社の参拝がなぜ問題になるのか(1)安倍首相の靖国参拝と国際的波紋

若宮啓文
元朝日新聞主筆
情報・テキスト
安倍総理の靖国参拝は中国、韓国のみならず欧米諸国にも波紋を広げた。各国新聞でも外交的失策と厳しい指摘を受けたこの行為は、中国、韓国の対日批判を優位にする理由を与えてしまったと言える。小泉・安倍両総理の時代背景を比較し、安倍参拝のマイナス点を浮き彫りにする。
時間:12:58
収録日:2014/02/12
追加日:2014/02/24
ジャンル:

●参拝は「御英霊に哀悼の誠」「恒久平和の誓い」と首相


安倍総理大臣が、昨年の暮れの12月26日に靖国神社に参拝しました。そのことは国内でも賛否両論で、かなりの批判があるわけですが、国際的に大きな批判にさらされております。そのことについて、これからどういう展開になるのか波紋が広がっておりますので、靖国神社の参拝問題について、何回かに分けてお話ししたいと思います。
安倍さんは靖国神社に行かれまして談話を発表しています。この参拝というのは、「自分の内閣ができて1周年にあたって、かつて尊い血を流した英霊に報告かたがたお参りした」「今の平和と繁栄というのは、決して自分たちの手だけでできたのではなくて、そういう戦争で倒れた方々の尊い犠牲の上にあるのだ」ということで、「感謝もかねて慰霊に来た」ということでした。それから、「二度と戦争の惨禍に苦しむことのない時代を作りたい。アジアの友人、世界の友人とともに、世界の平和を考える。そのためにも、そういう誓いをしてきた」というようなことをおっしゃったわけです。


●中韓のみならず米欧露の批判も噴出


私は安倍さんのそういう気持ちを疑うものではないのです。ただ、実際に参拝したことが、本当にアジアの友人、世界の友人とともに平和を作っていくということに役立つのか。
実際にはそうではなくて、アジア、特に近隣の中国や韓国の感情を非常に逆なでして、ただでさえ最近とげとげしい関係になっている日中、日韓の関係を、非常に厳しいものにしてしまっている。欧米諸国が非常に注目しているのも、そのような点なのだろうと思います。
案の定、韓国や中国からは厳しい批判がありました。例えば、韓国では、政府の報道官が「慨嘆と怒りを禁じ得ない」あるいは「国会で糾弾を決議する」と批判したり、中国では、「人類の良識を踏みにじった」というような批判をしています。
これは、ある程度予想できたことなのですが、少し驚いたのは、当日早速、まず日本にあるアメリカの大使館が、これに「失望を禁じ得ない」「失望した」という声明を出したわけです。さらに大使館だけかと思ったら、本国の国務省でも同様の「失望した」という声明が出たということで、アメリカがある種驚きというかとまどいというか、内に秘めた怒りを表明したというのが事実ではないかと思います。
それから、ヨーロッパでも、今までこのようなことにそれほど関心はなかったのではないかと思われるEUが「この参拝に非常に留意している」という声明を出しまして、しかも、ただ「留意」というのではなくて、「近隣諸国、特に中国や韓国との関係改善にこれは貢献するものではない」というような見方を、わざわざ声明しております。
それから、ロシアの外務省も、情報局長が、やはり「遺憾の意を表明する」ということになりました。その中には、「日本の一部の勢力は、第2次大戦の結果をめぐり、世界の共通理解に反する評価をしている」というようなくだりもあるわけです。
新聞の論調は、さらにシニカルであったり厳しいものが多いわけです。中国、韓国はもとより、欧米のものを見てみますと、例えば、ワシントンポストでは、安倍総理自身の政策や考え方について「日本の戦前の大日本帝国への郷愁に結びつけるようなそういう姿勢を見せてしまう。それは安倍さん自身のこれからやろうとしていること、目標を損ねることになるのではないですか」というような論評を社説で書いています。
ウォールストリートジャーナルは、再軍備、軍事拡張で何かと評判が悪い中国が批判にさらされる中で、逆に「これは中国の指導者に対する贈り物をしてしまったのではないのか」と言っています。つまり、中国は日本に対して、「日本が軍国主義化してくるのではないか」という懸念をしばしば表明するわけですけれども、必ずしも当たっていないはずのそのような批判に対して、贈り物をしてしまったという言い方です。そういう意味で、戦略的に非常にマイナスだと見ています。
ニューヨークタイムズでは、社説で、「日本の天皇陛下が靖国神社にお参りしていないではないか」ということまで触れて、安倍総理の姿勢に疑問を示しています。
あるいは、イギリスのエコノミスト誌でも、「これは外交的な大失敗である」というように論評しています。おおむねそのような論評が多いわけです。


●敵に塩を送り、態度を硬化させる原因に


今の論評でもありますように、私は、この参拝は、韓国や中国の対日批判に対して、敵という言い方も何ですが、いわば敵に塩を送ったようなものになってしまったというように思います。
最近は、例えば韓国に対して、アメリカなどは、「あまりかたくなにならず日韓が首脳会談をやったらどうか」ということを、しきりにすすめていたわけです。
アメリカのバイデン副大統領が12月の初めに日...
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