●変わらざるものに目を向ける
私の持論は「真理は平凡の中にある」ということなのです。本当に大事なことは、実は当り前の中にあります。
変化はもちろん大事だけれども、変化にばかり目を向けていると自分を見失ってしまいます。常に強迫観念に駆られるからです。俺は遅れているんじゃないか、取り残されているんじゃないか、という強迫観念です。こういう時代に変化に目を向けることはもちろん大事だけれども、もっと大事なのは「変わらざるものに目を向けろ。そうしなければ地面から足が浮いてしまう」ということです。
今、大企業に行ってもどれだけ精神的に苦しんでいる若者が多いことか。それはあまりに変化が強調されて、浮足立った生き方になっているからではないでしょうか。私は、変化を無視する訳ではありませんけれども、もっと大事なのは、変わらざるものにしっかりと目を向けていけば、「慌てることはない。恐れることはない」という気持ちの落ち着きがあるのではないかと思ったのです。
●人間の本質は変わらない
変わらざるものとは何か? 人間の本質は全く変わらないということです。時代がどんなに変わっても人間の本質は変わっていないのです。その証拠に、2500年前の論語を読んでみても皆、今でも心の糧にするではないですか。もし人間の本質が変わっていれば、2500年前の論語はいま読めたものではありません。聖書は2000年前。もし人間の本質が変わっていれば、聖書などとても読めません。
今でも心の糧、基本の軸にするものは全く変わっていないということですね。だから人間の本質は何も変わっていない。その変わっていない本質にしっかり目を向けていかないと浮足立った生き方になり、常に強迫観念に駆られるのです。変わらざるものにしっかり目を向けろ。1000年後も2000年後も変わらないもの。それは何か。人間の本質は変わらないのです。
●当たり前のことを徹底してやることが大切
ですから、若い人には「真理は平凡の中にある。だから一番大事なことは、誰でもやっている当り前のことを誰よりも徹底してやるということだ。それが“底力”だ」と言うのです。誰もがやっていない特別なことをやろうとすると、急に苦しくなるのです。自分だけ取り残されているような、遅れているような孤独感を感じるのです。私はこう思います。誰もがやっている当り前のことを誰よりも徹底してやれ。それが“底力”だ。ですから、真理は平凡の中にある、ということなのです。
●22年間書き続けている「デイリーメッセージ」
この前、感動的な出会いがあったのでお話しします。「デイリーメッセージ」というものがありまして、これは私が松下政経塾在職中に、塾生に向けてパソコン通信で送ったものをまとめた冊子です。
このエピソードは「デイリーメッセージ」の中でも触れていますが、私は昔、松下幸之助に叱られたことがあるのです。「最近どうや?」と言われて「特に変わりありません」と答えたら、滅茶苦茶叱られたのです。「なに? 変わりない? 君、万物は変化してるんやで。なんで変わらんと言うのか。給料返してくれ」と言うのです。「人間も、庭に咲いている花も全て、毎日変化しているよ。なんで、君、変化せんのや」と怒られたのです。
それ以来、この冊子の名にあるように「日々新た」ということで、一日生きているのであれば一つくらい発見と感動のある人生を歩んでみようということで、一日1400字の文章を書こうと決めたのです。
これが政経塾時代のことで、今日が8725日目です。8725日間、毎日書いているのです。22年間365日、毎日書いています。これを短く圧縮したのが携帯メールで、さらにその一年分をまとめたのが、『志高く生きる』『日々発見 日々感動』(致知出版社刊)です。ですから、原点は政経塾時代の「デイリーメッセージ」です。
●「平常心」で評判になった県立山形中央高校
この「デイリーメッセージ」の表紙の写真は、最近見に行った高校生の野球の風景です。私は、どうしてもこの学校に行ってみたかったのです。山形中央高校といいます。山形中央高校に一回行ってみたいと思ったのです。「願えばかなう、求めれば出会う」で、そう言い続けていると必ずどこかで紹介する人が現れるもので、案内してもらいました。
この高校が、なぜ有名になったのか。山形といえば山形日大高校などは高校野球の常連校です。全国から野球の上手な人を集めて、素晴らしいグラウンドもあり宿舎もあって、野球が強くなる条件は全部そろっています。山形中央高校は県立山形中央高校といいます。部員数31名で全員、山形県の出身なのです。この学校が有名になったのは決勝戦です。山形大会の決勝戦で急に有名になったのです。
9回裏まで3-0か4-0で負けていました。最終回9回裏...