●無料でも駄目なのは、一体何が問題か
最初に私が考えたのはエイチ・アイ・エスが得意としている手法です。韓国5万円のチケットを19800円なり9800円にすれば、とてもよく売れて、2割から3割はお客さまが増えることを私たちは知っていました。
「よし。ハウステンボスも値段を下げよう」と、5000円台だった入場料を4000円台に下げ、とくに夕方からのお客様を増やすもくろみで、3000円の料金を2000円、2000円を1000円、1000円を半ばヤケクソで無料にしました。
ところが、入場者は全然増えない。値段を下げても来ないとは、エイチ・アイ・エスの使う手法は通用しないのか。まずここから学びが始まるのですが、「値段を下げても入らない。なぜか?」というと、やはり面白くないからです。
いろいろなミュージアムの並ぶエリアを「ミュージアムスタッド」と呼んでいますが、当時そこは多くの施設がクローズされていて、夜は真っ暗で怖いと言われていました。試しに歩いてみると、本当に怖い。「お客さまが夜に来られないのは当然だ。いくら安くしても、面白くないし、楽しくないし、暗い」と思いました。
この頃は資金もあまりありませんので、「何もしなくても怖い」ところを生かして「スリラー・エリア」にしようと考えました。「スリラー・ファンタジー・ミュージアム」です。これが大変人気を得たのですが、もともと怖い場所だから当然だと思っていました。
●失敗と成功の間を結ぶ「裏腹」哲学とは
それは少し置いておくこととして、とりあえず値段だけでは駄目だと分かったのが、最初の学びでした。失敗はしましたが、新しい学びを得ます。致命的な失敗ではいけませんが、失敗することで必ず原因が浮かぶからです。
私はよく言うのですが、全ての問題は必ず「裏腹」の関係にあります。ハウステンボスにとって、大きいということがマイナスに働きましたが、大きいことはプラスでもある。失敗の裏には必ず裏腹に成功があります。「失敗は成功の母」と言いますが、失敗の裏には成功があります。問題は、どうやってそれを見つけるかです。
われわれは、新しいものが入ってくると、必ず失敗したりうまくいかなかったりします。しかし、うまくいかないのは、うまくいかない原因があり、それを裏返すことが成功につながるのです。「面白くないから来ない」と分かったので、何かイベントをやろうと考えました。
●二番煎じの「陶器市イベント」も集客なし
「イベントをやりたいが、何かないか?」と相談すると、あの辺りは有田があったりして、陶器が非常に有名です。本当に良い陶器がいっぱいある土地で、有田の陶器市には、約1週間で100万人もの人出があるという。ハウステンボスが、年間でさえ100万人ちょっとしか集まらなかった当時です。
1週間で100万人集まるのだったら、陶器市をやろう。100万人とは言わなくても、10万人ぐらいは集まるだろう、と踏んで、陶器市をやりました。
しかし、お客さまは全然来ないです。「なぜ来ないんだと思う?」とスタッフに聞いたら、「それは社長、入場料を払ってまで陶器市には来ませんよ」と言う。有田の陶器市はタダだと、それを先に言ってほしいですね。「有田の陶器市はタダで、うちの3倍ぐらいの規模でやっている。こんなセコい陶器市にお金を払って来る人はいないでしょう」
これには、むかつきました。せっかくお金をかけて陶器市をやろうと思い立ったのに、お客さまが全然来ないのでは始まりません。ということで失敗です。
「失敗は成功の母」と言いますので、そこでまた「なぜ来なかったのか」と考えます。今回は有田のように大きな陶器市ではなかったから来なかった。入場料を取ったから来なかった。よし。では何か新しいことをやろう。ここで気付いたのは、普通のイベントでは人は集まらない、わざわざ遠くから来てはいただけないということです。
●素晴らしいバラ園に人が集まらない理由
それが、ちょうど5月ごろのことで、バラの季節が始まっていました。ハウステンボスのバラ園は、私がつくったのではなく、昔からすごいのです。前の方や野村さん(野村プリンシパル・ファイナンス)などがお金をかけてくれて、素晴らしいものにされていました。その素晴らしいバラが咲き始めていました。
「なんとすごいバラだろう」と思い、次に「こんなにきれいなバラなのに、なんでこれ、お客さまは誰も来ないの?」と疑問を持ちました。バラ園にはお客さまがほとんど見当たりません。しかも年間1億円の管理費、手入れだけで何千万円もの費用がかかる。「論外だろう。こんなものつぶしてアウトレットにしろ」と言いました。
ところが、日に日に素晴らしいバラが咲きそろっていきます。「...