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有事になったら、海上保安庁と自衛隊の関係はどうなるのか

安全保障のチャイナリスク対応(5)質疑応答

吉田正紀
元海上自衛隊佐世保地方総監
概要・テキスト
前海上自衛隊佐世保地方総監・吉田正紀氏の安全保障分野におけるチャイナリスクへの対応に関する講演が終了し、会場からの質疑応答となった。参加した経営者やビジネスマンは、わが国の安全保障の最前線の元指揮官に対してどのような疑問をぶつけたのだろうか。(2014年12月1日開催日本ビジネス協会インタラクティブセミナー講演より、全5話中第5話目)
時間:11:25
収録日:2014/12/01
追加日:2015/07/06
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≪全文≫

●中国漁船衝突事件への対応は正しかったか


―― 民主党の時代に向こうの漁船が来て、巡視船に体当たりした事件がありました。不法侵入だから当然逮捕したものの、あの時、民主党政権はすぐに船員も船長も帰してしまいましたね。あれは、今日の先生の戦略のお話にあった「不敗不戦」の定義からすると、やはり正解だったということなのでしょうか。

吉田 正確に申し上げますと、あの時は「すぐに帰さなかったから失敗した」のです。あの事件をもう一度振り返りますと、あれは公務執行妨害で逮捕しました。公務執行妨害による逮捕は、海上保安庁のレギュレーションとしては適切でした。逮捕の後の経緯について、実は私はあの頃と今回慶應義塾大学で教鞭をとる際に、もう一度シミュレーションして、勉強し直してみました。

 事件が起こった9月7日は、小沢一郎氏と菅直人氏の代表選が行われていた最中だったため、仙谷由人官房長官が指揮をとり、「政治的な空白期間」を埋めました。彼は弁護士で、法律のプロですから、法案に従って粛々と手続きを進めたのです。

 あの時の中国は、毎日のように連続してカードを切ってきました。夜中にわざわざ大使を呼びつけるなどの行為があって、レベルを上げながら各所にメッセージが送られていたのです。


●必要とされていたのは政治的配慮


吉田 その源は、小泉政権の頃に起きた中国人活動家の尖閣上陸事件にありました。彼らを解放する際に、小泉政権は明確に「政治的な配慮による」と言いました。それに比べて2010年の場合は「政治的に配慮がない」というのが中国側の見方になるのです。

 中国では「日本の陰謀だ」という説も飛び出したぐらいです。結局、19日に船長の拘留延長の決定が出ると、中国側は無視されたと思い、切ってくるカードがどんどんエスカレーションし始めます。

 ただし、軍事的なカードを切るのは危ないので、水平走行の方です。先ほどの講演で触れたように、戦略をエスカレーションするにも垂直方向と水平方向があります。中国人観光団の規模を縮小したり、日本人大学生の上海万博招致の中止を通達したり、レアアースの輸出を差し止めたり、日本企業の社員を不法撮影で拘束したり。違う分野の水平軸で、エスカレーションのラダーを違う分野で上げていっていたのです。

 それを全く理解できていなかったのが問題で、実はあの時に帰さなか...
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