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財政健全化~歳出抑制とともに財政の質的向上を

伊藤元重
東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授
情報・テキスト
2020年までにプライマリーバランスを黒字にするという安倍内閣の目標は達成できない可能性が高いと、東京大学大学院経済学研究科教授・伊藤元重氏は言う。それはなぜなのか。2020年以降の財政はどのように考えていけばよいのか。伊藤氏が財政健全化の現在と将来を俯瞰する。
時間:20:04
収録日:2015/05/27
追加日:2015/06/22
ジャンル:
≪全文≫

●2015年までの目標は達成できるだろう


 安倍内閣の経済政策では、「財政健全化」がますます重要になってきています。昨年の2014年11月に安倍晋三総理が記者会見をして、今年2015年、消費税率を8パーセントから10パーセントに引き上げる予定だったところを、2017年7月まで、約1年半遅らせる決断を下しました。当然、注目されるのは、それで本当に日本の財政健全化が実現できるのかということです。そのため、安倍総理は同じ会見の中でもう一つ、2015年夏までに2020年までの財政健全化のより具体的な工程を明らかにしていくともおっしゃいました。今まさに、財政改革のプログラムについて政府内外で議論が行われているところです。

 よく知られているように、安倍内閣は、発足時に民主党・菅内閣が2010年に決めた二つの目標を踏襲しました。一つは、2015年までにプライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字の対GDP比率を2010年の半分にする、つまり約6.6パーセントの赤字幅を3.3パーセントに下げることで、もう一つは、2020年までにプライマリーバランスを黒字にするという目標です。

 今のところ、2015年度に赤字幅を半分にするという目標はほぼ達成できるだろうといわれています。安倍内閣がデフレ脱却を果たし、税収がかなり増えていることが原因です。消費税が5パーセントから8パーセントに上がったことで増えた税収と同じくらい、デフレ脱却による名目GDPの増加、企業の業績の向上による法人税の増加がありました。


●中間目標を設定する必要があるのでは


 したがって、世の中の関心は、二つ目の目標が達成できるのかということにありますが、残念ながら現在の財政制度では、2020年までにプライマリーバランスの黒字化を実現するのは難しいだろうといわれています。内閣府のシミュレーションによれば、安倍内閣の成長戦略が実質2パーセント、名目3パーセントの経済成長率を実現しても、まだ9兆4000億円もの財政赤字が残ってしまいます。これをどのように削っていくかが重要な鍵になります。

 一方で、実質2パーセント、名目3パーセントの高い経済成長を前提にした財政健全化計画そのものに意味がないという議論もありますが、アベノミクスの当面の目標である以上、それを前提に財政健全化計画を立てていくのは妥当な姿勢だと思います。

 気をつけなくてはならないのは、報道で一人歩きしているこの数字はあくまでも機械的な計算で算出されたものだということです。具体的には、GDPが1パーセント増えたときに税収が1パーセント増える「税収の弾性値1」で計算されていますが、過去2、3年の弾性値はもっと高いですから、今後の税収はもう少し多いはずです。

 一方、過去の財政支出、特に社会保障費の伸びなどから算出する歳出の伸びも、内閣府のシミュレーションではかなり高い数値になっていますが、計算は甘いといわれています。数年前、日本の社会保障費の財政負担は毎年1兆円増えると予想されていました。しかし、今年度、介護保険料を少し厳しめにしただけで、伸びは5000億に下がっています。これらの前提条件は、足元の動きを見ながら、柔軟に見方を調整していく必要があるだろうと思います。

 ここから先は個人的な意見ですが、2020年まで、まだ5年あります。5年先の目標だけを見据えて、今から全てを決めていくのは難しいでしょう。そうすると、2018年あたりに中間目標を設定することが必要...
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