10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
10MTVオピニオンは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
このエントリーをはてなブックマークに追加

インド中銀が再度引き締めに転じるかがルピー帰趨の鍵

続落するインドルピー~インドの経済政策は?

高島修
シティグループ証券 チーフFXストラテジスト
情報・テキスト
続落するインドルピー安。一体どう見ればいいのか? 今後どうなるのか? 手掛かりは2013年春からのインドルピー下落とそこからの復活劇にある。シティグループ証券チーフFXストラテジスト・高島修氏が過去の類似ケースの分析に基づき、為替マーケットの行方を見通す。(全3話中第1話目)
時間:12:30
収録日:2015/06/09
追加日:2015/06/15
≪全文≫

●じわじわと下落が進むインドルピー


 こんにちは。シティグループ証券の高島修です。今日は、インドルピーについてお話しします。

 モディ政権が誕生して、インドに対する期待と懐疑論が両方高まっている状況にあります。ごく足元においては、インド中央銀行が利下げをしており、政策金利を7.25パーセントまで引き下げてきました。これに伴って、じわじわとしたインドルピー安が、為替マーケットにおいて進んでいます。それ以上に目立つのは、今年の春ごろから、インドの株式市場がかなり下がってきていることです。モディ政権誕生に対する期待もあって、インドの株式市場は市場最高値を更新していましたが、この春先ごろから少し下落が目立つ状況になっているのです。


●2013年春の下落理由は経常赤字と金融緩和


 インドルピーに関して言えば、比較的大きな下落が、2013年の春にありました。この時は、インドだけが売られたわけではなく、インドネシア、ブラジル、メキシコといった新興国通貨が軒並み下落するということが起こりました。この2013年春以降の新興国通貨の下落は、バーナンキショックが理由だといわれています。当時、連邦準備制度理事会(FRB)の議長であったベン・バーナンキ氏が、FRBによる資産買い入れの減額(専門用語で「テーパリング」と呼ぶ)を示唆する発言をしたことによって、FRB、すなわちアメリカの中央銀行の金融政策が、緩和から引き締めに変わるという不安が新興国市場を襲いました。その中で、インドルピーも他の新興国通貨と同じように下落をしたのです。

 2013年春の段階で、インドルピーは、対米ドルで約1ドル55ルピー前後の水準でしたが、その後、2013年の8月には、1ドル68ルピー前後まで急激に値を崩しました。この時、実は、他の新興国通貨よりもインドルピーの下げの方が大きかったのです。その理由として一つは、インドの経常赤字が当時拡大していたことが挙げられます。およそ2013年の前半の段階で、名目上の経済規模との比率(名目GDP比)5パーセント前後までインドの経常赤字が拡大していたわけです。アメリカの金融緩和の巻き戻しによって、投資家のお金が動かなくなってしまう、もしくは、アメリカに戻ることになってくると、どうしても当時のインドのように経常赤字の大きい国の通貨が売られやすかったことが一つの理由なのです。

 もう一つの理由は、インド中央銀行の金融政策にありました。その頃、インドのインフレ率は約10パーセントから11パーセント前後だったと認識されていますが、インド中央銀行が景気刺激のために金融緩和策を行っており、2012年には8.5パーセントだった政策金利を、2013年の前半には7.25パーセントまで引き下げていたわけです。こういったところが、当時インドルピーが他の新興国通貨よりも売られやすかった理由だと考えています。


●底入れの三つの理由(1)金融引き締め


 こうした中、そのルピー安に歯止めをかけたものは何であったのかというと、一番大きかったのは、金融緩和を行っていたインド中央銀行が引き締めに転換したことです。2013年の秋に、もともとIMF(国際通貨基金)でチーフエコノミストをしていたラグラム・ラジャン氏がインド中央銀行の総裁に就任しました。ラジャン総裁は、IMFのチーフエコノミストを2003年から2006年にかけて務めています。この新しく中央銀行総裁に就任したラジャン氏の下で、インド中央銀行は金融引き締めに転じました。そして、7.25パーセントまで引き下げられていた政策金利を、8パーセントまで引き上げる政策を行いました。これが、インドルピーが底入れすることができた一つ目の理由です。


●底入れの三つの理由(2)金の輸入制限


 二つ目の理由は、インド政府が中央銀行に協力して、通貨防衛策を明確に打ち出していたことです。その中でも、最も端的な政策だったのが、金の輸入制限です。インドの貿易構造を見ると、輸入品目の上位に、原油、石油関連製品が入っていますが、それに次ぐものとして、金が多量に輸入されています。

 インドは、特に農村部の風習として、例えば農家の娘さんが結婚するときに、金を持って嫁入りするようなことがあったりして、さまざまな社会的なイベントに金が使われる傾向にあります。インドは金の産出国ではありませんので、当然この金がどうしても輸入として非常に大きくなってしまい、これ自体がインドの貿易赤字を膨らませる一因にもなっていたのですが、この金の輸入に対して、関税など非常に厳しい制限をかけました。これによってインドの金輸入が激減し、これに伴ってインド全体の輸入も減って、貿...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。