10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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トランジション・マネジメントのために「知の見える化」を

持続可能で明るい低炭素社会(4)知の構造化と見える化

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長
情報・テキスト
産業革命以降、急速に拡大した工業化は世界の9割に浸透し、人工物飽和の時代がやってくる。しかし、「人工物の飽和は、希望」だというのが、株式会社三菱総合研究所理事長で科学技術振興機構低炭素社会戦略センター長・小宮山宏氏の見解だ。なぜ希望なのか。「問題」を「可能性」に変える「知の構造化」とは。(2015年6月23日開催 一般社団法人地球温暖化防止全国ネット設立5周年記念式典基調講演「持続可能で明るい低炭素社会 ビジョン2050の実現は視野に入った!」より、全4話中第4話目)。
時間:08:09
収録日:2015/06/23
追加日:2015/07/30
産業革命以降、急速に拡大した工業化は世界の9割に浸透し、人工物飽和の時代がやってくる。しかし、「人工物の飽和は、希望」だというのが、株式会社三菱総合研究所理事長で科学技術振興機構低炭素社会戦略センター長・小宮山宏氏の見解だ。なぜ希望なのか。「問題」を「可能性」に変える「知の構造化」とは。(2015年6月23日開催 一般社団法人地球温暖化防止全国ネット設立5周年記念式典基調講演「持続可能で明るい低炭素社会 ビジョン2050の実現は視野に入った!」より、全4話中第4話目)。
時間:08:09
収録日:2015/06/23
追加日:2015/07/30
≪全文≫

●都市鉱山の時代は、省エネの時代


 もう一つは、金属資源をどう考えていくかです。これからは都市鉱山の時代に入ります。なぜなら、人工物が飽和するからです。飽和するということは、500万台の自動車を廃車にして、500万台の自動車をつくればいいわけです。これはつまり、都市鉱山がたっぷりあるということです。日本はもうそうなっているではありませんか。われわれの青春の思い出がある赤坂プリンスホテルも壊して建て替えているでしょう。しかも、壊した材料を全部集めています。だるま落としのように一階ずつ壊していきました。あれは、ガラスも鉄もアルミも全部使うからです。

 ですから、人工物の飽和とは希望なのです。どういうことかというと、この曲線(Limits to Growth)が鉄鉱石からつくる鉄のことです。これはどんどん減っていきます。これ(Recycle)が出てくるスクラップの量のことで、人工物がたまってくると、スクラップが40年ほど遅れてどんどん出てきます(自動車なら12年ですが)。これがもう現実に起こっているのです。


●鉄源はスクラップに変わりつつある


 このグラフは鉄の生産量の推移を表します。鉄の場合、一つはもちろん高炉で造っています。高炉で鉄鉱石から酸素を取り除いて造ります。鉄鉱石は酸化鉄で、空気中にあるため、さびています。ですから酸素を取り除く必要があるのです。もう一つは、スクラップを電炉で溶かして造ります。皆さん、電炉というと、電気を大量に使うものでエネルギー多消費だと思っているでしょう。ところが、実は高炉の方がはるかに多くのエネルギーを使っているのです。なぜかというと、理論的に、酸化鉄から酸素を取り除くエネルギーは、鉄を溶かすエネルギーの27倍だからです。現実に、高炉で使うコークスの4割を発電用に使ってスクラップを溶かすことが、今もうすでに可能なのです。つまり、6割の省エネになるわけです。ですから、スクラップに変わるということは、省エネになるということです。

 現在、世界の鉄の半分は中国が造っていますが、中国は工業化が始まって間もないため、まだスクラップがほとんど出ていません。これは中国を除いたデータですが、いま世界で約8億トンの鉄が造られているうちの半分はすでにスクラップ、つまり電炉です。残りの半分が高炉です。しかも、高炉の生産量は減ってきています。

 私の言っている通りではありませんか。今がまさにここ(転換期)なのです。この後は、ますます高炉が減って、電炉が増えてきます。逆に、そのようにすれば、持続可能な社会なのです。人間は、永々と鉄鉱石を地下から掘り出して、酸素を取り除いてきました。スクラップは、ビルや自動車という形でたまっていて、それが有限の地球で飽和しますから、それを回していく時代に入り始めているのです。これが本格的に回り出すのは、2050年ぐらいだろうと思っています。中国以外の世界は、すでにそれがちょうど半分ぐらいまで来ているということです。


●日本はもはや「資源のない国」ではない


 ですから、私たちはこの日本で資源自給国家を目指しましょう。これは、発想の転換です。私の小学校の頃から、日本は資源のない国で、資源を輸入して、加工した製品を輸出して金を稼ぐのだといわれてきました。ですが、そんなものはもう成り立つはずがありません。

 なぜそういうモデルがうまくいったのか。最初のグラフを思い出してください。20世紀は、世界の全人口のわずか10パーセントの先進...
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