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朝日新聞の誤報がもたらしたその後の影響は計り知れない

第二章 軍縮ブームとエネルギー革命の時代「明治の精神」の死(5)些細なことが大きな出来事に

渡部昇一
上智大学名誉教授
情報・テキスト
女子挺身隊
wikimedia Commons
歴史とは些細なことが積み重なり、大きな出来事に発展していくものだ。歴史教科書問題や従軍慰安婦問題など、朝日新聞の事例もそうである。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第二章・第5話。
時間:03:18
収録日:2014/12/15
追加日:2015/08/17
≪全文≫
 近代史を見ていくと、第一次世界大戦(大正3年〈1914〉7月28日~7年〈1918〉11月11日)のあとに、日本がその後にたどる運命と直結している条約がいくつも結ばれている。

 専門家にいわせると、第一次大戦は理由がよくわからない状況で始まっている。当時の独英、独仏、独露関係は、いずれも戦争が始まるような状況ではなかった。ところが当時オーストリア領であったボスニアのサラエボで、セルビアの一青年がオーストリアの皇太子夫妻を銃撃したという一事件が火種となり、そこから「燎原(りょうげん)の火」が激しく燃え広がるように、ヨーロッパ全土を惨禍に巻き込む大戦争へと発展してしまったのだ。

 こうした推移を見ると、つくづく歴史とは些細なことが積み重なり、大きな出来事に発展していくものだと痛感させられる。

 「些細なことが大問題に」というのは、現代の問題とも非常に関係がある。話題から少々外れるが、朝日新聞の例を挙げたい。私が朝日新聞を許せないのは、批判を受けるといつも大筋論で逃げるからである。

 たとえば朝日新聞は昭和57年(1982)に、高校歴史教科書の検定で華北への「侵略」が「進出」に書き換えられたと報じた。これを機にシナ政府が正式に抗議を行ない、韓国・台湾で反対運動が起き、日本国内でも大騒ぎになった。それが誤報であったことをわれわれが指摘し、テレビなどのメディアを通じて朝日新聞の責任を追及したのである。

 ところが朝日新聞は「謝罪した」とはいうものの、終始曖昧な態度を取り続け、最終的に、「日本政府の検定の方向が戦前を美化するほうに向いていたのが悪いのであって、『侵略』を『進出』に書き換えた教科書があったということ自体は問題ではない」と逃げている。それまで中国でも韓国でも、日本の教育が戦前を美化する方向に進んでいるとは誰もいっていなかった。つまり朝日新聞の誤報という小さな出来事が、大きな国際問題に発展したのである。

 いわゆる従軍慰安婦問題もそうである。従軍慰安婦の強制連行など旧日本軍に存在しなかったことは、もう何十年も前からわかっていた。朝日新聞は「私は韓国・済州島で女性を奴隷狩りのように強制連行した」と語る吉田清治の証言を使って、日本を貶(おとし)める報道を繰り返していたが、その証言が虚偽だったことがわかり、いよいよ言い逃れができなくなると、朝日新聞はまず「従軍」という言葉を外し、強制連行を「広義の強制性」の問題だとすり替えた。そしていつの間にか、「慰安婦は人道に反する」と言い始めたのだ。

 現在の道徳に照らし合わせてどう判断するかは別として、およそ世界中で軍隊のいるところならば、ほぼどこにでも売春婦はいた。「戦場に売春婦がいた」というだけなら、大きくなりようもない話だった。それを、「日本軍は従軍慰安婦を残虐に強制連行した」などとありもしないことを煽り立てたから、ここまで騒ぎが大きくなったのである。
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