●「レアメタル」と言われて思い浮かぶのは?
岡部 では、これから1時間程度、準備したスライドをパラパラと見ながら進めたいと思います。まずは、皆様の意識調査をしたいと思いますが、例えば、レアメタルとは何でしょう。そう聞かれて、ぱっと思い浮かぶものは何ですか。
参加者 具体的な名前ですか。
岡部 はい。例えば、何ですか。
参加者 チタン。
岡部 やはりチタンですか。
参加者 パラジウム。
岡部 パラジウムですか。では、どのレアメタルが枯渇しそうですか? と聞かれたら、何だと思いますか。枯渇しそうなレアメタルの鉱種はあまり思い浮かばないですかね。
それから、海底のレアアースについて、話題になったりしますか。あるいは、ウユニ塩湖のリチウムについては、聞いたことはありますか。あまりない? そうですか。
体に良いレアメタルというのは聞いたことがありますか。あまりないですかね。
私には、皆様の興味の対象がよく分かりませんが、今日は、一般の人が興味を持ちそうなレアメタルの話題について少し話そうと思っています。
●チタンのスプーンが今、すごい人気に
岡部 まず自己紹介をしますと、私の本業はサステイナブル材料国際研究センターのセンター長で、(管理職でもありますが、)研究職です。そしてもう一つ、企業から寄付を頂いて、非鉄金属資源(主に銅、鉛、亜鉛)のリサイクル・製錬をする寄付研究部門の運営もさせていただいています。この分野は、昔の言葉で言うと「冶金(非鉄冶金)」です。非鉄金属を中心とする冶金学の分野の“特殊金属製錬”が私の専門です。この学問分野でチタンの製錬を行っています。
ここでチタン製錬の技術的な話をしても皆様は寝てしまうだけですので、今日はチタンのスプーンを持ってきました。小さいスプーンセットは、ひとつが純チタンで、もう一つはステンレス鋼でできています。ステンレス鋼製のスプーンは100円ショップでも買えますが、チタンの方は高価で10倍ぐらいの値段がします。
ちなみに、チタンのスプーンを初めて見たという方はどのぐらいいますか。皆様、初めてですか。うれしいですね。それは良かったです。私は料理をしないのでよく分からないのですが、この大きなチタンのスプーンは、今、奥さま方の間ですごい人気の商品になっているそうです。こんなに大きくて何に使うのかと思いますが、視力検査もできそうです。ともあれ、とても使い勝手がいい高級スプーンであると聞き及んでいます。
今日は、このチタンの話はあまりしませんので、ご興味のある方は日本チタン協会が発行しているチタンのパンフレットをご覧いただくと良いかと思います。
●日本でレアアースの抽出装置は見かけない
岡部 では、一般論としてですが、この映像にあるような場面を皆様は見たことがありますか。非常に高温の液体の中に棒状の電極が刺さっています。この液体の温度はおおよそ1000度ぐらいですね。見たことのある人はいますか。どこで見ましたか。
参加者 電炉メーカーです。
岡部 電炉の電極ですか。まさにそれに近いモノの写真です。鉄鋼用の電炉でしたら実物は巨大な(鉄鋼を溶解する)溶融炉ですね。この写真は、(鉄鋼用に比べると遥かに小さな炉でして)レアアースの金属や合金を溶融塩電解法で製造しているところです。高温でフッ化物の溶融塩を使うために(大気中の水蒸気と反応して)HF(フッ化水素)のガスが出ます。(環境規制が厳しい)日本では、この手法は、環境コストがかかり、なかなかやりにくいのです。
では、次の映像のようなものを見られたことはありますか。これは溶媒抽出という工程で、水と油を用いてレアアースからいろいろな元素を分離しているところです。この工程がなければ、レアアースを分離・精製して高純度化することはできません。
私の専門はこの関係の技術分野で、世界中のプラントを渡り歩いています。このようなプラントに行かれたことのある方はいますか。どちらへ行かれましたか。
参加者 自分の会社にミキサー・セトラー(液液抽出装置)があります。
岡部 どのような会社なのでしょう。
参加者 溶剤のリサイクルを行っています。
岡部 まさに、溶媒抽出の技術はつかいますね。溶媒を利用して高純度化するプラントですね。
参加者 酸などを使って、溶剤のリサイクルをしています・・・。
岡部 皆様、(これらの化学的な手法を用いるプラントでは)やはり廃液の処理などでお悩みなわけですよね。日本では、現在は、このようなミキサー・セトラーなどの装置は、あまりみられなくなりました。レアアースは、この工程がなければつくれませんし、技術的には日本のレベルは非常に高かったのですが、今の日本でこのような装置を用いてレアアー...