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レアメタルの一番の問題は資源供給ではなくゴミの問題

レアメタルの光と影(6)技術制約と環境制約

岡部徹
東京大学生産技術研究所 副所長 教授
情報・テキスト
レアアースについてボトルネックになっているのは、資源供給よりも技術制約あるいは環境制約である場合が多いと東京大学 生産技術研究所 副所長・教授の 岡部 徹 氏は言う。そこで理解しておきたいのはゴミ(廃棄物の処理)問題である。工業製品に必要なレアメタルを製造する裏では大量のゴミが出て害悪がまき散らされているという現実がある。では具体的にどのような問題が生じているのか。岡部氏がその詳細を語る。(2015年4月20日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「レアアースをはじめとするレアメタルの光と影」より、全7話中第6話目)
時間:06:28
収録日:2015/04/20
追加日:2015/08/27
≪全文≫

●レアアースは環境の問題という認識が必要


岡部 一番問題なのは、皆さんがレアアースの問題は資源供給の問題だと思っていることです。実際は、資源の問題などほとんど問題ではなく、尖閣諸島問題から外交問題、政治問題と発展して、中国からレアアースが突然、禁輸となり、日本の産業が慌てふためきました。禁輸になった理由は、別に資源が無くなったわけでも何でもなく、中国から見たら環境の問題が名目上の理由なのです。日本は特許を全て押さえており、ロンダリングしてきれいになったものだけ日本に輸入してきて、もうけまくっているからこんなことになるのです。そういう認識をしっかりと持っていただいたらと思います。

 あともう一つ、皆さんに理解していただきたいことがあります。例えば、プリウスなどハイブリッド車をつくるには、ジスプロシウムという特殊なレアアースが必要です。いま使っている鉱体(イオン吸着鉱)の中の品位(濃度)は、ppmでいえば大体100ppmです。(イオン吸着鉱中のジスプロシウムの鉱石中の濃度は、)、パーセントオーダーでは1パーセントのさらに100分の1です。したがって、このジスプロシウムをプリウスに使うと、どこかでその1万倍以上のゴミが(鉱石の採掘や製錬に伴って)出ているのです。この点を認識してください。

 例えば、ハイブリッド車には、たった1.3キログラムのレアアースしか要りません。その中で、ジスプロシウムは、さらに100グラムぐらいしか要らないのです。ただ、その裏では、4トンほどの鉱石が処理され、(重金属を含む)酸が出て、害悪がまき散らされています。ですから、(鉱石の採掘や製錬に伴って発生する)環境破壊が問題なのです。これは、日本ではなく、どこかの国で行われているのです。そういった意味では、ハイブリッド車やケータイなどを1個つくるのに、私たちの知らないところでは、とんでもない害悪が生まれている可能性があるということを認識してください。


●コスト問題から起こるロンダリングの議論


岡部 どうしてこんなことが起こっているかといえば、中国は原料コストが安く、環境コストが極めて低いからです。日本の場合は、原料コストが高い、エネルギーコストが高い、環境コストが高い、人件費が高いなど、四重苦、五重苦の状況です。それなのに、(鉱石から金属の)チタンをつくり続けている日本の企業は、すごい技術力です。そういった意味では、私はそのことを誇りに思っています。

 ただ、いろいろな考え方があります。例えば、オーストラリアですが、皆さんご存知のように、この国は資源がとても豊富です。レアアースの鉱石もたくさんあります。エネルギーコストも、石炭があるのでそれなりに安いです。問題は環境コストです。オーストラリアは、ご存知のように資源立国であるとともに(先進国並みの)環境立国でもあるので、資源を掘るのはいいけれど、製錬して害悪を出したら、(先進国と同等の)ペナルティーを払い、ちゃんときれいにしなければいけません。よって、環境コストは高く、人件費も高いのです。皆様もすぐに理解できると思いますが、国や地域によって、環境規制やそれを遵守するためのコストには大きな差があるということです。

 そこで、賢いビジネスマンは何を考えるかといえば、問題となっているのは“環境コストだけ”なので、オーストラリアで鉱石を掘ったら、それを東南アジアに持っていき、そこで製錬してゴミ落としをして、(有害物を含まない化合物を)日本に持ち込もうという、いわゆるロンダリングが行われます。中国から輸入するレアアースは、国内で掘って(国内で製錬して)ロンダリングして持ち込んでいるので、一番手っ取り早いのですが、尖閣諸島の問題などが少し起こるだけでいきなり日本への輸出を止めてしまうため、リスクがあるのです。この問題をセキュア(保障)するためには、どこか別の国にロンダリングサイトを差し挟めばいいではないかという議論が出てきます。


●問題は資源供給より技術制約と環境制約


岡部 ここで、皆さんに質問があります。別の国で製錬してきれいな(有害物を含まない)ものを日本に持ってくることの是非について東大の大学院の講義で話しますと、大学院生はピュアな人たちが多いので、「それは許せない」と言うのです。しかし、(今回、紹介したロンダリングは)全て合法です。要は、環境規制の地域格差をうまく利用した見事なビジネスモデルなのです。レアアースだけ取ってみると、単純にゴミが(東南アジアなどの)特定の地域に落ちるから、許せないという人も居るけれど、私から見たら、もともとなかった技術がその地域に導入されますし、お金も落ちるし、雇用も発生します。では、ビジネスマンの皆さんは、こういったロンダリングルートの存在は、許せますか、許せま...
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