10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン
このエントリーをはてなブックマークに追加

ノーベル賞をたくさん取りたければ評価システムの確立を

身近なノーベル賞

曽根泰教
慶應義塾大学大学院教授(政策・メディア研究科)
情報・テキスト
日本では大変権威があるノーベル賞だが、海外では非常に身近な存在である。受賞者の傾向や評価システムを紹介しながら、日本がノーベル賞受賞者数を増やすためには何が必要か、そのヒントやその方策について迫る。
時間:10:45
収録日:2013/10/30
追加日:2014/03/20
日本では大変権威があるノーベル賞だが、海外では非常に身近な存在である。受賞者の傾向や評価システムを紹介しながら、日本がノーベル賞受賞者数を増やすためには何が必要か、そのヒントやその方策について迫る。
時間:10:45
収録日:2013/10/30
追加日:2014/03/20
≪全文≫

●海外では非常に身近な存在であるノーベル賞


今日はノーベル賞のお話をしたいと思います。
日本では、ノーベル賞は大変権威があって、ノーベル賞を受賞した人が神様のように扱われますが、そんなノーベル賞が身近にあったという話から進めます。
今から10年くらい前のことです。島津製作所の田中耕一さんがノーベル賞を受賞した日に、ちょうどスウェーデン大使にお会いする約束がありました。
大使は、以前からの私の親しい友人で、本国に帰るということで挨拶に行ったところ、「今日は朝から報道陣が来て、大変だったんですよ」と言われたのです。どういうことかというと、「日本では、ノーベル賞を取ったと言うと、報道陣がたくさん来て新聞の一面に出る。こういうありがたい国で大使をすることができて大変助かる」というような話でした。
そうなると、日本のようにノーベル賞を報道する頻度が多い国が普通なのか、それともさらっと報道している国が多いのか、そういった疑問が出てくるわけです。
そこで、昔の話になりますが、1975年、私がアメリカのイェール大学にいたときのことです。ある日、友だちのオランダ人学生にばったり会って、「これからどこに行くんだ?」と聞いたら、「うちの先生のパーティーに行く」と言うのです。「パーティーとは?」と聞くと、「先生がノーベル賞を取ったから、そのパーティーです」と言うわけです。
それは、(チャリング・)クープマンスというオランダ系の学者のノーベル賞受賞パーティーでしたが、彼は、われわれが言うコンパに行くような様子でした。つまり、そこへ行くのは当たり前だという感じだったのです。私はそのパーティーへ行ったわけではないのでよく分かりませんが、ノーベル賞受賞記念パーティーとなると日本では大変なことですが、そのときは学生相手の簡単なパーティーという感じでした。
もう一つ、エピソードを紹介します。今から10数年前、1999年だったと思いますが、私がハーバード大学にいたとき、一戸建ての3階の屋根裏部屋を下宿のような形で借りて住んでいたのですが、たしか大家さんのおばあさんの80歳の誕生日のときでした。その大家さんのおばあさんの旦那さんがMITの元教授だったものですから、ハーバードに近い大家さんの家にいろいろな知り合いが来るのですが、ある人が「今日、ソール・ベローが来ている」と言ったのです。ソール・ベローはノーベル文学賞を受賞した人です。おばあさんに「今日、ソール・ベローが来ているのですか?」と聞きましたら、「いや、ソール・ベローは来ていないけれど、(ロバート・)ソローは来ていますよ」とおっしゃった。ノーベル経済学賞を受賞したソローが来ていたのです。それは、かなり大きな誕生パーティーだったのですが、普通の家庭で行うパーティーでした。そこにノーベル賞を取っている人が3人も来ていたのです。そういう意味では、「身近なノーベル賞」という本日の話になるわけです。
私は政治学を専門にしていますから、幸いにしてノーベル賞とは関係がありません。ただ、分野が非常に近いところでは、経済学の人は、今までに話を聞いたり、シンポジウムで質問したり、意見をぶつけたりした人が何人かいました。例えば、(ジェームズ・M・)ブキャナンや、(ジョセフ・E・)スティグリッツ。また、行動経済学で有名になった心理学者の(ダニエル・)カーネマン、あるいは(エイモス・)トベルスキーは、学生時代にどちらかのセミナーを聞いた覚えがあります。
ですから、ノーベル賞を受賞した人、あるいはそういった学者...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。