「人生100年時代」に
「大人の学び」が注目される理由とは?

「人生80年時代」から「人生100年時代」へ

現在、日本人の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳ですが、医療技術の進歩や医療制度の充実などにより、2050年には女性の平均寿命は90歳を超えるといわれています。また、現在35歳の人は、50%の確率で99歳まで生きるようになるとまでいわれています。
(出典:LIFE SHIFT―100年時代の人生戦略 リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット 著)
平均寿命の推移と将来推計

「定年制」はなくなり「生涯現役」が当たり前に

これまでは、 20歳前後から会社で働き始め、60~65歳で定年退職、その後は引退して老後の生活を送る、というのが典型的な人生の形でした。

しかし、これからは100歳まで生きることが普通になっていきます。そうなると、60~65歳で定年を迎えて引退しても、残りの40年間を年金と貯蓄だけで生きていくのは、多くの人にとっては困難になります。

頼りの年金についても、年金は労働者が納めた保険料がそのまま年金受給者に支払われますから、少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少して受給者が増加すれば、納税者と受給者のバランスが崩れて、年金制度自体を維持できなくなる可能性があります。

年金制度を破綻させないために、将来、支給額の減額や給付年齢の引き上げは、ほぼ確実に行われるでしょう。(実際に主要先進国では67~68歳に引き上げられています。)

このように、年金制度も頼りにはできないため、健康であれば70代や80代になっても働く、いわゆる「生涯現役」が当たり前になっていくのです。

政府は、少子高齢化に伴う労働生産人口の減少による巨額の税収減を補填するためにも、高齢者の雇用をすでに推進しています。高齢者であっても、働けば納税することになりますから、「生涯現役」を推奨するわけです。

これまで身に付けたスキルは陳腐化していく

それでは、私たちが働く現場を見てみましょう。これまでは、20歳で就職してから60歳で引退するまで約40年でしたが、人生100年時代に突入することで、80歳まで働くとなると、約60年にもわたって働くことになるのです。

変化の激しい現代では、60年以上も陳腐化しないスキルはほとんど存在しません。いま自分が身につけているスキルも陳腐化してしまうのです。実際に、この数十年で消えてしまった仕事と今後消えると言われている仕事を見てみましょう。


オックスフォード大学の論文によると、今後10~20年の間に、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高いという結論いたっています。

このように、これまで存在した「職業」そのものが消滅するため、労働者は時代に適応した新しいスキルや知識を身につけて、全く違う職業に従事するケースが普通になっていきます。

これまでの「学ぶ→働く→引退」というライフスタイルから、「学ぶ→働く・学ぶを繰り返す→引退」というライフスタイルに大きく変わっていくのです。



わかりやすく言えば、ひとつの専門的なスキルや知識で一生食えない時代になるということです。

この考え方は、東京大学経済学部教授・柳川範之氏も「人生三毛作」という言葉で、20年ごとに人生で2~3回、職業を変えるような生き方を提唱しています。

労働者は時代のニーズに合わせたスキルや知識を身につけて、自分自身の市場価値を保つ努力が必要になります。

この動きを後押しするように、政府も「人生100年時代構想会」の中で、社会人が学びなおす「リカレント教育」に5,000億円の予算をつけて推進しようとしています。

今の時代に必要なのは普遍的な「教養」

では、どうすれば良いのでしょうか?

今上天皇の教育責任者を務めた慶應義塾大学元塾長の小泉信三氏はこんな言葉を残しています。

すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる


陳腐化しないものとはなんでしょうか?
それは「普遍的な教養」です。

教養というのは、何らかの事象に対して具体的な答えを与えてくれるものではありません。そのため、教養を身に付けたからといって、すぐに仕事の役に立ったりはしません。

ですが、抽象的だからこそ包括的で汎用性が高く、教養を身に付けることで、あらゆる物事の本質が何であるかを見抜くことができるようになるのです。

激動の時代といっても、ビジネスの世界で変わりゆくのは、氷山の一角で、その根底にある目に見えない部分は、実は普遍的なものなのです。

松下電器の創業者・松下幸之助や、HONDAの創業者・本田宗一郎の教えが今でも語り継がれているのは、ビジネスの根底にある部分は普遍的なものであることを裏付けています。

一流の経営者にみる「教養」

「教養の普遍性」と、 その「物事の本質を見抜く力」を示す事例として、ユニクロのファーストリテイリング会長・柳井正氏を経営戦略アドバイザーとして間近で支えてきた一橋大学大学院 国際企業戦略研究科教授・楠木建氏の話をご紹介します。

商売というものは、ありとあらゆることが具体的です。成果は具体的にしか意味を持ちませんし、指示は具体的でなければ出せません。
(中略)
例えば問題が発生しました。問題は非常に具体的です。ユニクロでいえば、ある時期、思ったほど男性の長袖白シャツのボタンダウン襟の商品が売れませんでした。これは具体的な問題です。ここでセンスがない人はすぐに横の具体に行ってしまいます。他の色はどうか。襟がボタンダウンではないシャツはどうか。女性はどうか。天気の問題かもしれない。顧客のPOSデータを見てみよう。競争相手はどうなっているのか。こうしたことを調べる人は、センスがないわけです。

柳井氏は絶対にそういうことをしない人だと、私はつくづく思います。あらゆる具体的な問題を見て、無意識のうちかもしれませんが、すぐに「どうもこういうことなんじゃないか」と引き出しから論理を取り出してくるのです。今まで自分が蓄積してきた論理です。そこから問題の本質を見抜き、こうすれば解決するだろうと言って、具体的な指示が出てきます。


柳井氏はWEBメディアの取材で「幕末の思想化・吉田松陰の教えに学んでいる」と語っています。

このように、ビジネススキルと直接関係がないと思われた「教養」が「物事を抽象化して、問題の本質を見抜き、対策を考える」という問題解決力につながっているのです。

「教養」を身に付けるにはどうすればよい?

「教養」を身に付ける一番オーソドックスな方法は、先人の知識が詰まった古典をたくさん読むことだといわれますが、そうは言っても、何から読んでいいかわからない、そんな時間はない・・・という方も多いかもしれません。

手軽に教養を身につける方法として「教養動画メディア テンミニッツTV」をご紹介します。

「テンミニッツTV」は、東京大学28代総長 小宮山宏氏が発起人としてスタートした、教養を身に付けるためのインターネット動画配信サービスです。東京大学をはじめとする有名大学の教授や経営者らの講義2,000本以上を配信しています。

配信している講義の内容も、政治・経済・金融・経営・歴史・哲学・文化など多岐にわたっており、幅広い教養を身につけるのに最適で、既に2万人以上の方が学んでいます。

1カ月間無料で試すことができますので、チェックしてみてはいかがでしょうか。

テンミニッツテレビオピニオン - 1話10分で学ぶ教養動画メディア
詳しく見てみる