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DATE/ 2017.06.16

プロサッカー選手の年俸査定の方法って?

シーズン終盤に行われる査定会議

 日本ではここ近年、各競技がプロスポーツ化に向けての動きを強めています。その中でもメディアで報じられる機会の多い競技の一つはサッカーのJリーグです。選手によっては年俸1億円を超えるとも言われる競技ですが、選手の年俸を決めるうえで必須になるのが一般的な社会人と同じ「査定」になります。

 サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」が発行している「Jリーグ選手名鑑2017」によると、最も高い年俸を得ているのは、日本代表で史上最多の出場試合数を誇るガンバ大阪のMF遠藤保仁選手の1億5000万円と推定されています。また昨年度のJリーグMVPに輝いた川崎フロンターレのMF中村憲剛選手、横浜F・マリノスのDF中澤佑二選手らも推定年俸1億円を超えています。

 さて、この年俸、クラブ側はどのように査定しているでしょうか。同雑誌ではかつてJリーグの強化スタッフを経験した小見幸隆氏が査定方法の一例を明かしています。

 インタビューによると年俸の査定会議は、クラブの強化部長やゼネラルマネジャー(GM)といったフロント陣で行われ、現場を統括する監督が同席するケースはないそうです。会議が開かれるタイミングは、シーズン最終戦前の2週間ほど前から、予算に応じて各選手への年俸の割り振りを決めていく仕組みとなっています。

 その年俸の割り振りの決め手となるのが、査定となります。ではその査定とは、どのように行われているのでしょうか。

ポジションによって評価基準が違う

 サッカーはプロ野球と比べると、結果に残る数字が「出場試合・時間数」「ゴール数」「アシスト数」と数少ないです。ただクラブ側も各種データを仕入れることで、選手一人ひとりの評価を詳細に行っているそうです。あるクラブは独自の評価表を用意しており「ABCDE」の5段階ないし「ABCDEF」の6段階をもって評価します。

 ただサッカーにはゴールキーパー(GK)、ディフェンダー(DF)、ミッドフィールダー(MF)、フォワード(FW)と大まかに4つのポジションがあります。そのため選手のプレーするポジションによって査定内容を変える必要があります。

 例えばFWやMFといった攻撃的なポジションの場合、重要視されるのはチームを勝利に導くゴール数、もしくはゴールをアシストした回数などになります。その一方で守備面も評価の要素となりますが、攻撃面に比べると査定の優先度として低くなる傾向になります。逆にGKとDFはタックルや失点数など、守備面への貢献度に比重がかかります。

 また査定には知名度も考慮されます。最も分かりやすいのは日本代表への選出でしょう。W杯予選など全国的に注目度の高い試合に出ることはクラブにとっても有意義なことで、もちろん代表選出にはクラブでの活躍ぶりが土台となっています。そのため日本代表クラスになれば3000~5000万円くらいの年俸が“相場”となってくるそうです。

若手はツラい!?代表で大活躍したあの選手の意外な年棒

 その一方で若手選手はどうなのでしょうか。Jリーグの規約上、新卒入団時には「C契約」、「B契約」と年俸上限が480万円に決まっている契約方法からスタートし、出場時間数を伸ばすことで年俸上限のない「A契約」を勝ち取るプロセスを踏みます。ただA契約となってもまだ実績で評価できる材料が少ないので、比較的安価な年俸の選手が多いです。

その代表的な例は、今年5月から6月に行われたU-20ワールドカップに出場した堂安律選手(G大阪)です。堂安選手は同大会で4人抜きのスーパーゴールを決めるなど4試合で3得点の大活躍を見せました。ただ昨季、J1リーグ戦ではわずか3試合出場だったこともあり、今季の推定年俸は480万円となっています。しかし今季はG大阪でも活躍を見せているため、来季以降、年俸の大幅アップも可能性があると思われます。

 前述した遠藤選手、中村選手、中澤選手は長年にわたって所属クラブ、日本代表でも安定したプレーで勝利に貢献してきました。安定したプレーを見せ続ける選手はクラブ側にとって“計算できる選手”で、年俸は自ずと上がっていくことになります。

<参考文献>
『エル・ゴラッソ Jリーグ選手名鑑2017』(株式会社エス・アイ・ジェイ)

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