テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.11.20

雑談力を鍛えるには、まず〇〇を学べ!

 近年、「雑談力」に対する関心が高まっています。その証拠に、「雑談力」とタイトリングされた書籍、雑誌やネットの記事が驚くほどに量産されています。

 一方で、「雑談力」に対する懐疑の声も上がっています。たとえば、「マツコ&有吉 かりそめ天国」(テレビ朝日系)で、有吉弘行とマツコ・デラックスが、「雑談力」をもてはやす風潮に異論を唱えた」とlivedoor NEWSが伝えています。

 実際のところ、「雑談力」を上げることはできるのか、いくつかの見解を参照しながら、検証していきたいと思います。

「雑談力」より「脳のメカニズム」を学べ

 『なぜ僕は、4人以上の場になると途端に会話が苦手になるのか』では、4人以上の複数コミュニケーションにおける話になりますが、いわゆる「「雑談力」を上げても雑談できない」と論じています。

 本書についてざっくり説明すると、筆者は「雑談力」よりまず「脳のメカニズム」を活用する方法を学んだ方がいいと助言しています。

 「脳のメカニズム」を活用する方法のポイントは大きく2つあって、1つは自分の脳を「話せるモード」に活性化してこと、もう1つは脳のしくみを応用して話し相手に「話を振ってもらえる」シチュエーションをつくることです。

 後者に関しては、たとえば人は誰でも視線を左から右に動かす癖があります。この脳のメカニズムを利用して、よく話す人の左前に座るようにすると「話を振ってもらえる」可能性が高まるということです。

 このような脳のメカニズムを押さえた上で、初めて雑談の知識は活きてくるのです。逆に考えると、こうしたメカニズムに沿っていないとなかなか雑談できるようにはならないのかもしれません。

雑談力とは「連想力」である

 脳科学者の茂木健一郎さんは「プレジデントオンライン」で雑談について次のように語っています。

 「こんな話題をと時事ネタを準備していくことはできる。しかし、相手の話の内容によっては、どんな方向に発展していくかわからない。予想外の方向に話が流れていっても、臨機応変、柔軟に対応できなければ、雑談力の高い人にはなれない」

 「雑談力を支えるのは、側頭連合野に蓄積されたさまざまな知識や経験。1つの話題から、どれだけ多くの関連した話題を連想することができるか。その点にこそ、雑談力が表れる」
 
 つまり、どれだけ雑学のネタを頭に溜め込んでも雑談力はいっこうに身につかないということです。興味深いのは雑談力とはすなわち「連想力」だと指摘している点です。

連想力を鍛える「コップ」

 『脳と日本人』で茂木さんと対談した編集工学研究所所長でありイシス編集学校校長の松岡正剛氏は、連想力は稽古を重ねるによって鍛えることができると述べています。

 鍛錬する方法として、たとえば、コップの言い換えを例に挙げています。連想ゲームのようなもので、「容れ物」「グラス」「うつわ」などのように、コップのイメージから離れないようにどんどん言い換えていきます。こうした連想ゲームが連想力アップにつながるというわけです。これが意外と難しく、20~30個言えれば、悪くない成績とのことです。

 以上の話をまとめると、「雑談力」アップは、やはりなかなか一筋縄にはいきません。まずは脳のメカニズムを知ること、そのうえで雑学をインプットし、 それを柔軟にアウトプットできるように、同時に連想力も鍛える必要があるというわけです。

 例に挙げたコップの言い換えならいつでも誰でも簡単に試すことができます。手始めに、ぜひ挑戦してみてください。

<参考サイト>
・『なぜ僕は、4人以上の場になると途端に会話が苦手になるのか』(岩本武範著、サンマーク出版)
・『知の編集術』(松岡正剛著、講談社)
・livedoor NEWS:マツコ・デラックスと有吉弘行が雑談力に異論「勉強することじゃない」
http://news.livedoor.com/article/detail/13423725/
・プレジデントオンライン:おしゃべりな人はなぜ運がいいのか
http://president.jp/articles/-/11784
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

民主主義の本質(5)民主主義を守り育てるために

ポピュリズムや権威主義的な国家の脅威が迫る現在の国際社会。それに対抗し、民主主義的な社会を堅持するために、国際社会の中で日本はどのように振る舞うべきか。議論を進める前提として大事なのは「歴史から学ぶ」ことである...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/23
橋爪大三郎
社会学者
2

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か

ルネサンス美術とはいったい何なのか。これを考えるためには、なぜその時代に古代ギリシャ、ローマの文化が復活しなければならなかったのかを考える必要がある。その鍵は、ルネサンス以前のイタリアの分裂した都市国家の状態や...
収録日:2019/09/06
追加日:2019/10/31
池上英洋
東京造形大学教授
3

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(1)ChatGPT生みの親の半生

ChatGPTを生みだしたOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの進化・発展によって急速に変化している世界の情報環境だが、今その中心にいる人物といっていいだろう。今回のシリーズでは、サム・アルトマンの才能や彼をとりまくアメ...
収録日:2024/03/13
追加日:2024/04/19
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
4

新宿の歴史…かつては馬糞臭い宿場町だった「内藤新宿」

新宿の歴史…かつては馬糞臭い宿場町だった「内藤新宿」

『江戸名所図会』で歩く東京~内藤新宿(1)内藤新宿の誕生と役割

江戸時代後期に書かれた地誌『江戸名所図会』(えどめいしょずえ)をひもとくと、江戸時代の街の様子や人々の暮らしぶりが見えてくる。今回は、五街道の宿場町として重要な役割を果たした「内藤新宿」を取り上げ、新宿のかつて...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/04/21
堀口茉純
歴史作家
5

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元

日本語の発音は、漢字到来以来一千年の歴史を通してどう変わってきたのか。また、なぜ日本語は「文明語」として世界に名だたる存在といえるのか。二つの疑問を解き明かす日本語学者として釘貫亨氏をお招きした。1回目は古代日本...
収録日:2023/12/01
追加日:2024/03/08
釘貫亨
名古屋大学名誉教授