テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.01.29

今の若者がモノを買わなくなった理由

 「最近の若者はモノを買わなくなった」という話が言われて久しいです。実際に販売やマーケティングなどの仕事をしている人の中にはこういった実感を持つ方もいるかもしれません。ここでデータをさらいながら検証してみます。

「車離れ」「アルコール離れ」は本当か

 消費者庁が2016年度にまとめたデータ(対象:30歳未満かつ単身世帯)では、2014年の時点で自動車を所有する割合は男性が45.7%、女性が41%です。2004年のデータだと男性61.4%、女性38.4%なので、この間の10年で男性は5.7%減少し、女性は逆に2.7%増加しています。また、「アルコール離れ」に関しては、2014年の時点での1ヶ月あたりの支出額は男性が1,261円、女性が519円、2004年のデータでは男性1,422円、女性1,026円なので、この10年で男性は200円ほど減少し、女性は半減しています。

 「車離れ」に関してはやや男女差はあるものの、全体としてはやはり減少といっていいでしょう。ただ、「アルコール」に関しては、チューハイやカクテル等への支出は増えており、嗜好の変化がうかがえるようです。少し深読みすると、社交的な飲み会よりもよりプライベートな(趣味的な)飲み会が増えているということかもしれません。

個別化するニーズにどう対応するか

 また、車という点でいえば、カーシェアリングの市場が賑わっています。カーシェアリングでは実用性重視のレンタカーとは異なり、スポーツカーや高級セダンなど、さまざまなタイプの車が貸し出されます。いい車で街を走る経験はもはや所有せずとも可能です。

 この事象は「モノ」から「コト」へといわれるニーズの変化とも繋がりますが、現代は単に「コト(体験)」に向かうための情報が豊かというだけではなく、情報だけでかなり多くの体験ができます。だからこそ、需要は個別化します。その人の興味のレベルによってどこまでが求められているのか。若者をマスの視点で見るだけではなく、個別のニーズを掴み、グラデーションのある対応や個別の対応が求められているのかもしれません。

若者の主戦場はSNSにある

 現代的な承認の求め方として、若者の中には積極的に体験をSNSに発信する人も多いといいます。「インスタ映え」という言葉が表すように、一部の若者は「SNS上での自分の価値」に重きを置きます。ここでのSNSは初期のmixiやFacebookから、今ではInstagramといったように、文字から写真へとシフトしています。

 興味深いのは、たとえばヴィレッジヴァンガードというサブカルグッズのショップ。狭い通路脇に並ぶのは思想書やデザイン系の実用書、スターウォーズのフィギュア、一見美味しそうなベーコンレタスバーガー柄のブックカバー(BLT BOOK COVER)など、真面目なものからSNSを賑わすネタグッズまで盛りだくさんです。雑多な商品には店員さんが描いたさまざま楽しい紹介文(POP)がついており、これをSNSでのハッシュタグと同じように考えれば、店内はいわば具現化されたSNS空間ということです。

 今の若者は買う理由さえあれば消費を行うのかもしれません。ただ、彼らの主戦場はもはや現実よりもSNSの中にあるといえるのでは。SNS上では単に王道のかっこいい、かわいい、だけではなく、どこかコミカル、ちょっと変、といったさまざまな価値観が交錯しています。SNSに何をどうアップして、どのような自分を演出するか、ということも若者が消費する際の重要な要素かもしれません。

<参考文献・参考サイト>
・『若者はなぜモノを買わないのか』(堀好伸著、青春出版社)
消費者庁:消費者白書 第1部第3章 【特集】若者の消費
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/pdf/2017_whitepaper_0004.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授