テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.08.31

口臭・体臭・加齢臭…嫌われる臭いの原因と対策

 人は一人では生きられない。文字通り社会的な動物である人間にとって、ますます大きな問題になっているのが「におい」問題です。

 とくに「臭い」の問題は、多様性を極める今日、人間関係において、さらに大きな比重を占めるようになってきました。

 口臭・体臭・加齢臭…嫌われる「臭い」は枚挙にいとまがなく、その対策もそれぞれです。今回は嫌われる臭いの原因と対策を取り上げます。

口臭予防の基本は口中のセルフケア

 まずは誰かと話すときなど、一番気になり指摘しにくい「口臭」を取り上げてみましょう。東京医科歯科大学歯学部附属病院・先端歯科診療センターの和泉雄一氏は、『NHKきょうの健康』において、口臭はセルフケアでかなりの対策ができ、その基本は歯磨きだと指摘します。歯磨きの第一の目的は、口臭の原因にもなる、歯に付着した「プラーク(歯垢)」を取り除くことです。

 和泉氏は正しい歯磨きの方法として、1)「ブラシの毛が密」で「毛の硬さが普通またはやわらかめ」な正しい歯ブラシを選び、2)「スクラッビング法(歯の表面を磨く)」または「バス法(歯茎や歯周ポケットをケアする)」の正しい磨き方で、3)「毎食後」もしくは「起床時や寝る前」に磨くことを提言しています。

 また、舌に付着した汚れである「舌苔(ぜったい)」を取り除くことも口臭予防には効果的といいます。舌苔ケアは1日1回朝の歯磨き後に、市販の舌磨き用の器具を使ってやさしく行ってください。さらには口の中が乾きやすいと口臭が発生しやすくなるため、口が乾燥しやすい人は「3本の指で耳の下を軽くもみほぐして唾液の分泌を促すとよい」と示唆しています。

 なお、内臓の病気等によって体の中からわき起こる口臭もありますが、病気が原因となる口臭に対しては、病院での正しい診断と治療が必要になります。他方、摂取物や生活習慣等による口臭もあります。それらについては、以下の対策も参考にしてください。

体臭は「腸肝循環」改善と「よい汗」で予防

 つぎは誰にでもあり、汗をかく夏場などは特に気になる「体臭」です。ところで、先に「汗をかく夏場」と書きましたが、実は汗や皮脂自体にはにおいはありません。科学雑誌『Newton』の記事では、体臭のもととなるものは皮膚の表面から出てくる「皮膚ガス」と呼ばれる、体内の成分や皮膚表面にある成分のうち揮発性がある成分で、ガスとして体外に出てくることを解説しています。

 皮膚ガスは、汗や皮脂と成分が皮膚表面に生息している常在菌によって分解されたり、空気に触れて酸化されたりすることで発生します。つまり、汗や皮脂自体にはにおいがなく、体臭は、汗や皮脂などが成分変化して皮膚ガスとなり発生するのです。

 体臭・多汗研究所所長・五味クリニック院長の五味常明氏は、著書『気になる口臭・体臭・加齢臭』で、体臭には「におい物質」で分類すると、1)脂質系、2)タンパク質系、3)糖(炭水化物)系の3種類があり、そのうちのタンパク質系の体臭には「腸肝循環」が関係している場合が多いと解説しています。

 腸肝循環とは、腸と肝臓との間で行われているにおい物質などさまざまな物質の循環システムのことで、正常な肝臓はにおい物質を分別して排泄します。しかし肝臓の働きが低下すると分別機能が悪くなり、におい物質を含んだ「臭い血液」が体内をめぐり、体臭を発せさせることになります。他にも腸機能の低下による消化不良等でも、「におい物質」を発生させ、体臭や口臭の原因となります。

 また、「におい物質」は体臭や口臭だけでなく、便の悪臭(腐敗臭)としても表れます。病気以外のこれらの要因には、1)咀嚼不足、2)ストレス、3)腸の汚れが挙げられます。五味氏は、よく噛んで、ストレスをためずに、腸内バランスをよくするビフィズス菌や大豆など善玉菌を増やしつつ悪玉菌を減らす食物繊維を多く取る食事を推奨しつつ、体臭対策にはまず腸肝循環の改善が重要なことを示唆しています。

 そのうえで、汗腺を清潔に保つためにも、運動や入浴・手足浴などで、サラサラした「よい汗」をかくことの積極的な対策の利点も述べています。

加齢臭予防は総力戦で対策!?

 加齢臭の原因物質ノネナールは、資生堂主任研究員の土師信一郎氏らの研究チームによって、日本で発見されました。ノネナールは、青臭くて脂臭くツンとくるにおいです。自然界では野菜にあり、ボイルした人参やロウソク、古い本のようなにおいともいわれ、皮脂に含まれる脂肪酸が酸化したり分解されたりすることによって排出されます。

 土師氏は加齢臭の特徴として、1)ノネナールは40歳前後から分泌されるようになる。さらに汗や他の体臭が混ざり合い、強いにおいを発するようになる。2)男女の区別なく分泌される。とくに女性は閉経後に顕著に表れる。3)生活習慣が左右するため、食生活やストレスを管理することで加齢臭防止につながると述べています。

 学生の頃から自身の臭いに悩み、常にその対策に果敢に取り組んできた編集者である奈良巧氏は、編集者としてのフットワークのよさを生かして、あらゆる国内の「におい」対策メーカーの専門家の知識と、自身の実践に立脚した臭い対策、とくに加齢臭対策の集大成を、著書『におわない人の習慣』にまとめています。

 同書のなかで奈良氏は加齢臭対策として、1)体を洗う石けんや頭皮を洗うシャンプーなどを正しく選択し、2)体や頭皮の洗い方を正しく理解し、3)正しい食生活や生活習慣についての知識を持つことの重要性を説きつつ、それらをあらゆる実践を通して解説していますが、まさにその実践は「あらゆる臭い対策の総力戦」といえます。

 いかがでしたでしょうか。気になる臭いや対策がありましたら、ぜひ今すぐに実践してみてください。あなたのためだけでなく、あなたの周りの笑顔につながるかもしれません。

<参考文献>
・『NHKきょうの健康』(2018年6月号、NHK出版)
・『Newton』(2018年4月号、「体臭」:関根嘉香協力、大島絵理奈執筆、ニュートンプレス)
・『気になる口臭・体臭・加齢臭』(五味常明著、旬報社)
・『匂いのエイジングケア』(五味常明著・土師信一郎指導、実業之日本社)
・『におわない人の習慣』(奈良巧著、草思社)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(4)サウジアラビアとイランの存在感

中東のグローバル・サウスといえば、サウジアラビアとイランである。両国ともに世界的な産油国であり、世界の政治・経済に大きな存在感を示している。ただし、石油を武器にアメリカとの関係を深めてきたのがサウジアラビアであ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/24
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
2

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

民主主義の本質(5)民主主義を守り育てるために

ポピュリズムや権威主義的な国家の脅威が迫る現在の国際社会。それに対抗し、民主主義的な社会を堅持するために、国際社会の中で日本はどのように振る舞うべきか。議論を進める前提として大事なのは「歴史から学ぶ」ことである...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/23
橋爪大三郎
社会学者
3

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

編集部ラジオ2024:4月24日(水)

ChatGPTを開発したことで一躍有名となったOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの発展によって社会は大きく、急速に変化しており、その中心的な人物こそが彼であるといっても過言ではありません。

そんなアルトマンが...
収録日:2024/04/15
追加日:2024/04/24
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か

ルネサンス美術とはいったい何なのか。これを考えるためには、なぜその時代に古代ギリシャ、ローマの文化が復活しなければならなかったのかを考える必要がある。その鍵は、ルネサンス以前のイタリアの分裂した都市国家の状態や...
収録日:2019/09/06
追加日:2019/10/31
池上英洋
東京造形大学教授
5

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え

2016年ノーベル医学・生理学賞の受賞テーマである「オートファジー」とは何か。私たちの体は無数の細胞でできているが、それが日々、どのようなプロセスで新鮮な状態を保っているかを知る機会は少ない。今シリーズでは、細胞が...
収録日:2023/12/15
追加日:2024/03/17
水島昇
東京大学 大学院医学系研究科・医学部 教授