テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.09.01

テレビCM、その料金の裏側とは?

 お金のかからないエンタメといえば、なんといってもテレビ番組ではないでしょうか。受信料の支払いが必要な国営放送NHKもありますが、民放においてはどのチャンネルも無料で観ることができます。気になるのは、あれだけバリエーションのある番組を制作し、放映しているテレビ局はどのような仕組みで利益をだしているのかという点です。よく聞く話としては、視聴率に基づいて設定されるCM放映料による収益があります。今回は、民放各社の支える放映料とCM制作の収支について調べてみました。

テレビCMの放映料はどのくらいかかる?

 気になるテレビCM放映料ですが、『知らないとソンする!価格と儲けのカラクリ』によると、在京キー局のゴールデンタイム(19~22時)のCM放映料は200万円という金額が述べられています。これは単価換算の価格で、実際に全国放送で1クール(3ヶ月)の場合、番組提供スポンサーとしてCMを放映すると、1億を軽く超える金額になるとのこと。視聴率が低い深夜早朝といった時間帯においても、15秒のスポットCM1回で40万円。実際には1回だけではなく複数回の契約になるので、それなりの金額になるでしょう。

テレビ局の放映利権

 前掲書に示されている例示から、1時間番組でスポンサーが支払った金額からの内訳を具体的にみていきましょう。

・企業/スポンサー料:1億円
 → 広告代理店/手数料(15%):1500万円
 → テレビ局/放映料(53%)、スタジオ経費(23%):7600万円
 → 番組制作会社/VTR制作料(9%):900万円

 広告スポンサー1億円に対して、5300万円が放映料としてテレビ局の懐に入ることから、テレビ局の大きな収益は放映料という電波利権であることがよくわかります。民放キー局は、総務省から安価な電波利用料で認可された独占的な電波利用権によって、大きな収益をあげているといってよいでしょう。

放映料に加えて高額になるCM制作費

 広告主である企業が支払うのは、放映料だけでなくCM制作料に及びます。

 一般人をターゲットにした広告の効果を上げるためには、視聴率のよい番組提供とその時間帯であることが必須となります。ある程度のクオリティと効果を狙って、全国放送30秒CMを制作する場合、少なくとも2000~3000万円は必要で、知名度のあるタレントを起用するとさらに数千万円アドオンされることになります。それなりのタレントを起用した大企業のCMは少なくとも制作費だけで億を超えることが少なくないのです。

独占市場のミライは?

 独占的な電波利権の牙城であり、巨大なお金が動き、競争原理が働きにくいテレビ業界ですが、視聴習慣の変化や、インターネット経由で視聴できるコンテンツの多様化によって、テレビ営業は減収していくと予測されています。

 とはいっても、世界的な景気回復の基調とあわせて、マスメディアとしての価値は、広告代理店と一体となった構造によって、まだまだキープしているといってよいでしょう。

<参考文献>
・『知らないとソンする!価格と儲けのカラクリ』(神樹兵輔・21世紀ビジョンの会著、高橋書店)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

多神教の日本と民主主義…議論の強化と予備選挙の導入を

多神教の日本と民主主義…議論の強化と予備選挙の導入を

民主主義の本質(4)日本の民主主義をいかに強化するか

民主主義の発展において、キリスト教のような一神教的な宗教の営みがその礎にあった。では、そうした宗教的背景をもたない日本で、民主主義を育てるにはどうしたらいいのか。人数が多ければ正しいというのは「ポピュリズム」の...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/16
橋爪大三郎
社会学者
2

26歳で老中首座…阿部正弘が幕末の動乱期に担った使命とは

26歳で老中首座…阿部正弘が幕末の動乱期に担った使命とは

徳川将軍と江戸幕府~阿部正弘編(1)若き老中首座・阿部正弘の使命

阿部正弘は幕末の若き老中首座として、徳川家斉・徳川家慶・徳川家定の時代を支えた。黒船で泰平を揺るがしたペリーが再来し、日米和親条約が結ばれ、鎖国政策は終わりを告げる。近代日本への舵取りを果たしたと評価される阿部...
収録日:2021/03/29
追加日:2024/03/09
3

失敗から学んだ石田梅岩、独学で教養を高めた少年期の体験

失敗から学んだ石田梅岩、独学で教養を高めた少年期の体験

石田梅岩の心学に学ぶ(2)梅岩の教養を育んだ少年期の体験

江戸の町人の例に漏れず11歳で奉公に出た石田梅岩だが、奉公先の商家の事情から15歳で帰郷する。失敗ともいえるこの体験が梅岩思想に与えた影響は大きいと言う田口氏。郷里へ戻った梅岩が23歳で再び奉公するまでの記録は残って...
収録日:2022/06/28
追加日:2024/04/15
田口佳史
東洋思想研究家
4

インドはなぜ急激に発展したのか?2つの大きな理由

インドはなぜ急激に発展したのか?2つの大きな理由

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(2)躍進するインドの歴史

グローバル・サウスの盟主を自認するインドは、2023年に人口で中国を抜き世界最多となった。中進国にもかかわらずIT産業は飛躍的に発展し、世界の関心を集めている。しかし、インドに限らず多くのグローバル・サウスの国々は欧...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/10
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る

なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る

チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由

「心理的安全性」は近年もっとも注目されるビジネスバズワードの一つともいわれている。その背景には、コロナ禍におけるリモートワークの増大、社会全体が未来予測の難しい「VUCAの時代」に入ったことがある。職場環境が多様に...
収録日:2022/04/26
追加日:2022/07/23
青島未佳
一般社団法人チーム力開発研究所 理事