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DATE/ 2018.09.08

健康食品で病気治せない?ありがちな誤解とは

 日々の健康のため、健康食品を摂取していますか?内閣府の審議会である消費者委員会が行った調査によると、約6割の消費者が健康食品を利用しているとのことです。が、健康食品とはいったい何なのか、その定義を知らずに使っている方も少なくないのではないでしょうか?

健康食品と医薬品 明確な違いあり

 「健康食品って言うくらいなんだから、身体の悪いところを治してくれるんでしょ?」「ビタミンやミネラルなどサプリメントのことじゃないの?」人によって健康食品のイメージは異なりますが、厚生労働省は以下のように説明しています。「健康食品と呼ばれるものについては、法律上の定義は無く、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指しているものです。そのうち、国の制度としては、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たした『保健機能食品制度』があります」。健康食品という言葉そのものにはっきりした定義はないのですが、一方で健康食品と似たような印象を持たれがちな医薬品とは明確な違いがあります。

 「医薬品と違い、病気の治療・予防を目的とするものではありません。病気の治療や予防に役立つことを説明したりほのめかしたりする表示や広告を行っている製品は、『医薬品』と判断します」(東京都福祉保健局)。つまり、健康食品は病気を治す、予防できる、などとうたってはいけないのです。薬ではなく、あくまで「食品」の一部ということです。

消費者庁「健康維持の基本は…」

 また、医薬品はGMP(Good Manufacturing Practice 適正製造規範)というルールに沿い、一定の品質が確保されていますが、多くの健康食品はGMPに基づいて製造されていません。健康被害が起こった場合、「医薬品副作用被害救済制度」という救済を図る仕組みが医薬品にはあるのに対し、健康食品は適用外です。東京都健康安全研究センターが行ったアンケートによると、健康食品を利用して体調不良を感じたことがある人は3.6%。「確信が持てないがある」も含めると11.8%となり、8~9人に1人は該当することになります。また、健康食品の効果を感じていない人は29.9%にも上るという結果も出てきました。

 健康食品=悪、というわけではありません。ただし、薬とは違うものであるということを忘れずに摂取することが大事です。消費者庁は「健康食品は、あくまでも食品ですので、たとえ健康に良いとされる効果が表示されている場合であっても、薬のように、痛みの症状を軽くしたり、病気を治したりする効果が期待できるものではありません」と警告したうえで、「健康維持の基本は『栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な休養』です。この3つに代わる健康食品はありません」と明示しています。楽に簡単に健康になれる方法はない、ということですね。

<参考サイト>
・内閣府:消費者の「健康食品」の利用に関する実態調査(アンケート調査)
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2012/088/doc/088_120518_shiryou1-2.pdf
・厚生労働省:「健康食品」のホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/hokenkinou/
・東京都福祉保健局:医薬品的な効能効果について
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/kenkou/kenko_shokuhin/ken_syoku/kanshi/kounou.html
消費者庁:健康食品の 安全性と有効性について
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/risk_commu_health_food/pdf/healthfood_shiryou01.pdf
・東京都福祉保健局:都民を対象とした「健康食品」の摂取に係る調査結果報告書
http://www.tokyo-eiken.go.jp/files/top/27_kenshoku_houkokusho.pdf

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