テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.03.15

増える死後離婚…なぜ死別後に縁を切るのか?

 皆さんは「死後離婚」というものをご存知でしょうか。配偶者が亡くなった後の離婚ってどういうこと?と思う人も少なくはないでしょう。

急増する「死後離婚」の申立はほとんどが妻から

 「死後離婚」と呼ばれているのは、夫が亡くなった後、“姻族関係終了届”という書類を提出し、夫の親族(夫の親やきょうだい、甥や姪など)との縁を法的に断つことです。届けを出しても本人と夫や子どもの関係は変わらず、子どもと祖父母等の関係は「血族」に当たるためそのままで、戸籍にも影響はありません。2005年には全国で1772通の届けだったのが、2017、2018年には5千通近くに達し、その後は下がる傾向を見せているものの毎年2000~4000件が確認されているといいます。

 「死後離婚」はA4の用紙1枚に記入押印して役所に提出するだけで、姻族側や他の誰かに知られることなく、いわゆる「義理」の縁から解放される手続き。逆に言うと、書類を提出して意思表示しない限り、配偶者の死後も姻族関係は続くのです。

 この手続きを利用する人はほぼ100%女性。男女の平均寿命に差があり、夫のほうが先に亡くなる割合が高いからだけとは考えられません。嫁・姑等の「不仲」を断ち切ることができ、義理の両親に対しての世話や「介護」の必要がなくなり、夫や義理の両親と同じ「お墓」に入る必要がなくなります。一方、夫の遺産や遺族年金は受け取れますし、祖父母から孫への遺産相続にも支障はありません。

 姻戚関係に悩む人にとっては、「お守りとして書類を持っているだけでも冷静になれる」とする夫婦問題カウンセラーもいます。

夫と同じ墓に「入りたくない」「入らせたくない」事情

 「家」の意識が強かった時代には、夫が早く亡くなると妻は実家に帰れと言われることも珍しくありませんでした。まさに、現在の状況の裏返しで、孫は可愛くても、嫁は「家の墓に入れたくない」というのが姻族の本音でした。

 過去のデータにはなりますが、第一生命経済研究所の調査(2014年)では、「夫婦は同じ墓に入るべき」と考えている60-70代の男性は約90%に達するのに対し、同年代の女性は80%未満しかそう思わないという結果が出ています。もっとシンプルに「配偶者と同じお墓に入りたいか」との問いでは、男性は「入りたい」64.7%、「まあ入りたい」28.2%の合計93%が希望。女性では「入りたい」43.7%、「まあ入りたい」36.1%で合計80%しか希望していません。

 この中には「夫の一族(先祖代々)のお墓に入るのがイヤ」と考えている人もいれば、「死んでまで、夫と一緒はイヤ」という人も。半生を核家族で過ごしてきた第一世代の最期という意味でも、「死後離婚」の問題は注目されます。

 死後離婚を決意する多くのケースが「義理の仲」の解消を願うものですが、なかには「亡くなった夫」との関係を忘れ去りたい場合もあります。たとえば女性関係の絶えなかった夫が急死した場合、極端に言えば別の女性と一緒にいて亡くなったようなケースでは、きれいさっぱり縁を切りたいと考えるのも無理はないでしょう。

<参考サイト>
・あさイチ:死後離婚のリアル
https://www1.nhk.or.jp/asaichi/archive/181015/1.html
・第一生命経済研究所:偕老同穴、今は昔?
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/watching/wt1502b.pdf
・講談社 夫が死んだら離婚する…じつは日本で「死後離婚」が増えていた「納得の理由」 https://gendai.media/articles/-/110569
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(4)サウジアラビアとイランの存在感

中東のグローバル・サウスといえば、サウジアラビアとイランである。両国ともに世界的な産油国であり、世界の政治・経済に大きな存在感を示している。ただし、石油を武器にアメリカとの関係を深めてきたのがサウジアラビアであ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/24
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
2

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

民主主義の本質(5)民主主義を守り育てるために

ポピュリズムや権威主義的な国家の脅威が迫る現在の国際社会。それに対抗し、民主主義的な社会を堅持するために、国際社会の中で日本はどのように振る舞うべきか。議論を進める前提として大事なのは「歴史から学ぶ」ことである...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/23
橋爪大三郎
社会学者
3

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

編集部ラジオ2024:4月24日(水)

ChatGPTを開発したことで一躍有名となったOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの発展によって社会は大きく、急速に変化しており、その中心的な人物こそが彼であるといっても過言ではありません。

そんなアルトマンが...
収録日:2024/04/15
追加日:2024/04/24
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か

ルネサンス美術とはいったい何なのか。これを考えるためには、なぜその時代に古代ギリシャ、ローマの文化が復活しなければならなかったのかを考える必要がある。その鍵は、ルネサンス以前のイタリアの分裂した都市国家の状態や...
収録日:2019/09/06
追加日:2019/10/31
池上英洋
東京造形大学教授
5

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え

2016年ノーベル医学・生理学賞の受賞テーマである「オートファジー」とは何か。私たちの体は無数の細胞でできているが、それが日々、どのようなプロセスで新鮮な状態を保っているかを知る機会は少ない。今シリーズでは、細胞が...
収録日:2023/12/15
追加日:2024/03/17
水島昇
東京大学 大学院医学系研究科・医学部 教授