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DATE/ 2019.04.25

「紙幣」の肖像に選ばれる人の条件は?

 新元号「令和」が発表されたわずか数日後、20年ぶりに新紙幣が刷新されるというニュースが日本をかけめぐりました。実際に新紙幣に刷新されるのは2024年度とまだまだ先のことですが、新しいお札の顔になる人びとには続々と注目が集まっています。とはいえ、新紙幣の人物に注目が集まるのは今も昔も変わらないもの。今回はそんな「お札に選ばれる人」について調べてみました。

これまでどんな人が選ばれてきたの?

 そもそも日本で初めて紙幣に肖像が入ったのは1881年、初めて肖像に選ばれた人物は神功皇后でした。それから菅原道真や和気清麻呂、竹内宿禰といった古代の人物が選ばれる時代が続きますが、1984年以降は夏目漱石、新渡戸稲造、福沢諭吉などの明治以降の人物が選ばれています。その後、2004年の刷新時には千円券に野口英世、一万円券は引き続き福沢諭吉が選ばれ、五千円券には女性初の採用となる樋口一葉の肖像が使われたことも話題を呼びました。

 紙幣の肖像に選ばれる基準は、①日本が誇る人物で広く知られていること、②偽造防止のため精密な写真がある人物であること、③お札にふさわしい品格の人物であることの3点だといわれています。その上で、財務省、日本銀行、国立印刷局の三者で協議して、紙幣に印刷する人物を決めるのです。

新紙幣の肖像に選ばれた人物とは?

 2024年度の新紙幣刷新では顔ぶれも大きく変わりました。改めて、その素顔を紹介していきましょう。千円券の北里柴三郎は、破傷風に対する療法の確立、香港でのペスト菌の発見などの研究者でありながら、伝染病研究所の設立、慶應義塾大学医学部や日本医師会を創立するなど、近代日本医学の礎を築いた人物です。

 五千円券の津田梅子は、6歳で岩倉使節団の一員としてアメリカに渡り、津田塾大学の前身となる女子英学塾を創設した人物。10年以上もアメリカで暮らしたことによって培われた自由な発想が、以降の日本の女性教育を大きく変えるひとつの要因ともなりました。

 一万円券の渋沢栄一は幕末から明治期にかけて活躍した人物。もともとは大蔵省の役人として新しい国づくりに携わっていましたが、政府から離れると民間人として手腕を発揮。日本最初の銀行である第一国立銀行を創設するなど、500以上の企業と関わったことから日本資本主義の父ともいわれています。

 一部の人たちからは「あまり知らない」という声も上がったといいますが、報道でも彼らの業績を目にすることが増えてきました。いずれの人物も各分野で輝かしい功績を残し、現在の日本ができる上で欠かせない人物といえます。今後はその活躍がより人びとに知られていくことでしょう。

偽造に対抗できる技術も盛り込まれる

 新紙幣では、最新の3D技術によるホログラムが使用されることも発表されました。一万円券と五千円券では縦長のホログラムが使用され、肖像が浮き上がって見える仕掛けが施されます。さらに、光にあててすかすと絵が浮かぶ「すき入れ」も、これまで以上に精細な図柄を描かれるとのこと。

 こうした技術を駆使することで目指すのは「偽造の防止」。日本の紙幣は刷新するごとにより偽造しにくくなっているといいます。その証拠に2018年に発見された偽札は、前回に新紙幣を刷新した2004年に比べ、なんと6分の1。今回はさらに高い技術を駆使していることでさらに偽造が難しくなるので、より犯罪を抑止できる効果も期待ができるのです。

 新しい技術が盛り込まれ、新しい日本の顔で刷新される新紙幣。手にするのはまだ先のことですが、その日が待ち遠しいですね。

<参考サイト>
・国立印刷局
https://www.npb.go.jp/index.html
・学校法人北里研究所北里柴三郎記念室│北里柴三郎の生涯
https://www.kitasato.ac.jp/jp/kinen-shitsu/shibasaburo/lifetime.html
・津田塾大学│津田梅子について
https://www.tsuda.ac.jp/aboutus/history/index.html
・公益財団法人渋沢栄一記念財団│渋沢栄一略歴
https://www.shibusawa.or.jp/eiichi/eiichi.html
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