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DATE/ 2019.10.17

「働きやすい」都道府県ランキング、第一位は?

 企業口コミ・給与明細サイト「キャリコネ」が、2019年3月に「働きやすい都道府県ランキング」を、さらに同年8月に「正社員が働きやすい都道府県ランキング」を発表しました。

 それぞれの「働きやすい」都道府県ランキング結果を見ながら、「働きやすい」都道府県・第一位の魅力にせまってみましょう。

「働きやすい」都道府県ベスト5

 ランキング指標は、「労働時間」「やりがい」「ストレス」「休日」「給与」「ホワイト度」の6項目。「キャリコネ」ユーザーから寄せられた各評価の平均点(総合評価・5点満点)を都道府県別に抽出し、ランキングを作成しています。

 「働きやすい都道府県ランキング・ベスト10」ならびに「正社員が働きやすい都道府県ランキング・ベスト10」の結果は、以下のようになっています。

 【働きやすい都道府県ランキング・ベスト10】
1位:沖縄県(総合評価:2.97)
2位:東京都(総合評価:2.96)
3位:山口県(総合評価:2.88)
4位:徳島県(総合評価:2.87)
4位:愛知県(総合評価:2.87)
6位:大阪府(総合評価:2.86)
6位:高知県(総合評価:2.86)
8位:京都府(総合評価:2.85)
9位:神奈川県(総合評価:2.83)
10位:千葉県(総合評価:2.82)

 【正社員が働きやすい都道府県ランキング・ベスト10】
1位:愛知県(正社員の総合評価:3.51)
2位:沖縄県(正社員の総合評価:3.24)
3位:宮崎県(正社員の総合評価:3.23)
4位:長野県(正社員の総合評価:3.21)
5位:徳島県(正社員の総合評価:3.16)
5位:愛媛県(正社員の総合評価:3.16)
7位:東京都(正社員の総合評価:3.14)
7位:大阪府(正社員の総合評価:3.14)
9位:鹿児島県(正社員の総合評価:3.08)
9位:長崎県(正社員の総合評価:3.08)
9位:富山県(正社員の総合評価:3.08)
9位:神奈川県(正社員の総合評価:3.08)

沖縄県が一番「働きやすい」!?

 まずは「働きやすい都道府県ランキング」で1位に輝き、「正社員が働きやすい都道府県ランキング」でも2位という快挙を成し遂げた、沖縄県の「働きやすさ」に対する口コミを見てみましょう。

 「キャリコネ」には、沖縄県を代表する企業として、県内最大の総合スーパー「サンエー」に寄せられた、以下の口コミが紹介されています。

 「自分の売場は自分で作るという精神があるため、自由度は高い。そのため結果が見えやすく、やりがいに繋がる。パートやアルバイトとの良好な関係構築ができれば、人の成長にも関われる仕事であると感じる」(販売アドバイザー/20代後半男性/年収420万円/2017年度)

 「残業はありますが、部署によって月間の残業時間は大きく異なります。これまで残業を強要されるようなことはありませんでした。また休日出勤においても、強要されるようなことはこれまでなく、休日当日に急遽出勤できるか等を問われたり、実際に出勤したりしたことは今まで一度もありません」(ショップスタッフ/20代前半女性/年収200万円/2015年度)

それとも愛知県こそ一番「働きやすい」!?

 次に「正社員が働きやすい都道府県ランキング」で1位を獲得し、「働きやすい都道府県ランキング」でも4位にランクインした愛知県の「働きやすさ」に対する口コミを見てみましょう。

 「キャリコネ」には、愛知県を代表する企業として、世界的自動車メーカー「トヨタ自動車」に寄せられた、以下の口コミが紹介されています。

 「残業が基本は360時間に抑えられることを考えると、時給は高い。比較的自分の時間を持てて、お金も自由に使える。社宅や寮などの福利厚生制度もしっかりしており、都内で生活するよりも額面以上に可処分所得は多くなる印象」(企画営業/30代前半男性/年収850万円/2017年度)

 「豊田市は福利厚生が充実、名古屋のオフィスはまるでドラマの世界。独自の保養所は凄く良い、下手に他のホテルや旅館にいくよりいい。車の社割は若干ある。 団体保険が安い、社食は充実している。みんな優しい。健康診断もしっかりしている」(海外営業/30代前半女性/年収550万円/2016年度)

中心と先端から見る近未来日本の「働きやすさ」

 2018年に出版された『統計から読み解く47都道府県ランキング』『47都道府県の偏差値』は、統計ジャーナリストの久保哲朗氏によって、日本での生活に関わる様々なデータを総務省や厚生労働省などが発表した各種統計資料から収集し、都道府県別にランキング化したり比較されたりしています。

 その中から、「生産年齢人口」および「サラリーマン年収」「完全失業率」「大企業数」「第二次産業従業者数」に「婚姻件数」「合計特殊出生率」「15歳未満人口(子どもの数)」をピックアップし、沖縄県と愛知県の特徴を比較しながら考察していきたいと思います。おもな労働力といえる「生産年齢人口・ベスト10」は、以下となっています。ちなみに、「生産年齢人口」とは、おもな労働力となる15際以上65歳未満を指します。

 【生産年齢人口・ベスト10】
1位:東京都(100人あたり:65.83人、偏差値:81.06)
2位:神奈川県(100人あたり:63.18人、偏差値:69.89)
3位:沖縄県(100人あたり:62.40人、偏差値:66.61)
4位:愛知県(100人あたり:62.17人、偏差値:65.61)
5位:埼玉県(100人あたり:62.12人、偏差値:65.41)
6位:宮城県(100人あたり:61.33人、偏差値:62.08)
7位:千葉県(100人あたり:61.23人、偏差値:61.64)
8位:滋賀県(100人あたり:60.93人、偏差値:60.41)
9位:大阪府(100人あたり:60.93人、偏差値:60.39)
10位:栃木県(100人あたり:60.63人、偏差値:59.13)

 1位は唯一の偏差値80超えの東京都ですが、その他にも首都圏(2位:神奈川県、5位:埼玉県、7位:千葉県、10位:栃木県)・中京圏(4位:愛知県)・近畿圏(8位:滋賀県、9位:大阪府)といった、三大都市圏に集中していることがわかります。

 その上で、3位にランクインした沖縄県を、久保氏は「異彩を放っている」と称しています。そして「婚姻件数、合計特殊出生率、15歳未満人口(子どもの数)がすべて全国1位」「とにかく若者が多い県」と、沖縄県の特徴を述べています。

 しかし、「サラリーマン年収」において、愛知県はベスト3入りの3位:平均5,182,900円と(偏差値:68.20)となっていますが、沖縄県は47位:平均3,389,400円(偏差値:33.23)となっています。そして反対に「完全失業率」においては、残念ながら沖縄県は4.4%で1位となっています(愛知県は2.4%で34位)。

 一方、愛知県の「婚姻件数」は10位、「合計特殊出生率」16位、「15歳未満人口(子どもの数)」は4位。さらに、「大企業数」が1万人あたり0.86社で3位(沖縄県は0.51社で21位)、「第二次産業従業者数」は1000人あたり241.89人で4位(沖縄県は79.60人で47位)と、産業基盤が整っていることと人口規模のまずまずの安定がうかがえます。

 以上のことから、「働きやすい」都道府県ランキングの第一位にそれぞれ輝いた沖縄県と愛知県ですが、「働きやすさ」、ひいては仕事に求める価値観が違っていることが見えてきます。しかし共通の背景に、人口規模の安定≒社会的将来性の期待感や地域がもつ多様性、そして地元愛や共同体への根源的な信頼感があるようにも思われます。

 ジャーナリストで社会保障および人口政策が専門の河合雅司氏は、『未来の年表』で「東京の一極集中は日本の破綻につながる」と説き、「まず、労働人口減少への対策を」と述べています。変化の大きく不安定で難しい時代ではありますが、日本列島の中央に位置する愛知県と先端にある沖縄県の「働きやすさ」から、都道府県すら超えた「働きやすい」未来の日本のヒントが見えてくるかもしれません。

<参考文献・参考サイト>
・キャリコネ
https://careerconnection.jp/
・「働きやすい都道府県ランキング」発表 1位は沖縄県(企業口コミサイトキャリコネ)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000182.000018764.html
・「正社員が働きやすい都道府県ランキング」を発表 1位は愛知県(企業口コミサイトキャリコネ)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000249.000018764.html
・『統計から読み解く47都道府県ランキング』(久保哲朗著、日東書院本社)
・『47都道府県の偏差値』(久保哲朗著、小学館新書)
・『未来の年表』(河合雅司著、講談社現代新書)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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