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DATE/ 2020.04.26

日本や世界でどれくらい「外出」が減ったのか?

 世界中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るい、各国や各地域を挙げて、外出を制限したり自粛したりする動きが高まっています。しかし、実際には、日本や世界でどれくらい外出が減っているのでしょうか。

 現在の世界的な危機の渦中において、一つの指針ともなるような詳細なレポート「COVID-19 Community Mobility Reports(COVID-19コミュニティモビリティレポート)」(以下「レポート」)をGoogleが公開しました。

 2020年4月17日現在、レポートでは130以上の国または地域ごとに「Retail & recreation(小売店と娯楽関連施設)」「Grocery & pharmacy(スーパーマーケットと薬局)」「Parks(公園)」「Transit stations(公共交通機関)」「Workplaces(職場)」「Residential(住宅)」といった6つの場所ごとの時間の経過に伴う動きの傾向が数値化のうえ、発表されています。

 数値は、Googleマップで特定の場所の混雑具合を示す匿名化された集計データを使用して算出されています。そして、該当地域の6つの場所が最も混雑する時間帯を特定し、その数値を基準値となる2020年1月3日から2020年2月6日までの期間の中央値と比較します。そしてレポートで、「更新日時の数値が基準値からどれだけ増減したか?」が表されます。

 なお、「(6つのそれぞれの)場所にいる人」は、「訪問者の数」と「滞在時間の長さ」から算出されています。さらに数値の横には、それぞれのデータが時間の経過と共にどのように増減したかを示すグラフが表示されています。

ヨーロッパ諸国の外出状況

 2020年4月17日に更新されたレポートの数値は、以下のようになっています(ただし、データは2020年4月11日現在の数値)。まずはヨーロッパ諸国から見ていきましょう。

【イタリア】
「小売店と娯楽関連施設」-86%
「スーパーマーケットと薬局」-42%
「公園」-83%
「公共交通機関」-78%
「職場」-62%
「住宅」+26%

 ヨーロッパ諸国の中で最初に感染爆発が発生したイタリアでは、当初は北部のみが対象とされていた外出・移動制限措置が2020年3月10日から全国に拡大されました。

【フランス】
「小売店と娯楽関連施設」-86%
「スーパーマーケットと薬局」-39%
「公園」-74%
「公共交通機関」-79%
「職場」-55%
「住宅」+23%

 フランスでは、マクロン大統領の「これは戦争です」という演説とともに、2020年3月17日から全土での外出禁止令が施行されました。

【イギリス】
「小売店と娯楽関連施設」-81%
「スーパーマーケットと薬局」-32%
「公園」-37%
「公共交通機関」-70%
「職場」-57%
「住宅」+19%

 当初「多数が感染して集団免疫ができれば流行は収まる」などとしていましたが、専門家の意見を聞いて方針を転換・2020年3月23日から全土でロックダウンを開始しました。

【スペイン】
「小売店と娯楽関連施設」-92%
「スーパーマーケットと薬局」-44%
「公園」-85%
「公共交通機関」-84%
「職場」-63%
「住宅」+26%

 ヨーロッパ諸国でイタリアに次いで感染爆発が起こったスペインでは、2020年3月14日に全土を対象とした外出禁止令が発令されました。

【ドイツ】
「小売店と娯楽関連施設」-56%
「スーパーマーケットと薬局」+0%
「公園」+35%
「公共交通機関」-48%
「職場」-29%
「住宅」+10%

 2020年3月20日にバイエルン州など南部で外出制限令が出され、さらに2020年3月22日に全土での外出禁止令が発令されました。

アメリカとアジア・各地の外出状況

 他方、アメリカやアジアの各地はどのように変化しているでしょうか。アメリカの数値は、次のようになっています。

【アメリカ】
「小売店と娯楽関連施設」-45%
「スーパーマーケットと薬局」-7%
「公園」-16%
「公共交通機関」-49%
「職場」-38%
「住宅」+14%

 2020年4月17日現在のデータでは、アメリカは感染者数が世界最多となっています。ただし、国土が広く州ごとの自治も確立されているため、各地に応じた対応がとられています。

【アメリカ・ルイジアナ州】
「小売店と娯楽関連施設」-45%
「スーパーマーケットと薬局」-2%
「公園」-35%
「公共交通機関」-54%
「職場」-36%
「住宅」+14%

 アメリカ・ルイジアナ州では、2020年2月24日にニューオーリンズで開催された「マルディグラ」とよばれる大規模なカーニバルを機に感染が急増したことを受けて、3月23日から州全体でロックダウンが実施されました。

【アメリカ・カリフォルニア州】
「小売店と娯楽関連施設」-48%
「スーパーマーケットと薬局」-14%
「公園」-46%
「公共交通機関」-53%
「職場」-40%
「住宅」+18%

 同じアメリカでもカリフォルニア州では、2020年3月19日に外出禁止令が出されました。なお、同様にニューヨーク州でも3月22日に外出禁止令が出されましたが、3日の違いがその後の感染拡大の明暗を分けたといわれています。

【タイ】
「小売店と娯楽関連施設」-51%
「スーパーマーケットと薬局」-21%
「公園」-57%
「公共交通機関」-63%
「職場」-22%
「住宅」+17%

 アジアの各地でも感染流行は衰えていません。タイでは2020年3月26日に、非常事態宣言が出されました。

【インド】
「小売店と娯楽関連施設」-80%
「スーパーマーケットと薬局」-55%
「公園」-52%
「公共交通機関」-69%
「職場」-64%
「住宅」+30%

 また、インドでも2020年3月25日に全土での原則外出禁止を宣言。「世界最大規模のロックダウンに踏み切った」といわれています。

【日本】
「小売店と娯楽関連施設」-30%
「スーパーマーケットと薬局」+4%
「公園」+3%
「公共交通機関」-48%
「職場」-22%
「住宅」+12%

 日本では2020年4月7日に緊急事態宣言が発令され(対象地域は埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・大阪府・兵庫県・福岡県)、さらに4月17日に対象地域が全国に拡大されました。

今とアフターコロナの世界のための行動を

 それぞれのレポートを見てみると、やはり世界中で外出が減っていることが見えてきます。

 特に被害が甚大かつより深刻な【イタリア】【フランス】【イギリス】【スペイン】や、強権を発動した【インド】の「小売店と娯楽関連施設」「公共交通機関」「職場」が如実に減少しています。なお、半比例して「住宅」の%は増加しています。

 一方、取り上げた10の国と地域中、【日本】の「小売店と娯楽関連施設」の減少率は一番低く、特に上記の5カ国と比べた場合、その差は歴然としています。

 もちろん、数値は基準値との比較によって算出されているため、データの%が一概に危機意識と正比例しているとはいえませんが、感染症対策においてなによりも必要とされる、社会を構成する個々人の最適な行動が、現時点では「外出をしない」もしくは「外出を減らす」ことです。

 世界中の人々が同じように新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の物理的な危機に瀕し、心身の健康と安全だけでなく、経済的にも社会的にも不安も抱える現在。しかしながら、今を生きるすべての人々がこの非常事態をよりよく生き抜くためにも、やがておとずれるアフターコロナの世界のためにも、一人ひとりのさらなる意識改革と行動抑制が求められています。

<参考文献・参考サイト>
・COVID-19 Community Mobility Reports
https://www.google.com/covid19/mobility/
・「「外出禁止」「緊急事態宣言」…日本より厳しい新型コロナ対策下で生きる人々のリアル 伊、仏、英、スペイン、独、タイ、インド、豪、ニュージーランド、米、ハワイ、ペルー、エクアドル…世界同時多発ロックダウン」『週刊プレイボーイ』(2020年4月20日号、集英社)
・チャートで見る世界の感染状況 新型コロナウイルス:日本経済新聞
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-chart-list/
・Googleが公開した「COVID-19コミュニティモビリティレポート」のプライバシー保護の評価と問題点
https://jp.techcrunch.com/2020/04/10/2020-04-03-google-is-now-publishing-coronavirus-mobility-reports-feeding-off-users-location-history/
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