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DATE/ 2020.05.12

山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」周辺には何がある?

山手線49年ぶりの新駅

 2020年3月14日、JR山手線では1971年の西日暮里駅以来49年ぶりに、30番目の駅となる「高輪ゲートウェイ駅」が開業しました。新型コロナウィルス感染拡大防止のためオープニングの記念式典は中止されましたが、開業当日の日付入り切符を求める鉄道ファンが集まり、初日は約5万4千人の利用者でにぎわったといいます。

 駅名は公募を行ったはずなのに、結局1位の「高輪」、2位の「芝浦」、3位の「芝浜」のどれでもなく、少数の支持しか得なかった「高輪ゲートウェイ」に決定したことで物議を醸しましたが、ひとまずは無事の開業にこぎつけられて、JR東日本もほっとしたことでしょう。

 高輪ゲートウェイ駅は品川駅と田町駅の間に位置しますが、この2駅間の距離は山手線中で最も長く、以前から新駅建設計画の声が上がっていました。そして2014年に具体案が正式発表され、開発がスタートしたのです。

 3月24日には東京オリンピック・パラリンピックの延期が発表されましたが、もともと高輪ゲートウェイ駅の開業は、この開催に合わせたものでした。日本全国はもちろん、海外から訪れた人々を迎え入れる新たな玄関口、つまりゲートウェイとしてつくられた駅なのです。

駅内部の特徴をピックアップ

 まさにおもてなし精神を伝えるための存在といえる高輪ゲートウェイ駅は、いたるところにデザインのこだわりや細かい気配りが盛り込まれています。それはたとえば次のようなもの。

・和を意識した駅舎
国立競技場も手がけた建築家・隈研吾さんのデザインによる駅舎のテーマは「和」。折り紙をモチーフにした白い天井は、内部から見上げると柔らかに光を透かし、吹き抜け構造を採用していることから開放感にあふれています。壁や床に使用された杉材も和の空気感を演出しています。

・広々として明るいトイレ
トイレは外光を取り入れる構造(もちろん外部から内部は見えません)で、床や天井にはここでも杉材を使用しており、ナチュラルな明るさ。全体的に広々として個室も面積を広めに取っており、こちらも開放感が心地よい空間になっています。

・明朝体の駅名表示
通常の駅名表示はゴシック体を使用していますが、高輪ゲートウェイ駅では和のイメージになじむ明朝体を使用しています。改札のほか外壁の表示にも採用しており、駅全体にしなやかで優しい雰囲気を与えています。

 また、JR東日本は高輪ゲートウェイ駅を新たな挑戦の場と位置づけて、今までにないサービスの導入にも力を入れています。

・無人AI決済のコンビニ
駅ナカのコンビニ「TOUCH TO GO」は、決済をすべてAIが処理してくれる無人店舗。天井に設置されたカメラでお客さんが手に取った商品を認識し、会計用タッチパネルにSuikaなどの交通系ICカードをかざしてもらって決済する仕組みです。

・さまざまな役割を持つロボット
構内にはたくさんのロボットが配置されており、警備や案内、清掃などを担当します。これによって人件費が大幅に削減されることに加え、人間よりも正確に迷子や不審者などを捜索できたり、深夜でも清掃ができたりするメリットがあります。

 どれも、用がなくても見に行ってみたいものばかりですね。

周辺はこれから充実する予定

 実は、高輪ゲートウェイ駅は駅単体で計画されたものではありません。品川駅周辺エリアの都市開発計画「グローバルゲートウェイ品川」の中心施設という位置づけなのです。計画によると街は1~4の街区に分割され、商業施設、医療施設、宿泊施設などを擁する高層ビルが5棟建ち並ぶ予定。これらが完成して「まちびらき」が行われるのは2024年なので、まだもう少し先になります。

 まちびらきに先駆けてオープンしたかたちの高輪ゲートウェイ駅ですが一部は未完成で、本当の完成はまちびらきに合わせた2024年になります。これに合わせて品川駅北口の改修も進んでおり、歩行者デッキを通じて高輪ゲートウェイ駅方面につながる予定。品川駅はこのほかにも京急線ホームが地上化され、リニア駅が新設されるなど、いっそう便利に進化します。

 しかし2020年現在、この開発計画はほとんどが工事中。このため、高輪ゲートウェイ駅周辺はまだ「なにもない」のが現状です。駅周辺にはイベントスペースが設けられており、本来は駅開業に合わせてイベント「Takanawa Gateway Fest」が開催される予定でしたが、こちらも新型コロナウィルスの影響で延期されています。今はまだ、陸の孤島といった雰囲気ですね。

 JR以外の駅では都営地下鉄線の泉岳寺駅が最寄り駅で、こちらも「泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業」が進められています。駅の拡張やエレベーターの増設のほか、駅西側に地上30階の複合ビルが建設予定で、泉岳寺駅周辺も大きく様変わりするでしょう。今は見所の少ない高輪ゲートウェイ駅周辺ですが、これからの充実に期待したいですね。

<参考サイト>
・高輪ゲートウェイ駅の概要について - JR東日本
https://www.jreast.co.jp/press/2019/20191203_ho01.pdf
・品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)に係る都市計画について - JR東日本
https://www.jreast.co.jp/press/2018/20180923.pdf
・ノムコム 【高輪ゲートウェイ】「高輪ゲートウェイ」駅の開業に続く、品川・高輪・泉岳寺の大規模開発
https://www.nomu.com/machikara/2605/

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