テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
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DATE/ 2020.06.29

やってわかったテレワークの「課題」とは?

 今回のコロナ禍において、都庁が5月11日に発表した東京都内の従業員30人以上の企業を対象に実施したテレワークに関する緊急調査によると、4月にテレワークを導入した企業は62.7%という調査結果が報告されました。ほかの様々な民間の調査を調べても、5割~9割の人が何らかのテレワークに従事したという数字も見受けられます。

 現場作業や対人サービス業務といったこれまでテレワークは難しいと思われていた職種でもテレワークの導入をはかる傾向は高く、また企業規模の大きさに比例して導入率も高くなっているのが現状です。このように多くの人がテレワークを軸とした在宅勤務を経験した中で、それぞれのテレワークへの課題も見えてきたころなのではないでしょうか。

経験してわかった「あなたが実感したテレワークの課題とは?」

 今回はそんなテレワークを通して実際に出て来た問題点や要検討な課題を、様々な職種の男女40人にアンケート。多くの人が実感したテレワークの課題を調査し、その改善すべき点をまとめました。

【顧客や取引先のITレベルやネット環境の把握】

・不動産仲介も自粛期間中はオンライン内覧やチャットで顧客とのやり取りを提案していましたが利用客は少なく、利用しても不安は拭えず契約数は激減。リモートで内覧できると言っても、実際にそれだけのスキルのある顧客は少なく、その言葉だけで腰が引けている客も多かった。(42歳男性・不動産業)

・自社と取引先とのテレワークのレベルに差があり、まずそこをクリアしないと仕事が進まないことが分かった。社内だけでなく、企業間で足並みを揃えていくことも今後に必要なのでは。(38歳女性・コンサルタント業)

 自社がテレワークのスキルを上げても、社外の仕事相手や顧客がそのスキルについて来れなければ意味がない、と対人業務がメインの方々からの意見が多数。相手の理解度やネット環境を把握し、その上で営業手法を組み立てるといった手間をどうするかというのも課題になります。

【ムダな時間、雑談、コミュニケーションの時間確保】

・進行中の業務は確認や報告など一般的なコンタクトで恙無く遂行できるが、これから先の仕事の提案やアイディアなどを話すコミュニケーションが足らない。目の前の仕事だけに従事していればいいという雰囲気になりやすい。(44歳男性・アパレル企業)

・意外と仕事のアイディアやクリエイティビティーって雑談の中から生まれてきたりするのに、その機会が欠落しやすい。1日おきでも30分は雑談するだけのテレ会議なんかをする必要性を感じた。(47歳女性・出版社)

 時間や経費の面では合理的と言えるテレワークですが、その反面削られてしまうコミュニケーションを課題として挙げる方も多数。一見ムダに思える雑談や、自由な意見を出し合うブレインストーミングから共通課題や新しいアイディアなどが生まれるのに、と敢えてテレワークでもその時間を確保すべきだという意見が多く集まりました。
 
【会社、個人宅のインフラやネット環境の整備】

・ひとり1台のノートパソコンがなく、デスクトップを宅配便で自宅に送り仕事をしていたが、その設定やセキュリティ面に関しても煩雑なことだらけでなかなか仕事環境が整わなかった。テレワークの可能性を前提にしてツール類も導入しなければ。(46歳女性・電気メーカー)

・リモート会議中に回線が途切れ繋がらないこともよくあり、結局そのフォローに追われ業務が円滑に進まず。技術や情報などの部署も、社員のテレワーク技術に関するトラブル対応がメイン業務となってしまい本来の仕事が後回しになっている、とぼやいていましたし。(42歳男性・広告)

 準備期間も少なくテレワークに移行した企業も多く、インフラやネット環境の整備は各自でやらなければならず苦労されている方も多かったのでは。ツールの開発や共有、テレワークでも支障をきたさないインフラ整備などは、個人ではなく企業として再考すべき課題です。

【光熱費や残業代など、社員の金銭面での負担軽減】

・テレワークになったらどんなに頑張って仕事をしても残業代がつかないシステムになってしまい、収入が大幅に減って苦しい。テレワーク時における残業の扱い方など就業ルールも見直しが必要だと思う(32歳男性・マスコミ)

・在宅勤務によって、電話代や光熱費、より繋がりやすいネット回線への変更などで個人の持ち出しが高額になってしまった。会社命令でテレワークをしている場合は、個々人の仕事場での経費も無視できないことになっていくのでは。(36際男性・SE)

 予想外に出費が増えたり、また残業カットによって収入に不安を抱える人も多くいました。テレワークにも光熱費や通信費など、たとえ僅かではあっても誰にでも負担があるのは否定できないこと。運用にかかる諸経費や、給与に関わる勤務評価など、新しい社内ルールを作る必要も出てきているようです。

テレワーク、アフターコロナも続けたい?続けたくない?

 様々な課題が分かってきたテレワークですが、アフターコロナもテレワークを続けたいかどうかも40人の皆さんに聞いてみたところ、以下のような結果に。

・続けたい29人(72.5%) 続けたくない11人(27.5%)

 続けたい人からは「体が楽を覚えてしまった」「自分の時間が作りたいので、仕事も捗るようになった」「家でもできるじゃん、と気づいてしまった」というような本音が。一方、続けたくないと答えた人からは、「電話やパソコンオンリーだと仕事をしている実感がなく、バーチャルで生きているみたい」「寂しいし孤独」「1日中家で仕事するのはストレスが溜まる」などの声が。

 しかし付け加えたいのは、「続けたい/続けたくないが、その時の業務内容・体調・家庭の事情・仕事のやりやすさなどで、自分で選べるようになってほしい」という意見が、テレワーク賛成派、反対派のいずれも大多数から聞かれたこと。多くの人がフレキシブルなテレワークを望んでいるとも言える今、今回出て来た課題をクリアしていくことでテレワーク環境をより充実させていきたいものですね。

<参考サイト>
(第330報)テレワーク導入率緊急調査結果と事業継続緊急対策(テレワーク)助成金募集期間延長をお知らせします!~都内企業のテレワーク導入率が大幅に増加~│東京都防災ホームページ
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/864/2020051101.pdf

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