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DATE/ 2020.07.12

悪質な「煽り運転」その加害者の特徴とは?

 あおり運転に遭遇した経験がある人は少なくないようです。2018年のチューリッヒ保険会社での調査(対象:全国2230人)によると、あおり運転を経験したことのあるドライバーは70.4%となっています。かなりの割合と言っていいでしょう。こういった状況を受け、あおり運転の厳罰化を盛り込んだ改正道路交通法が令和2年(2020年)6月30日に施工されました。では実際にあおり運転の加害者にはどのような特徴があるのでしょうか。改正道路交通法の内容と合わせて少し詳しく見てみましょう。

96%が男性 40代が最多

 去年までの2年間に摘発された、悪質なあおり運転の事例(全国で暴行や強要などの容疑を適用した悪質な事例133件)について警察庁が分析したところ、加害者の96%は男性で、78%は同乗者がいなかったとのことです。また、年齢別では40代が最多の27%、ついで20代22%、30代20%、50代17%という順番。また、あおり運転の事件現場としては77%が一般道でした。

 一方、免許保有者10万人当たりでの加害者の年代では、10代が0.57人で他の2倍以上となっています。また、10代が起こした事件では被害者数も1.13人と最多です。それぞれ2番目に多いのは20代。ここからわかることは、若い世代ほど危険な運転をする傾向があるということです。加害者があおり運転をおこなった理由としては、「進行を邪魔された(進路を譲らない、前の車が急ブレーキをかけたなど)」35%、「割り込まれた、追い抜かれた」22%、「車間距離を詰められた」8%、「クラクションを鳴らされた」5%の順で、その他「理由がない、はっきりしない」が8%となっています。検挙事例でドライブレコーダーの映像があった事例は64%、防犯カメラやスマートフォンなどの映像が証拠となったのは17%。検挙に際してはドライブレコーダーが重要な役割を果たしていることがわかります。

「妨害運転罪」は最高で5年以下の懲役

 こういったあおり運転による事故が相次いでいることを受け、改正道路交通法が令和2年(2020年)6月30日に施工されました。「妨害運転罪」が新設され、「他の車両等の通行を妨害する目的で、急ブレーキ禁止違反や車間距離不保持等の違反を行うと、懲役3年以下の懲役または50万円以下の罰金、また、妨害運転により著しい交通の危険を生じさせた場合は、最大で5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、さらに一回の違反で運転免許の取り消し」となりました。それなりに厳しい内容になっていると言えるでしょう。

 あおり運転の具体的な事例とは「車両の通行を妨害する目的で異常に接近する行為」、「急ブレーキや割り込みをしたりする行為」と規定されているほか、不必要なハイビームやクラクション、高速道路での低速走行、駐停車も対象となります。また、とくに「高速道路で他の車を停止」させた場合、上記の「著しい交通の危険を生じさせる行為」とされ、より重い罪に問われる事例となるようです。

煽り運転をされた時の対処法と防御策

 では実際にあおり運転をされたらどのような対処をすればよいのでしょうか。以下、ポイントをまとめてみました。

1.後ろにつかれたら
 車線変更して道を譲りましょう。張り合ったり逃げたりする必要はありません。先に行ってくれない場合、サービスエリアやパーキングエリアに入ってやり過ごしましょう(車線上や路側帯での停車は危険です)。

2.いきなり割り込まれたら
 速度を落として車間距離を長めにキープしましょう。ブレーキと同時にハザードランプをつけて、後方の車に減速を知らせることを忘れずに。

3.追い回されたら
 人目のある場所(サービスエリアやコンビニなど)に避難しましょう。ドアをロックし、ためらうことなく110番通報します。同乗者がいれば、走行中でも早い段階で通報してもらいましょう。

4.相手が降りてきたら
 絶対に表に出ないようにしましょう。ナンバーを控えて110番通報し、さりげなくスマホで録画します(相手にカメラを向けると逆上されるリスクがあるので注意)。挑発されてもとにかく我慢です。パトカーの到着を待ちましょう。

ドライブレコーダーは必須アイテム

 あおり運転を誘発しない運転も大事です。たとえば、右側の「追越車線」を走り続けると、交通を妨げます。また、車線変更や合流でブレーキを踏むのも危険です。ブレーキランプを見た後続車は急ブレーキと勘違いして冷静さを失う可能性があります。周りにストレスを与えない運転をすることがまずは大事です。

 あおり運転に備えるには、まずドライブレコーダーを導入し、ステッカーを表示しておくことが効果的です。ステッカーはある程度の抑止力が期待できます。警察庁もドライブレコーダーの装着を呼びかけています。先に示した通り、検挙事例でドライブレコーダーの映像があった事例は64%となっていますが、スマホなどの場合17%。ドライブレコーダーのほうが証拠能力は高いと言えます。

 ソニー損保が発表した2019年12月発表時の装着率は32.1%とやや低い印象がありますが、現状でもかなり売れている様子。前後録画可能な製品のほうがより良いでしょう。最近では360度記録可能な製品も人気とのこと。証拠が残らなければ、もし問題が発生した場合、時間的にも精神的もたいへんやっかいになります。事前に準備できることはしっかりやっておきましょう。

<参考サイト>
・『全国のドライバー2,230人に「あおり運転」実態調査』を実施│チューリッヒ保険会社
https://www.zurich.co.jp/aboutus/news/release/2018/0907/
・危険!「あおり運転」はやめましょう|警察庁
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/aori.html
・あおり運転、4割が1キロ超の挑発 22%は同乗者あり|朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASN6Q6WRYN6QUTIL034.html
・最強の「あおり運転」対策?ちょっぴり“オトナ目線”で余裕をもった運転を|アクサダイレクト
https://www.axa-direct.co.jp/miraidrive/archive/column/blue/2019/june.html
・危険な「あおり運転」を受けたら、どうすればよいのでしょうか?|JAF
http://qa.jaf.or.jp/accident/violation/05.htm
・ソニー損保、「2019年 全国カーライフ実態調査」|ソニー損保
https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/2019/11/20191128_01.html
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