テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
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DATE/ 2020.08.21

一年間に「落とし物」はどれぐらいあるのか?

昨年の落とし物の件数は?

 気をつけていても、ついついしてしまう落とし物。電車やレストランなどでうっかりして、慌ててしまった方も多いのではないでしょうか。このような「所有者の意図に反して手元から離れてしまったもの」を正確には遺失物といい、拾われて警察に届けられた遺失物を拾得物といいます。遺失物の統計は各都道府県で取られており、東京都のデータは警視庁がまとめています。

 この警視庁のデータによると、2019年に届けられた落とし物、つまり拾得物の総数は415万2千190件で、前年と比べると0.3%の増加でした。このうち現金は約38億8千423万円で、前年より1.2%増加しています。実は、なくしてしまったものを届け出る遺失届の総額は約84億4千万円にものぼるので、警察に届けられた現金は約46%。これを多いと見るか少ないと見るかは人それぞれですが、必ずしもすべてが持ち去られたわけではなく、落としたまま発見されていないものもあるはずなので、半数以上が警察を経て落とし主のもとへ返っていると考えられます。

 物品では、以下の5品目が多く警察に届けられています。(数字は単位「点」が総数、単位「%」が全体に占める割合)

1位:証明書類(免許証、クレジットカードなど)/約77万5千点・17.1%
2位:有価証券類(定期券、商品券など)/約55万8千点・12.3%
3位:衣類・履物類/約49万点・10.8%
4位:財布類/約37万2千点・8.2%
5位:かさ類/約35万点・7.7%

 落とし物の定番といえばかさのイメージですが、実際にはサイズが小さいカード状のもののほうが多いようですね。

落とし物の件数と傾向の変化

 それでは、落とし物の件数や品目の傾向に変化はあるのでしょうか。再び警視庁のデータから、10年間の推移を見てみましょう。

 2019年は、統計が残っている1989年以降で落とし物の総数が過去最多となっており、それ以前からも増加傾向にありました。中でも目立つのは、2015年ごろから証明書類の落とし物が急速に増えている点です。2014年には約35万点ほどだったのが、2019年には約77万点にまで増えています。この原因のひとつとして、2013年に東京でのオリンピック・パラリンピック開催が決定して以降、観光や就業のために日本へやってくる外国人が増加したことがあげられるでしょう。実際、近年ではパスポートや在留カードのような外国人の証明書類の落とし物が増えているのです。

 一方で、増えていそうに思えてあまり変化していないのが携帯電話類。ほぼ10万点から15万点の間を行き来しています。今ではほとんどの人が所有しているうえ、小さくてなくしやすいサイズ感の携帯電話類ですが、常に手離さず連絡を取ったり地図を見ていたりしているので、落とし物になることは少ないようです。

 また、落とし物はその時その時の世相を反映するもの。小型無人機のドローンが届けられるケースがあったほか、高齢者が使用する杖や入れ歯が届けられるケースが増加傾向にあります。

落とし物を拾ったら速やかに届け出を

 これだけ落とし物が増えている昨今、自分が落とし物をするだけでなく、落とし物を拾う可能性も高いですよね。落とし物をしてしまった場合には、心当たりのある施設に問い合わせるか、警察署に遺失届を出すことになりますが、落とし物を拾った場合にはどうすればいいでしょうか。

 まず駅やレストランなどの施設内で拾ったときには、その施設に届けましょう。それ以外の路上などで拾ったときは、警察に届けてください。大切なのは、施設内の場合は24時間以内、それ以外の場所の場合は1週間以内に届け出ること。これを過ぎると拾得者の権利を失ってしまいます。

 拾得者の権利には、次の3点があります。

1・報労金の請求:「お礼」がもらえる権利です。落とし物の価格の100分の5以上100分の20以下に相当する額を落とし主に請求できます。ただし、落とし物が落とし主に返還されてから1か月以内に請求しないとこの権利は使えなくなります。

2・提出などに要した費用の請求:落とし物を届け出るときなどに費用が発生した場合は、その額を落とし主に請求できます。ただし、この権利も落とし物が落とし主に返還されてから1か月以内に請求しないと使えなくなります。

3・所有権の取得:3か月の保管期間内に落とし主が現れなかった場合、拾ったものをもらうことができます。当然ながら、法律で所持が禁止されているものや個人情報に関わるものはもらえません。この権利は所有権を取得した日から2か月以内に引き取りをしないと使えなくなります。

 報労金の受け渡しをする場合は、取得者と落とし主の双方が氏名や連絡先の告知を受けます。このため、警察は拾得者の同意を得てから告知をします。告知を望まない場合は、権利の放棄も可能です。

 落とし物をしないに越したことはないですが、絶対にしないのは無理な話。してしまったときも拾ったときも、速やかに届け出ることを心がけてください。

<参考サイト>
・警視庁 遺失物取扱状況(令和元年中)
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/smph/about_mpd/jokyo_tokei/kakushu/kaikei.html
・nippon.com 東京での落とし物、19年は現金38億8400万円が警察に届く:拾得物総数は415万件
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00709/
・Itmedia 東京都内の落とし物、キャッシュレス化でも現金は過去最高39億円分
https://www.itmedia.co.jp/news/spv/2004/22/news039.html
・千葉県警 落とし物や忘れ物をしたり、拾ったら…
https://www.police.pref.chiba.jp/kaikeika/window_lost-05_04.html
・群馬県警 拾得者(落とし物を拾った方)の権利について
https://www.police.pref.gunma.jp/keimubu/04kaikei/isitubutu/3syuutoku.kenri/page.html

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