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DATE/ 2020.10.13

知能指数?「IQ」とはそもそも何なのか?

 「IQ」とはそもそも何なのでしょうか?まずは以下の文章を、1)~4)の順に読んでみてください。

1)「IQ」とは、「Intelligence Quotient」の略である。
2)「Intelligence Quotient」は、「知能指数」を意味する。
3)「知能指数」は、「“知能検査”によって得られる知能の程度を表す数値」と定義されている。
4)「知能検査」とは、「知能を客観的に測定するために開発された道具(尺度)」である。

つまり「IQ」とは!

 つまり「IQ」とは、「知的活動の“一部”を測定し、数値化したもの」であり、さらにあくまでも「一部の知能の出力結果であり、知能そのものではない」ともいえます。

 そもそも論として、知能には様々な定義があります。そして「知能検査」も1種類ではありません。

 したがって「IQ」も、「知能検査」で算出された値(ある知能検査によって測定された結果)であるということでしかありません。

「IQ」の算出方法

 「IQ」の算出方法は大別して、《年齢算出型IQ》と《偏差値型IQ》と呼ばれる2種類があります。それぞれの算出方法ならびに特徴は、以下となります。

《年齢算出型IQ》
年齢算出型IQ=精神年齢÷生活年齢(実年齢)×100

 精神年齢と実年齢を比較して算出します。“従来の知能指数”などとも呼ばれ、就学時に遅滞児を判別する方法として開発された歴史を持ち、改良されながら各国で使用されてきました。

 しかし《年齢算出型IQ》には、年齢によっては平均値が100とならなかったり、幼少期には極端に高い数値を示しやすくなったりする(例えば、生活年齢(実年齢)が4歳で検査結果が8歳の精神年齢を示していれば、IQは200を示す)といった問題点があります。

《偏差値型IQ》
偏差値型IQ=(個人の得点-平均点)÷標準偏差×一定値(*)+100
*各知能検査に応じて定められている標準偏差を正規化するための固定値

 算出した点数を正規分布に従うグラフにすると、標準偏差±2圏内に約95%の人が入る性質が知られています。この+2以上の領域が全人口の上位2%であり、IQ値にするとIQ130(標準偏差15)、IQ148(標準偏差24)となります。定義の正確性から、現在は《偏差値型IQ》が主流とりつつあるといわれています。

 なお、2種類の算出方法で示された「IQ」は、数値の持つ意味が異なるため、比較することはできません。

「EQ」「SQ」「AQ」とは何なのか?

 また「IQ」以外にも、「EQ」「SQ」「AQ」といった“指数”もあります。

 「EQ」は「Emotional Quotient」の略で、「心の知能指数」などと呼ばれています。

 アメリカの心理学者ダニエル・ゴールマン氏が世界的ベストセラー『Emotional Intelligence』(邦訳『EQこころの知能指数』)の中で、「自分の感情を認識し、自制する能力、他者を共感的に理解する能力など」を指し、「実社会の人間関係の中で重要な知性の一種」として説いています。

 「SQ」は「Social Quotient」の略で、「かかわり指数」などと呼ばれています。

 他者や社会とのかかわりを重視する価値観を指し、かかわる対象は、家族・友人・同僚などにとどまらず、ネット上の人間関係・社会全体・まだ見ぬ次世代など広範囲にわたります。他者とのかかわりを志向するほど幸福感が高いという相互協力的幸福感観に基づき、関西学院大学社会学部准教授の鈴木謙介氏が提唱しました。

 「AQ」は「Achievement Quotient」の略で、「成就指数」などと呼ばれています。

 知能と学力との比較を示す指数です。学力検査で得られた教育年齢を知能検査で得られた精神年齢で割ったもの(あるいは教育指数と知能指数の比)を100倍した値で表されます。教育の進度を数値化することができます。

「IQ」「EQ」「SQ」「AQ」は進化する!

 「IQ」を真の意味で教育に活用し、子どもたちの能力伸長援助を実践し続けている聖徳学園小学校校長の和田知之氏は、単なる“頭の良い子”ではなく豊かな才能と可能性を持った子どもたちの特徴として、以下の11点を挙げています。

 1)意欲が旺盛で、好奇心が強い、2)興味が多方面である、3)未知の内容(問題)や難しい問題に対する挑戦意欲がある、4)集中力があり、その持続力がある、5)目標に向かって努力しようとする粘り強さがある、6)自立心がある、7)場と時に応じた行動がとれる、8)失敗に落胆せず、困難を克服しようとする、9)個性が強く、豊かな心を持っている、10)ユーモアがあり、サービス精神がある、11)イニシアチブを取る――。

 和田氏の挙げた11点の特徴の対象者は子どもではありますが、大人であっても見習いつつ日々の知的活動に取り入れるべき価値ある特徴であるといえます。

 人間の知能は遺伝的要素だけで決定されることはなく、外部的な刺激や環境によっても大きく変化することが明らかになってきているといわれています。

 自身の特性を自覚しつつ、不足点や改善点を自覚したり強化したりすることによって、たとえ少しずつであったとしても自身をよりよく進化させていくために、「IQ」だけでなく、「EQ」「SQ」「AQ」といった全人格的な指数を意識し、活用してみてはいかがでしょうか。

<参考文献・参考サイト>
・「知能指数」『日本大百科全書』(肥田野直著、小学館)
・「知能指数」『旺文社 生物事典』(旺文社)
・IQについて | 一般財団法人高IQ者認定支援機構
https://www.hiqa.or.jp/about-iq
・IQの定義・性質、高い人の特徴、よくある質問とMENSA会員からの回答
https://shakelog.com/iq-faq/#IQ
・『教育心理学の理論と実際』(河村茂雄・武蔵由佳編著、図書文化社)
・「イー‐キュー【EQ】」[educational quotient]『デジタル大辞泉』(小学館)
・「EQ」[新語流行語]『イミダス 2018』(集英社)
・『EQこころの知能指数』(ダニエル・ゴールマン著、土屋京子訳、講談社)
・「SQ」[心理学]『イミダス 2018』(松田英子著、集英社)
・「SQ(エスキュー)」[イミダス編 文化・スポーツ]『イミダス 2018』(集英社)
・「エー‐キュー【AQ】」『デジタル大辞泉』(小学館)
・「エーキュー」[カタカナ語]『イミダス 2018』(集英社)
・『単なる偏差値エリートで終わらせない最高の育て方』(和田知之著、メディアソフト)
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