テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.01.03

身近な「特定外来生物」とその脅威

 外来生物というと、数年前にヒアリが国内で発見されたことは大きな話題となったことを覚えている方もいるのではないでしょうか。普通に生活している中で外来生物がもたらす影響を意識することはあまり多くないですよね。しかし、実は私たちの身近にも色んな外来生物がいて、意識していないところでさまざまな影響があるのです。今回はそんな中でも特定外来生物について調べてみました。

特定外来生物とは?

 外来生物とは外来種ともいい、もともと日本にいなかったものの人間の活動によって日本に持ち込まれた生物のことをいいます。その中でも日本固有種の生態系、人の生命や身体の健康、農林水産業の3つに大きな影響を与えるものは、特定外来生物として区分され、その扱いは法律で規制されています。今現在、ほ乳類や鳥類などをはじめ、魚、虫、植物など156種類の動植物が特定外来生物に指定されています。具体的にどんな動植物がいるのか、私たちに身近な動物を紹介しましょう。

・アライグマ

 アニメのキャラクターでお馴染みのアライグマですが、実は特定外来生物に指定されていることはあまり知られていないかもしれません。もともとは北米原産で、1980年代に観賞用やペット用として多く日本に持ち込まれましたが、飼えなくなって無責任に捨てられたり逃げ出したりして、野生化したアライグマが増えてしまいました。

 こうしたアライグマは、スイカやカボチャ、果実などを食べてしまう農作物への被害や、旺盛な食欲で魚を食べてしまい生態系への悪影響の原因となってしまっています。さらには、日本国内では未確認ですが北米では感染症の媒介になる社会問題が起きているので、私たち人間へも影響を及ぼす可能性がある、危険な動物なのです。

・ブラックバス

 釣りをする人には馴染みのあるブラックバスの通称で知られるオオクチバスも特定外来生物に指定されています。北米原産で、食用、釣り用の魚として持ち込まれて各地に放流されましたが、在来の魚を食べて生態系を壊したり、漁業に影響を及ぼす恐れがあることが分かってから、その危険性が注目されるようになりました。全国的に分布しているため身近な存在ではありますが、特定外来生物である以上その取り扱いには注意が必要になります。

・ヒアリ

 南アフリカが原産のヒアリで、1940年代頃から徐々に世界に広がり、2017年には日本で初めて発見されました。ヒアリは攻撃性が高く、刺されると焼けるような痛みとかゆみ、そして膿の症状が現れますが、人によってはじんましんを起こしたり、最悪の場合アナフィラキシーショックによって死に至る危険も。発見された以降、度々国内で発見されたという情報が続々と入っているので、まだまだ油断はできない状態が続いています。

外来生物法とは?

 こうした特定外来生物を放っておくと、日本固有種の生態系、人の生命や身体の健康、農林水産業に影響を及ぼす恐れがあります。そのため、外来生物法によって、輸入の原則禁止、放出の原則禁止、許可のない引き渡しや販売の原則禁止、許可を得た特定飼養等施設以外での飼育や保管・運搬の原則禁止が定められているのです。

 外来生物法に違反することは日本固有種の生態系、人の生命や身体の健康、農林水産業へ大きな影響を与えることにもなるため、個人であれば最大3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金が課せられる可能性があります。身近にいる生き物だからと油断して、無意識のうちに違反してしまうこともあるので充分に気をつけましょう。

 最近のトピックとしては、アカミミガメ(ミドリガメ)やアメリカザリガニは生態系への影響が大きいことが注視されていて、一部報道では特定外来生物への指定が検討されているというものがあります。環境省はそうした事実はないと否定していますが、従来のルールを柔軟にさせ、何らかの規制をするべきだという方針で検討が進められています。ペットとして飼っている人も外来生物法に抵触することはないので、無闇に捨てたりしないでください。

 特定外来生物は意外と身近なところにもいるもので、甚大な影響を引き起こしかねないことをご理解いただけたかと思います。しかし、こうした外来生物は人間の都合で国内に持ち込まれて厄介者に認定されてしまったものも少なくありません。国が定めたルールに従い、いたずらに数を増やさないように心がけるようにしましょう。

<参考サイト>
・日本の外来種対策|環境省
http://www.env.go.jp/nature/intro/index.html
・外来生物が及ぼす被害|東京都
https://gairaisyu.metro.tokyo.lg.jp/species/damage.html
・特定外来生物とは何か?|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/old_manual/manual_tokutei_gairai_old/data1.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

急成長するインドネシアとトルコ、その理由と歴史的背景

急成長するインドネシアとトルコ、その理由と歴史的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(3)インドネシアの成長とトルコの外交力

グローバル・サウスの中でも高度経済成長を遂げているのがインドネシアだ。長期のスカルノ時代とスハルト時代を経てその後に民主化が進んだ、東南アジアで最大のイスラム教国である。また、トルコは多国間に接する地理的特性と...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/17
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
2

多神教の日本と民主主義…議論の強化と予備選挙の導入を

多神教の日本と民主主義…議論の強化と予備選挙の導入を

民主主義の本質(4)日本の民主主義をいかに強化するか

民主主義の発展において、キリスト教のような一神教的な宗教の営みがその礎にあった。では、そうした宗教的背景をもたない日本で、民主主義を育てるにはどうしたらいいのか。人数が多ければ正しいというのは「ポピュリズム」の...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/16
橋爪大三郎
社会学者
3

26歳で老中首座…阿部正弘が幕末の動乱期に担った使命とは

26歳で老中首座…阿部正弘が幕末の動乱期に担った使命とは

徳川将軍と江戸幕府~阿部正弘編(1)若き老中首座・阿部正弘の使命

阿部正弘は幕末の若き老中首座として、徳川家斉・徳川家慶・徳川家定の時代を支えた。黒船で泰平を揺るがしたペリーが再来し、日米和親条約が結ばれ、鎖国政策は終わりを告げる。近代日本への舵取りを果たしたと評価される阿部...
収録日:2021/03/29
追加日:2024/03/09
4

きわめて特異的な「ウイルスと宿主の関係」

きわめて特異的な「ウイルスと宿主の関係」

ウイルスの話~その本質と特性(1)生物なのか、そうではないのか

ウイルスとはいったい何なのか。彼らは生物とは異なり、自分でエネルギーを生み出して生存するわけではなく、遺伝情報のみを持ち、他の生物の機能を利用して自らを複製している。そうした「ウイルスと宿主の関係」はきわめて特...
収録日:2020/02/17
追加日:2020/03/12
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長
5

なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る

なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る

チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由

「心理的安全性」は近年もっとも注目されるビジネスバズワードの一つともいわれている。その背景には、コロナ禍におけるリモートワークの増大、社会全体が未来予測の難しい「VUCAの時代」に入ったことがある。職場環境が多様に...
収録日:2022/04/26
追加日:2022/07/23
青島未佳
一般社団法人チーム力開発研究所 理事