テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.08.21

中国旅行者が爆買いしている「12の神薬」って!?

 中国人観光客が多いのは春節かと思いきや、2014年通年で見ると、春節前後の1月が15万5605人、2月が13万8236人に対して、最も多いのは7月で28万1309人。次いで8月の25万3802人、9月の24万6105人と夏休みがピークになっている。

 中国人旅行者は帰国後、親戚や友人にお土産を配るという習慣があるため「菓子類」「化粧品」「医薬品」「日用雑貨」などのまとめ買いが多いことから、この秋まで経済効果は期待できそうだ。

 中国観光客が日本のドラッグストへ殺到するのにはもうひとつ理由がある。

 さまざなWEBニュースで拡散した「日本観光、この12種類の『神薬』は買い!」と題した記事がその発端にある。

 この記事は、昨年秋にレコードチャイナや、中国の大手ポータルサイト「捜狐(SOHU)」より発信さたものだ。  この情報は今もなお拡散し続けており、今年の夏休みから秋にかけても、中国観光客の爆買い優先商材になっている。

 この動向がどこまで続くか怪しくなってきているが、「おむつ」爆買いと同様のケースとして学ぶのであれば、中国における口コミからWEB情報は要チェックで、店舗であれば豊富な品揃えにしておくか、メーカーであれば中国国内から口コミを仕掛けていくことで、大きな売上につながる可能性を秘めている。

 これまで話題となってきた中国人旅行者による「温水洗浄便座」から「炊飯器」など家電に代表される大きな買い物もさることながら、日本の「神薬」はリストアップされた医薬品メーカーにとってかなりの経済的インパクトがあったのではないだろうか。  また「日本観光、この12種類の『神薬』は買い!」にリストアップされた商品を別の視点から見てみると意外な気づきもある。

 12種類の『神薬』をみてみると、

1.小林製薬の「アンメルツ」:消炎鎮痛剤
2.小林製薬の「サカムケア」:液体絆創膏
3.小林製薬の「熱さまシート」:冷却剤
4.小林製薬の「ニノキュア」:外皮薬
5.小林製薬「命の母」:女性保険薬
6.エスエス製薬「イブクイック頭痛薬」:頭痛薬
7.エスエス製薬「ハイチオールC」:美白効果剤
8.皇漢堂製薬「ビューラック」:便秘薬
9.参天製薬の「サンテ ボーティエ」:目薬
10.大正製薬「口内炎パッチ」:口腔炎症薬
11.久光製薬「サロンパス」:湿布薬
12.龍角散「龍角散ダイレクト」:のど薬

 意外にニッチ、そして圧倒的な小林製薬推しというリストに並び替えることができるのだ。

 また、このリストアップにおいて、日本で好調なドリンク剤や胃腸薬、風邪薬が入ってないことから、薬効というよりは「中国では作られていない製品」という見方もできるかもしれない。

 例えば、液体絆創膏「サカムケア」のランクインは中国国内事情にあり、本来の傷口保護とは別に、キッチン用洗剤などの品質からくる手荒れ対策に効果的という口コミがもとになっているようだ。

 小林製薬によると、液体絆創膏「サカムケア」の売上げは5.43倍増、「ニノキュア」は52%増、「熱さまシート」は37%増となっており、2015年4~6月期の売上は前年同期と比べて5倍超に膨らみ、売上げの7割が中国人観光客らのインバウンド需要であることを明らかにしている。

 競合が多い定番薬剤をねらわず「新市場を開拓し、そこで高いシェアを獲得すること」を戦略とした小林製薬のビジネススタイルが実りを得たといってよいだろう。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(1)ChatGPT生みの親の半生

ChatGPTを生みだしたOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの進化・発展によって急速に変化している世界の情報環境だが、今その中心にいる人物といっていいだろう。今回のシリーズでは、サム・アルトマンの才能や彼をとりまくアメ...
収録日:2024/03/13
追加日:2024/04/19
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
2

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元

日本語の発音は、漢字到来以来一千年の歴史を通してどう変わってきたのか。また、なぜ日本語は「文明語」として世界に名だたる存在といえるのか。二つの疑問を解き明かす日本語学者として釘貫亨氏をお招きした。1回目は古代日本...
収録日:2023/12/01
追加日:2024/03/08
釘貫亨
名古屋大学名誉教授
3

歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える

歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える

運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」

歴史における「運」とはどういうものだろうか。例えば、富裕と貧困という問題について、「運」で決まるのか、あるいは「運」とは異なる努力、教養、道徳などの要素で決まるのかという点でも、思想家たちの考え方は分かれる。第1...
収録日:2024/03/06
追加日:2024/04/18
山内昌之
東京大学名誉教授
4

急成長するインドネシアとトルコ、その理由と歴史的背景

急成長するインドネシアとトルコ、その理由と歴史的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(3)インドネシアの成長とトルコの外交力

グローバル・サウスの中でも高度経済成長を遂げているのがインドネシアだ。長期のスカルノ時代とスハルト時代を経てその後に民主化が進んだ、東南アジアで最大のイスラム教国である。また、トルコは多国間に接する地理的特性と...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/17
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?

ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?

和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1

日本古来の詩の形式である和歌。しかし、その中身について詳しく知っている人は少ないのではないだろうか。渡部泰明氏が和歌のレトリックについて解説するシリーズレクチャー。第一弾である今回は枕詞についてで、その知られざ...
収録日:2019/03/11
追加日:2019/06/15
渡部泰明
東京大学名誉教授