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DATE/ 2022.07.13

お弁当に注意!食中毒予防の三原則

 食中毒の要注意時季をご存じでしょうか。夏季は細菌による食中毒が増え、冬季はウイルスによる食中毒が増えるため、夏と冬は食中毒の要注意時季といわれています。

 特に、作ってから食べるまで時間がかかるお弁当は、どうしても食中毒の危険性が高くなってしまいます。

 そこで今回は、「食中毒予防の三原則」と一緒に「お弁当作りの食中毒対策9ポイント」、さらに主な食中毒の原因菌や予防法などについて、紹介したいと思います。

食中毒予防の基本「食中毒予防の三原則」

 まずは、食中毒予防の基本といえる「食中毒予防の三原則」をしっかりとおさえましょう。「食中毒予防の三原則」は、食中毒の原因菌やウイルスを「付けない、増やさない、やっつける」です。

(1)食中毒の原因菌やウイルスを「付けない」
 食中毒の原因菌やウイルスを食べものにつけないように、調理前には必ず手を洗いましょう(参考:後述の「正しい手洗い」)。さらに、生肉を扱った後に野菜を扱うなど異なる食材を扱ったり、調理中に食材以外の物に触ったりした場合など、その都度手洗いを行ってください。また、生肉や魚などから加熱しないで食べる野菜などへ細菌が付着しないように注意し、調理器具やお弁当箱など食べ物に直接触れるものを清潔に保ちましょう。

(2)食中毒の原因菌やウイルスを「増やさない」
 細菌の多くは、10度以下で増殖のペースがゆっくりとなり、マイナス15度以下で増殖が停止します。そのため、低温で保存することが重要です。肉や魚といった生鮮食品やお総菜などは、購入後できるだけ早く冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。また、調理後もすぐに食べきれない場合は常温保存を避けて冷蔵庫や冷凍庫で保存してください。ただし、冷蔵庫に入れても、細菌はゆっくりと増殖しています。食材の買いだめや大量の作り置きなどを控え、新鮮な食材のサイクルを作ることも大切です。

(3)食中毒の原因菌やウイルスを「やっつける」
 多くの細菌やウイルスは加熱によって死滅するため、表面だけではなく中心まで十分に加熱することが大切です(十分な加熱の目安:中心部を75度で1分以上加熱)。また、調理器具にも細菌やウイルスは付着します。調理器具やお弁当箱など食べ物に直接触れるものは使用の都度洗剤でよく洗い、定期的に熱湯や台所用殺菌剤などで殺菌してください。

「お弁当作りの食中毒対策9ポイント」

 次に、「お弁当作りの食中毒対策9ポイント」をみてみましょう。

(1)「正しい手洗い」を行う
 「正しい手洗い」の一例として、農林水産省が公開している方法を紹介します。まず手洗いの前に指輪やつけ爪、腕時計、アクセサリー等をしている場合は外します。そして、(1)流水で手をぬらす、(2)せっけんをつけて十分に泡立てる、(3)手のひらと甲をよく洗う、(4)指の間をよく洗う、(5)爪の間も十分に洗う、(6)親指は反対の手でねじるようにして洗う、(7)手首も忘れずに洗う、(8)蛇口をせっけんで洗い流してから流水で手をすすぐ、(9)清潔なタオルなどで水気を拭き取る――です。

(2)おかずは中まで十分に加熱する
 前述したとおり、多くの細菌やウイルスは加熱によって死滅するため、中心部まで十分に加熱することが大切です(十分な加熱の目安:中心部を75度で1分以上加熱)。

(3)水気を防ぐ
 お弁当の傷み(腐敗)の最大原因は、余分な水分です。水気の多いおかずは避けることがベストですが、削り節やすりごまなどのあえごろもに余分な水分を吸わせるなどのアレンジもオススメです。なお、自然解凍OKの冷凍枝豆などを入れる場合は、ラップに包んで密閉するなど、解凍時の水分が他の食材にしみ出さないようにしてください。

(4)ミニトマトのへたは取る
 新鮮なミニトマトは水気が出にくく、生食でも食中毒を起こしにくい優秀なお弁当食材です。切らなければそのままお弁当に入れてもOKです。下準備として、細菌の付きやすいへたを取り、流水でしっかり洗って水気を拭き取ります。

(5)作り置きにも再度火を通す
 作り置きのおかずは必ず再加熱しましょう。なお、冷蔵おかずは24時間以内、冷凍おかずは調理日も含めて1週間以内で使い切るように心がけてください。

(6)加熱後の食品は素手で触れない
 加熱後の食品は、素手で触れないように注意してください。そのため、おひたしのような加熱後に手で水気を絞るようなメニューは避けましょう。おにぎりなどご飯に触れる料理も、ラップや料理用の使い捨てビニール手袋などを活用してください。

(7)十分に冷ましてから詰める
 ご飯やおかずは十分に冷ましてから、お弁当箱に詰めましょう。

(8)ソース類は別添えする
 ソースやしょう油、ケチャップやドレッシングなどをかけてしまうと、水分が多くなっています。また、特にマヨネーズなどソース類そのものが痛みやすいものもあります。必要な場合は小分けになっている使い切りタイプなどを別添えしてください。

(9)保冷剤や保冷バッグを活用する
 保冷剤や保冷バックなども適宜活用してください。ちなみに、冷気は下に降りるため、保冷剤はお弁当の上に置くと効果的です。

食中毒の原因となる主な細菌とウイルス

 最後に、特にお弁当と関係の深い、食中毒の原因となる主な細菌とウイルスについて、原因食品や予防方法などを紹介します。

「黄色ブドウ球菌」
主な生息場所:手指の傷口、のど、鼻の中
主な原因食品:おにぎり、お弁当、サンドイッチ、和生菓子
主な症状:吐き気、嘔吐(激しい)、腹痛、下痢
潜伏期間:1~5時間(平均3時間)
予防方法:調理前および調理中にも「正しい手洗い」を行う。手指に傷があるときは食品に直接触れないようにする。

「カンピロバクター」
主な生息場所:鶏などの動物の腸の中
主な原因食品:生の食肉(特に鶏肉)、鶏肉から汚染を受けた食品(特に生野菜など)
主な症状:下痢(水様)、発熱、腹痛、吐き気
潜伏期間:1~7日(平均2~3日)
予防方法:食肉の生食は避け、十分に加熱する。食肉を扱った器具は都度洗浄・消毒のうえ乾燥させる。

「サルモネラ属菌」
主な生息場所:牛・豚・鶏などの動物の腸の中
主な原因食品:卵かけご飯、親子丼、オムレツ、洋菓子(ケーキなど)
主な症状:下痢、腹痛、発熱(高熱)
潜伏期間:8~72時間(平均12時間)
予防方法:卵は冷蔵庫で保管し、割ったらすぐに調理する。卵や食肉は十分に加熱する。

「腸管出血性大腸菌(O157やO111など)」
主な生息場所:牛などの動物の腸の中
主な原因食品:牛の生レバー、ユッケ、ローストビーフ、牛肉から汚染された食品
主な症状:下痢、腹痛、嘔吐
潜伏期間:3~5日
予防方法:食肉の生食は避け、十分に加熱する。食肉を扱った器具は都度洗浄・消毒のうえ乾燥させる。

「ノロウイルス」
主な生息場所:人の腸の中、カキなどの二枚貝
主な原因食品:生ガキ、加熱不十分な貝料理、ウイルスの汚染を受けた食品
主な症状:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢(風邪に似た症状)
潜伏期間:24~28時間
予防方法:調理前および調理中にも「正しい手洗い」を行う。二枚貝を扱った器具は都度洗浄・消毒し、乾燥させる。

「ウェルシュ菌」
主な生息場所:人や動物の腸の中
主な原因食品:大量に調理されたカレー、シチュー、煮物、スープ
主な症状:下痢(軽症)、腹痛
潜伏期間:6~18時間(平均10時間)
予防方法:大量の食品を加熱調理して保存する場合は、急速に冷却した後小分けして冷蔵庫や冷凍庫で保存する(室温で長時間放置しない)。保存した食品を食べる際は、再加熱を十分に行う。

「セレウス菌」
主な生息場所:自然界に広く分布し、特に穀類や豆類を汚染
主な原因食品:ご飯や麺類など穀物を用いた料理
主な症状:吐き気、嘔吐(比較的軽症)
潜伏期間:30分~3時間
予防方法:ご飯や麺類の作り置き(常温)を避ける。保存する場合は、小分けして急速に冷却した後、冷蔵庫や冷凍庫で保存する。

 いかがでしたでしょうか。今日からのお弁当ライフに役立つ知識はあったでしょうか。ただしい知識の活用で、安全でおいしいお弁当を味わってほしいと思います。なお、上記で紹介したような食中毒の主な症状が出た場合はすぐに病院に行き、正しい治療を受けてください。

<参考文献・参考サイト>
・『傷みにくいお弁当&作りおきおかず』(武蔵裕子監修・料理、成美堂出版)
・食中毒 - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html
・食中毒予防の原則と6つのポイント | 政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/featured/201106_02/
・細菌・ウイルスによる食中毒│消費者
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/microorganism_virus/
・正しい手洗いとは?│農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/handwashing/tadashii.html

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