テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.11.04

道路がアスファルトでできている理由

 「道路」を思い浮かべてみると、黒いアスファルトが浮かぶのではないでしょうか。国土交通省によると日本の道路の90%以上はアスファルトでできています。一方、世界に目を向けると、アスファルトの割合はもう少し低いようです。特に韓国ではアスファルトは40%弱、およそ60%程度はコンクリートで舗装されています。なぜ日本の道路はアスファルトが多いのでしょうか、またアスファルトとコンクリートの道路はどのような違いがあるのでしょうか。

アスファルトは初期費用が安くて管理しやすい

 日本の道路でアスファルトが多い理由は、まずは初期の工事費用が安く済み、工事後もすぐに利用可能になるということが一番大きいようです。また修復・修繕、維持などの管理がしやすい点もアスファルトのメリットです。一方、コンクリートはアスファルトに対して初期費用が高く、道路が固まって車が走れるようになるまでには1週間ほどかかったりします。

 戦後、日本では道路を整備していく必要に迫られます。そうして1955年以降、アスファルト舗装が伸びていきます。特に1964年の東京オリンピックを控えたころには、一気に道路を整備する動きが出てきます。急いで整備するには初期費用が安くてすぐに使えるようになるアスファルトの方が選ばれたようです。これ以前の道路は国産原料で作ることができるコンクリートも多かったようですが、やはり急ピッチでの道路整備ではアスファルトに分があったようです。こうした流れを受けて、日本の道路の多くはアスファルトで整備されています。

今後はコンクリート道路や新素材に変わる可能性もある

 ただしこれは、アスファルトがコンクリートに対して優れているということではありません。コンクリートはアスファルトに比べて耐久性が高く、その後の維持メンテナンス費用が安い点が特徴です。また、路面温度に関しても、コンクリートはアスファルトに対して5℃から10℃低くすることができます。この点は特に都市部でのヒートアイランド現象に対する有効な対策となるでしょう。また、従来はアスファルトに比べてコンクリートは、騒音や振動が大きい点が問題として残っていました。しかし、これを解消する技術も昨今開発されています。

 このようにコンクリートは、初期費用がかかる点、工事後使用できるようになるまでに時間がかかる点、またあとで工事しにくい点といった3つの問題点を除けば、優れた素材であることがわかります。またこの問題点も解決に向かっているようです。コンクリート舗装に必要な費用はこの10年間で半減しています。またアスファルトは原油から生成されることもあって100%が輸入です。原油は生産量や地政学的要素に大きく影響されることから、近年価格が高騰しています。これに対してコンクリートの原料は国内で調達可能であることから、たいへん安定しています。

 実際に数は少ないながらもコンクリートの道路は利用されています。たとえば石川県小松市の国道8号、愛知県名古屋市内の国道22号などで採用されたようです。この先、ほかの道路でも採用されていく可能性はあります。また、最近ではオランダの企業がリサイクルされたプラスチックでできた道路を新しく開発しています。これであれば軽量で工期も短く、温度も-40度から80度まで耐え、さらにケーブルや排水管や雨水管などを設置する地下空洞も簡単につくれるとのこと。まだ検証が必要な要素は多く残されているようですが、もしかしたらそのうち、プラスチックの道路が広がる日も来るのかもしれません。

<参考サイト>
道の歴史│国土交通省
https://www.mlit.go.jp/road/soudan/soudan_10a_02.html
日本における道路技術の発達 II|IDE-JETRO
https://d-arch.ide.go.jp/je_archive/english/society/wp_unu_jpn28.html
長寿命化のための適材適所の舗装技術『コンクリート舗装の普及に向けて』(平成28年度 舗装に関する講習会)|公益財団法人日本道路協会
https://road.or.jp/event/pdf/201609151.pdf
安全な道路ってなに?アスファルト道路とコンクリート道路の違いとは|生活110番
https://www.seikatsu110.jp/library/garden/gd_asphalt/16593/
同じ場所を何度も工事する理由とは? 道路工事の裏事情と舗装技術|GAZOO
https://gazoo.com/column/daily/17/03/29/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

民主主義の本質(5)民主主義を守り育てるために

ポピュリズムや権威主義的な国家の脅威が迫る現在の国際社会。それに対抗し、民主主義的な社会を堅持するために、国際社会の中で日本はどのように振る舞うべきか。議論を進める前提として大事なのは「歴史から学ぶ」ことである...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/23
橋爪大三郎
社会学者
2

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か

ルネサンス美術とはいったい何なのか。これを考えるためには、なぜその時代に古代ギリシャ、ローマの文化が復活しなければならなかったのかを考える必要がある。その鍵は、ルネサンス以前のイタリアの分裂した都市国家の状態や...
収録日:2019/09/06
追加日:2019/10/31
池上英洋
東京造形大学教授
3

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(1)ChatGPT生みの親の半生

ChatGPTを生みだしたOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの進化・発展によって急速に変化している世界の情報環境だが、今その中心にいる人物といっていいだろう。今回のシリーズでは、サム・アルトマンの才能や彼をとりまくアメ...
収録日:2024/03/13
追加日:2024/04/19
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
4

新宿の歴史…かつては馬糞臭い宿場町だった「内藤新宿」

新宿の歴史…かつては馬糞臭い宿場町だった「内藤新宿」

『江戸名所図会』で歩く東京~内藤新宿(1)内藤新宿の誕生と役割

江戸時代後期に書かれた地誌『江戸名所図会』(えどめいしょずえ)をひもとくと、江戸時代の街の様子や人々の暮らしぶりが見えてくる。今回は、五街道の宿場町として重要な役割を果たした「内藤新宿」を取り上げ、新宿のかつて...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/04/21
堀口茉純
歴史作家
5

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元

日本語の発音は、漢字到来以来一千年の歴史を通してどう変わってきたのか。また、なぜ日本語は「文明語」として世界に名だたる存在といえるのか。二つの疑問を解き明かす日本語学者として釘貫亨氏をお招きした。1回目は古代日本...
収録日:2023/12/01
追加日:2024/03/08
釘貫亨
名古屋大学名誉教授