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DATE/ 2023.03.12

「石油王」は存在する?どんな人なのか?

石油王とは何者なのか?

 ほしいものが高価だったり、ほしいものがたくさんできたりしたとき、「自分が石油王だったら買えるのに」とぼやいてしまうこと、ありますよね。望みのままになんでも買える「石油王」とは、一体どんな人物なのでしょうか。

 石油王は“王”とついていますが、どこかの国の王様というより、「石油を掘り当てて巨万の富を得た大富豪」であると一般的に考えられています。親しみやすいフリーのイラストを配布している素材サイト・いらすとやで石油王を検索すると、金のアクセサリーを身につけてサングラスをかけたアラビア風ファッションの男性のイラストがヒットします。まさにこれが、石油王のイメージでしょう。確かに、石油が採れる国といえばまず中東地域が思い浮かびますよね。

 しかし、石油などのエネルギー資源を扱うBP社が2021年に発表したデータによると、世界の原油(製品化される前の状態の石油)産出量第1位はアメリカとなっており、第2位が中東のサウジアラビアです。さらに第3位はロシア、第4位はカナダで、第5位に中東のイラクとなっており、決して中東地域だけ産出量が多いわけではありません。それに、たとえ石油を掘り当てたとしても本当に大富豪になれるのでしょうか。

実際に石油で大富豪になれる?

 石油は燃やすことでエネルギーとして使用できますが、これと同時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出します。また、埋蔵されている石油は有限なので、いつか枯渇してしまいます。このため、近年は世界的に脱石油の動きが活発になっており、今から石油王になることは難しいと考えられます。

 しかし19世紀には石油の消費量が急速に拡大し、この時流に乗って大成功を収め、実際に石油王と呼ばれた人物がいます。それが、元祖・石油王のジョン・ロックフェラーです。1839年、アメリカに生まれたロックフェラーは、当時まだ需要が少なかった石油の販売を若い頃から積極的に行いました。そして、石油の消費量が伸びてくるとスタンダード・オイル社を設立し、石油の採掘だけでなく精製から流通までの経路をしっかり押さえて巨万の富を築いたのです。

 ロックフェラーは時流を読む力に優れていたといえるでしょう。しかしそれ以上に、計画的な事業展開をしたことが石油王の座につながったと考えられます。なぜなら、ロックフェラーは油田開発を重視せず、石油の流通に力を入れて事業を発展させたからです。「油田で一攫千金」というギャンブルには出なかったのですね。石油王というと石油を掘り当てた人というイメージが強いですが、実際の石油王は「石油関連のビジネスで成功をおさめた実業家」と考えるほうが適切といえます。

実在する石油王たち

 ロックフェラーは石油王の“元祖”とご紹介したとおり、世界にはほかにも石油王が存在します。石油王と呼ばれる人物の顔ぶれを見てみましょう。

 アーマンド・ハマー:1898年にアメリカで誕生。ソビエト連邦(現在のロシア)での貿易会社経営の経験を生かし、石油会社オクシデンタル・ペトロリウムを世界的企業に成長させて石油王となりました。医師の資格を持っているため、「ドクター・ハマー」の愛称で親しまれました。

 ロマン・アブラモヴィッチ:1966年にソビエト連邦で誕生。石油会社シブネフチのほか、自動車などの販売会社ロゴヴァスやアルミニウム会社ルサールなどの経営を行って資産を築きました。幼少期に両親を失っていますが、逆境に負けず石油王に上り詰めたのです。

 モハメド・アムディ:1946年にエチオピアで誕生。エチオピアとサウジアラビアの国籍を持ち、モロッコ・サウジアラビア・スウェーデンに石油の精製施設を築いた石油王です。個人投資家としても精力的に活動し、母親の故郷であるエチオピアには特に力を入れて投資しています。

 フォロルンショ・アラキジャ:1951年にナイジェリアで誕生。ファッション関連会社で築いた資産を元手に石油会社ファムファ・オイルを設立し、成功をおさめて石油王の座を手にしました。石油とファッションの両方で業績を上げた、ナイジェリア初の女性億万長者です。

 望むものはすべて買える石油王ですが、財産を築いたあとは慈善事業に乗り出すことも少なくありません。たとえばロックフェラーは事業を引退後、ロックフェラー財団を築いて学校設立や公衆衛生向上のために多くの寄付を行いました。他人を大切に思う心こそが、石油王になれる一番の条件なのかもしれませんね。

<参考サイト>
・みんなのマネ活 石油王とは|大富豪の人生と、そこから学ぶ投資のコツをご紹介!
https://www.rakuten-card.co.jp/minna-money/securities/investment_other/article_2211_00200/?l-id=top_recent_02
・いらすとや 石油王のイラスト
https://www.irasutoya.com/2017/01/blog-post_52.html
・ねとらぼ 「原油生産量の多い国」ランキングTOP30! 1位はアメリカ【2021年最新】
https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/357205/
・グリラボ 【図解あり】脱炭素とは何か?どこよりもわかりやすく簡単に解説!
https://gurilabo.igrid.co.jp/article/1802/
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