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DATE/ 2015.10.22

FXも危険!日本人を蝕む「ギャンブル依存症」の実態

 「ギャンブル依存症」とは、ギャンブルをやめようという意志があってもやめられない状態、家族に隠れ、借金を重ねてでもギャンブルを続けてしまうといった状態を指す。ギャンブル依存症は、れっきとした「病気」で、北里大学にはギャンブル障害専門外来があるほどだ。

 ドーパミンの制御が利かなくなっていることが多く、本人の意思や根性でどうにかなるものではない。適切な対応と治療が必要で、自殺のリスクが高い深刻な病気と考えたほうがよい。もし周囲にギャンブル依存症だと思われる人がいたら、専門の病院か、後述する自助グループ、ギャンブラーズ・アノニマス(GA)に連れて行ったほうがよい。


日本はギャンブル依存症がダントツで多い

 2014年の厚生労働省研究班の調査では、全国に536万人もの病的ギャンブラーがいるという推計結果が出た。日本の成人の4.8%、およそ20人に1人にギャンブル依存症の疑いがあるのだという。アメリカ・ルイジアナ州2002年調査の1.58%、フランス2008年調査の1.24%など諸外国の同様の調査と比べると、ダントツに多い。

 カジノがない分、日本ではギャンブルが盛んではないように見えるかもしれないが、実はそんなことはまったくない。むしろ、ギャンブル王国と呼んでよいほど、病的ギャンブラー、ギャンブル依存症に関しては深刻な状態なのである。

 大王製紙元会長背任事件など、ギャンブル依存症が原因となった社会的事件が多いのも、ギャンブル依存症が日本に多いからだと考えれば納得がいく。


身近で気軽なギャンブル王国・日本

 なぜ日本にそれほどギャンブル依存症が多いかといえば、身近で気軽なギャンブルが多いからだ。パチンコや、競馬、競輪、競艇、オートレースなどの公営競技、宝くじなど、街中にギャンブルが溢れており、簡単に手を出すことができる。借金をしたその足ですぐにギャンブルに向かうことができる。日常にこれほどギャンブルが存在する国は、世界には少ないのだ。最近では、FXも危ないという。もちろんFXはギャンブルではないが、借金をしてまで投資をするようになれば、ほぼギャンブルと同じである。


ギャンブル依存症への理解が遅れている

 ギャンブルが多い一方で、日本ではギャンブル依存症への理解・対策は遅れている。どうしても「どうしようもない人」「だらしがない人」と思われ、世間から隠されがちである。しかし、それでは絶対に治らない。ギャンブル依存症は、グループセラピーなどの助けを借りながら治していく必要がある。

 グループセラピーとは、冒頭で触れたGAなどの自助グループが行っているもので、同じような症状を持つ人たちとミーティングし、自分の状況や症状を理解しやすくして、回復へ向けて共に歩んでいく方法だ。

 今後、日本にカジノができれば、ギャンブル依存症はより大きな問題として注目されるに違いない。ギャンブル依存症大国を脱するためには、運営側がしっかりと対策するとともに、私たち一人ひとりが、ギャンブル依存症への理解を深める必要があるだろう。周囲にギャンブル依存症の疑いのある人がいる方、さらに詳しく知りたい方は、田中紀子『ギャンブル依存症』などにぜひ一度目を通していただきたい。

<参考文献>
・『ギャンブル依存症』(田中紀子著 角川書店)
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