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DATE/ 2016.04.06

ロールプレイングゲームが車の自動運転を進化させる!?

 人工知能AIがニュースを賑わせることが多くなってきました。

 グーグルによるAI「アルファGO」が韓国の囲碁チャンピオンのイ・セドル9段を破ったニュースが記憶に新しいでしょう。

 これまで人工知能は、チェスや将棋には届きそうで、複雑な囲碁にはまだまだ届かないのではといわれてきただけに、事情をよく知る者を大きく唸らせました。その開発を大きく進めたのは「ディープラーニング」と呼ばれる方法です。

 「ディープラーニング」では、あらかじめ想定されるできるだけ多くの「問い」と「答え」をコンピュータに入れておきますが、その「解き方」は入力しません。いわゆる、ビッグデータという蓄積された膨大なデータから特定の概念を特徴づける特徴量を自動的に発見するような「解き方」の機械学習が可能になってきたことを示します。

 これらは、意外にもWEBでID認証のときに読みにくい文字をタイプさせるシステムの背後で、正解と不正解を含めて人間がどのように文字を観ているかというビッグデータを利用したパターン分析の成果ともいえるものです。

 このように何かと活性化している人工知能AIですが、今、最も期待されているのが自動車の自動運転の領域です。そして、この自動運転の領域でも、意外なビッグデータ分析が応用されています。それは、2000年頃に立ち上がった大規模な同時参加型オンラインRPG「MMORPG」(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)での経験的なリソースです。

 かつて日産自動車においてクルマのICT化を推進し、自動運転技術の開発に携わってきたインテルの野辺継男氏は、MMORPGのプレイヤーをクルマに置き換えて、ユーザー自身がデータを提供するという考え方が、自動運転のクオリティを高めていくベースになると考えています。

 MMORPGでは、個人のユーザーIDや、仮想マップ上の位置、レベル、アイテム、パワー、仮想貨幣などのプレイヤー情報が、逐次的にサーバーに送信され、データベースが更新されていく環境でプレイします。その遊びのクオリティは、ゲームだけでなく、ネットワークの常時接続性とリアルタイム性が決め手でした。当時のネットワークは有線でしたが、今は違います。無線であり速度も向上しています。

 LTEによる携帯電話やモバイル端末で、常時接続性とリアルタイム性が保障できるようになった今、このリソースと各種センサー技術、「ディープラーニング」の組み合わせによって、リアルタイムな状況分析が可能となり、より機能的で実用に耐えうる自動運転AIとして市場投入されるのも意外に早く訪れるかもしれません。

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