社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
昭和の象徴「デパートの大食堂」はなぜ消えた?
象も登場!デパートがぜいたくの象徴だったあの頃
昭和文化・レジャーの象徴だったデパート。戦後の経済復興をとげて豊かになってきた1960年代から80年代にかけて、デパートはぜいたくな気分を味わえる憧れの場所でした。休日は、家族そろってよそ行きの服でおめかしをしてデパートにお出かけ。最新のファッションやインテリア、きらびやかな宝飾類、魔法の国のようなおもちゃ売り場、最上階から風景をみわたせる大食堂、屋上の遊園地……。たとえ買い物をしなくても、デパートをめぐるだけで幸せな気持ちにひたれたものです。
デパートがエンターテインメントの中心であったことをうかがわれるエピソードがあります。1950年、高島屋の日本橋店屋上に象の「高子ちゃん」が登場したときのこと。「高子ちゃん」が屋上までクレーンでつり上げられたことで話題を呼び、公開初日に訪れたのはおよそ17万人だったそうです。
「お子様ランチ」は1930年代に誕生
そんな日常をはなれたワクワク感を子どもたちに与えてくれたのが、最上階に多かった大食堂です。おおきなチョコレートパフェ、アイスの乗ったエメラルドグリーンのクリームソーダ、そしてなんといっても「お子様ランチ」。オムライス、ハンバーグ、海老フライ、ケチャップ味のスパゲッティなどがひとつのプレートに乗ったお子様ランチは、上野松坂屋が戦前の1931年に提供したのが始まり。ご飯に旗を立てた形が登場したのは、翌1932年のことでした。なお、日本橋三越では、上野松坂屋よりも早い1930年に「御子様洋食」という名前で同じスタイルのものを提供しています。これらが原型となったお子様ランチは、今も人気のメニューとして生き続けています。
今はショッピングモールとフードコートが役割を果たしている
そんなデパートも1990年代に入ると、ファッションやカルチャーを強く打ち出した若者向けの形態と、中高齢者をメインターゲットにした落ち着きのある形態に分かれていきます。レジャーの多様化と、昭和中期につくられた街並や大型施設の再開発が進んだこともあり、休日のデパートから家族連れの姿が徐々に消えていきました。今では大型駐車場を備えたショッピングモールや、そこにあるフードコートがデパートと大食堂の役割を一部、果たしているともいえます。
老舗デパート・マルカン百貨店は閉店したが…
今、昔ながらのデパートの大食堂は残っているのでしょうか。昭和文化を懐かしむ人々から「あの頃の雰囲気のままだ」と絶賛されていたのは、岩手県花巻市にある老舗デパート・マルカン百貨店の6階にあった大食堂です。名物の10段巻のソフトクリームが有名な昭和モダン&レトロの雰囲気を残した“名店”でした。
ところが、建物の老朽化と耐震性の問題から、2016年の6月7日をもって、マルカン百貨店は閉店。地元では継続を求める声もたくさん起こったようですが、惜しまれつつ老舗デパートとしての歴史に幕を閉じることとなりました。
しかしその後、マルカン百貨店の運営を引き継ぎたいという地元企業が現れ、クラウドファンディングや寄付などで建物の改修にかかる資金の問題を解消、2017年2月20日にマルカン百貨店の大食堂は「マルカンビル大食堂」として復活を遂げています。
昭和は遠くなりにけり、といった感がありますが、家族の絆を深めてくれたデパートの大食堂にはファンが多いだけに、新しい時代の姿で復権してほしいと願うばかりです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える
運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」
歴史における「運」とはどういうものだろうか。例えば、富裕と貧困という問題について、「運」で決まるのか、あるいは「運」とは異なる努力、教養、道徳などの要素で決まるのかという点でも、思想家たちの考え方は分かれる。第1...
収録日:2024/03/06
追加日:2024/04/18
多神教の日本と民主主義…議論の強化と予備選挙の導入を
民主主義の本質(4)日本の民主主義をいかに強化するか
民主主義の発展において、キリスト教のような一神教的な宗教の営みがその礎にあった。では、そうした宗教的背景をもたない日本で、民主主義を育てるにはどうしたらいいのか。人数が多ければ正しいというのは「ポピュリズム」の...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/16
急成長するインドネシアとトルコ、その理由と歴史的背景
グローバル・サウスは世界をどう変えるか(3)インドネシアの成長とトルコの外交力
グローバル・サウスの中でも高度経済成長を遂げているのがインドネシアだ。長期のスカルノ時代とスハルト時代を経てその後に民主化が進んだ、東南アジアで最大のイスラム教国である。また、トルコは多国間に接する地理的特性と...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/17
ロシアによるウクライナ侵略で国際政治はどう変わったのか
ウクライナ侵略で一変した国際政治(1)歴史的経緯とNATOの存在
ロシアによるウクライナ侵略によって、国際政治は一変したといわれる。だが、具体的には何がどう変化したのか。この問題について大事なのは、両国のみならずヨーロッパとロシア、さらにアメリカも含めた各国の関係、その歴史的...
収録日:2022/05/10
追加日:2022/05/27
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
「心理的安全性」は近年もっとも注目されるビジネスバズワードの一つともいわれている。その背景には、コロナ禍におけるリモートワークの増大、社会全体が未来予測の難しい「VUCAの時代」に入ったことがある。職場環境が多様に...
収録日:2022/04/26
追加日:2022/07/23