テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.01.27

作業能率は起床後15時間で「飲酒運転」と同じ?

起床後長時間経過の怖い話

 みなさん、睡眠をしっかりとっていますか。寝る時間が遅くなりすぎたりしていないですか。多忙な日々を送る社会人の中には、就業時間を過ぎていてもずっと残って作業を続けている、という方もいると思います。

 以前にTwitterで、以下のツイートが話題となりました。

「人間が十分に覚醒して作業を行うことが可能なのは起床後12~13時間が限界であり、起床後15時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率まで低下する」(情報産業労働組合連合会のツイートより)

 酒気帯びと同じとは、衝撃的ですね。近年相次いだバス事故や自動車の事故も過酷な労働環境によるものだという指摘がありました。

 このツイートの情報元は厚生労働省から出されている、『健康づくりのための睡眠指針2014』です。さらにそこが参考としている科学誌Natureの論文(1997年に発表)によると、さらに時間がたち17時間起きていた場合、アルコール血中濃度が0.05%の状態と同じになるといいます。

 さらに怖いのが、作業能率が著しく落ちているにもかかわらず、自分はそれに気づかないこと。強い眠気を感じないので大丈夫だと思い込んでしまうのですが、実際はものすごくパフォーマンスが悪くなっているのです。

「やっていけるかも」が実は危ない

 一方、どうしても過酷な環境で働かなくてはならない場合、対処法として「寝だめ」をしようと考える人があります。例えば、平日に十分寝られない分、休日にまとめて長時間の睡眠をとるといった方法です。

 これについて『健康づくりのための睡眠指針2014』によると、作業能率の改善には効果があるとしながら、夜間の睡眠を妨げて、疲労を蓄積する原因になるかもしれないということです。こうしてたまった疲れは、簡単には取り除けないといいます。

 そして、一番やっかいなのは、「なんとなくやっていけてしまう」というところ。もうだめだ、と限界を感じるよりも少し手前、あるいはギリギリの状態で頑張っている人が、疲労の蓄積によって体調を崩してしまうというケースが多いのではないでしょうか。

睡眠のしかたが鍵を握る

 先述のツイートで問題となっていたのは、長時間労働による作業能率低下と、ヒューマンエラー、そして事故のリスクが高まる危険性ですが、『健康づくりのための睡眠指針2014』では、睡眠の質もまた重要視されています。

 たとえば、心身ともに心地よく目覚めさせるため、朝食をとること、寝酒や就寝前のカフェイン摂取・喫煙を避けること、定期的な運動をすることなどを勧めているのですが、それは、そうした生活の改善による良質な睡眠が重要だということです。この中で、意外と守れていないこともあるのではないでしょうか。やはり規則正しい生活が一番なんですね。

 それでも、「この日までに終わらせなくては」の仕事の連続だという人も少なくないかもしれません。どうしても夜間に十分な睡眠をとれない場合、「午後の早い時刻に30 分以内の短い昼寝をすることが、眠気による作業能率の改善に効果的」とのこと。簡単ではないかもしれませんが、意識してみてはいかがでしょう。

 ちょっとした手違いやミスで、大きな事故やトラブルにつながることもあります。そうならないためにも、無理をしない生活を心がけたいものですね。

<参考サイト>
・情報産業労働組合連合会(情報労連)公式Twitter
https://twitter.com/infoictj/status/808476571258396672
・厚生労働省ホームページ(健康づくりのための睡眠指針2014)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(4)サウジアラビアとイランの存在感

中東のグローバル・サウスといえば、サウジアラビアとイランである。両国ともに世界的な産油国であり、世界の政治・経済に大きな存在感を示している。ただし、石油を武器にアメリカとの関係を深めてきたのがサウジアラビアであ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/24
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
2

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

民主主義の本質(5)民主主義を守り育てるために

ポピュリズムや権威主義的な国家の脅威が迫る現在の国際社会。それに対抗し、民主主義的な社会を堅持するために、国際社会の中で日本はどのように振る舞うべきか。議論を進める前提として大事なのは「歴史から学ぶ」ことである...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/23
橋爪大三郎
社会学者
3

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

編集部ラジオ2024:4月24日(水)

ChatGPTを開発したことで一躍有名となったOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの発展によって社会は大きく、急速に変化しており、その中心的な人物こそが彼であるといっても過言ではありません。

そんなアルトマンが...
収録日:2024/04/15
追加日:2024/04/24
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か

ルネサンス美術とはいったい何なのか。これを考えるためには、なぜその時代に古代ギリシャ、ローマの文化が復活しなければならなかったのかを考える必要がある。その鍵は、ルネサンス以前のイタリアの分裂した都市国家の状態や...
収録日:2019/09/06
追加日:2019/10/31
池上英洋
東京造形大学教授
5

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え

2016年ノーベル医学・生理学賞の受賞テーマである「オートファジー」とは何か。私たちの体は無数の細胞でできているが、それが日々、どのようなプロセスで新鮮な状態を保っているかを知る機会は少ない。今シリーズでは、細胞が...
収録日:2023/12/15
追加日:2024/03/17
水島昇
東京大学 大学院医学系研究科・医学部 教授