●70年首相談話の意義と特徴
皆さん、こんにちは。
8月14日に、政府は戦後70年の安倍総理大臣談話を閣議決定いたしました。私の考えからいたしますと、この談話で第一に意義深いのは、先の大戦への「痛切な反省と心からのおわび」を表明した歴代内閣の立場、とりわけ村山談話と小泉談話を揺るぎなく継承し、安倍首相の言葉を借りますと、「日本が事変、侵略、戦争、いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、二度と用いてはならない」と明言した点にあります。そのうえで、植民地支配から決別し民族自決権が尊重される世界にすることを、「先の大戦への深い悔悟の念」とともに誓ったことを強調しています。
合わせて、敗戦国日本の国際復帰を支えた国や人への「感謝」にきちんと言及し、今後も積極的平和主義のもとに国際貢献を進める未来志向を公にしたことが特徴です。
そして、最後に戦争責任を明示する一方、反省を繰り返すことで、いつまでも「先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と指摘したことも注目されます。
●談話の感想-歴史の正負両面を明示する
この談話について、私は、この談話の準備に助言した21世紀構想懇談会の委員の一人として、個人的に感想を述べてみたいと思います。その際に、8月13日の木曜日、毎日新聞(朝刊)から、あらかじめ総理談話に何を希望するか、何を要望するかといったインタビューを受けました。そこで、私に対する問いの内容と、その問いに対する私の答えをまず紹介して、今回の談話がどの程度私の指摘や見通しに照応していたか、あるいは、していなかったかということについて触れながら、談話についての感想を述べてみたいと思います。
ここで、毎日新聞の政治部の松本晃記者から私にまず第一に、「14日に閣議決定される安倍首相の戦後70年談話にどんなことを望みますか」という問いが寄せられました。それに対する私の答えをまずそのまま読み上げますと、次のようなものです。
「侵略と植民地支配、反省という負の歴史的側面に触れながら、日本の戦後史の正の側面、正の性格を描いて、戦前から戦後がきちんと決別したと分かるバランスの取れた談話にしてほしい。負の側面も史実、歴史的事実として率直に認める勇気ある国だと示してもらいたい。それが民主主義国家の強さでもある。首相談話では、戦争で亡くなった日本人310万人の尊い命の犠牲のもとに今の日本の平和と繁栄があるという厳粛な事実も強調してもらいたい」
以上がこの毎日新聞の問いに対する私の最初の答えでした。
●首相談話のいくつかの評価点
ここで私が強調しなかったのは、史実については曲げようがないということです。つまり、実際に出された談話は、先の大戦への「痛切な反省と心からのおわび」を表明した歴代内閣の立場を、揺るぎなく継承することをうたっています。そして、日本が「事変、侵略戦争、いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては二度と用いてはならない」としてあります。その上で、安倍首相談話は、植民地支配から決別し民族自決権が尊重される世界にすることを、「先の大戦への深い悔悟の念」、(repentance)」という大変印象深い言葉を使いながら、日本が誓ったということを強調しています。
合わせて、敗戦国日本の国際復帰を支えた国や人への「感謝」にきちんと言及し、積極的平和主義の下に、今後も国際貢献を進める未来志向を公にしたという点。こうした点において、私が先ほど自らの発言を紹介したような、談話に期待した戦前史と戦後史との断絶を明示的に反省の念をもって語るバランスのよいものになったと、ひとまず評価することができるであろうと私は考えます。
中でも、「300万余の同胞の命」が失われただけではなく、中国、東南アジア、太平洋の島々で犠牲となった人々にも、安倍首相は言及しました。そして、首相の表現では、「戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいた」ことも忘れずに、また、「なんの罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛をわが国が与えた事実」についても、率直に触れました。そして、二度と戦争の惨禍を繰り返してはならないと明言したのは、談話の大変よかった点です。
●諸外国も評価した「お詫びと反省」の明示
こうした流れは、その前にある、「国内外に斃(たお)れたすべての人々の命の前に、深く頭を垂れ、痛惜の念を表す」という表現や、「永劫の、哀悼の誠を捧げ」るという、おわびと反省を前提にした表現を受け継いでおり、同時にその直後の首相の表現、「深い悔悟の念」、「繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました」という箇所とセットになっています。
こうした意...