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吾妻鏡―中世を掌握した鎌倉武家政権の一大年代記

吾妻鏡とリーダーの要諦(1)魅力と謎に満ちた書物

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授
概要・テキスト
 『吾妻鏡』(吉川本)右田弘詮の序文
鎌倉時代の武家政権の歴史を扱った書として知られる『吾妻鏡』。実は現代の政治家にこそ読んでほしいと、山内昌之氏がその魅力と謎に迫る。シリーズ「日本の歴史書に学ぶ」第一弾。(1/4)
時間:07:25
収録日:2014/02/26
追加日:2014/04/17
≪全文≫

●魅力と謎に満ちた『吾妻鏡』の持つ意味とは?


 皆さん、こんにちは。

 これから機会を捉えまして、日本の歴史、むしろ日本の歴史書、歴史家とは何だったのかということについて、少し古典などの紹介を交えてお話してみたいと思います。

 今日はその第一回目としまして、『吾妻鏡』についてお話してみたいと思います。

 『吾妻鏡』はご存知の方も多いかと思いますが、鎌倉時代の歴史を扱った書物です。しかし、この書物は魅力的な本であると同時に、大変多くの謎が含まれている歴史書でもあります。

 まず、この書物はいつ作られたのか、あるいは誰が作ったのか、そして、何のために書かれたのか、こういうことがまだ専門家によっても十分に結論が出ていない不思議な謎の書なのです。また逆にいうと、そこに大変多くの魅力のある書物でもあるのです。

 『吾妻鏡』がまず問題になるのは、そして現代の私たちにとっても重要なのは、この書物が武家政権がつくられた鎌倉を中心にして、東国の歴史や東国を基盤とした日本で最初の武家政権の政治権力の意味を問い、そこで繰り広げられた鎌倉幕府のありさまを後世に伝えてくれている点です。すなわち、この書物は日本でほぼ最初の武家の本格的な年代記としての意味を持ち、東国において武家政権をつくり、権力の場所をつくった武士たちが中世という時代を担ったことや、それに関わる証明の書であったのです。つまり、武家が鎌倉を中心にして新しい歴史をつくった時に、彼らはそれをどのように記録しようとしたのか、ということです。またこの点においては、私たちが後世の徳川の時代、江戸時代という武家政権のクライマックスを考える際にも、大変大きな歴史の流れの中で考察する必要がある書物になっています。


●現代政治の手掛かりとなる『吾妻鏡』の魅力


 『吾妻鏡』はなぜ今にまで多くの人々が関心を持っているのかといいますと、やはり徳川家康の影響が大きいと思います。徳川家康は江戸に幕府を開いた時、当然彼は尊敬すべき先人として、源頼朝が同じ東国の鎌倉に幕府を開いたという故事を参考にしたはずです。

 その際、この鎌倉幕府の先例に倣い、頼朝のさまざまな故事、あるいは彼の成功や失敗、これらを教訓として学ぶことによって、江戸幕府の経営に向かったに違いありません。そのようなことを知る上で非常に重要な書物が、この『吾妻鏡』なの...
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